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あの門を突破せよ

 だがこれに関しては、そう難しいものではない。


「地属性部隊、前へ出ろーっ!」


 本日も過労死枠、地属性使いの皆さんがご登場だ。


 もう全部コイツらでいいんじゃないのか。

 戦闘で水使いが活躍するのとか、あんまり記憶にないぞ。

 飲み水確保って意味じゃ、誰より命の源ではあるけど。


 そういう意味じゃ水属性と同じく、火属性みたいに分かりやすく


『誰それを討ち取って大手柄!』


 みたいな褒賞ももらうことが少ない地属性。

 いつか報われてほしい。


 というか、この戦に勝ったら私が報いてやる。

 だからもうちょっとがんばってもらおうか!



 地属性部隊が力を合わせ、地面を盛り上がらせ、


 堀に橋を架ける。



 派手に城壁を崩すと方針に反するが、堀を埋める程度ならな。

 市民を怖がらせることもあるまいさ。



 それにしても。

 魔法がなけりゃ、それこそ今城壁を登ろうとしているフルール軍が


 中に侵入して

 守備兵を排除し跳ね橋の装置を乗っ取って

 橋を下ろして


 ようやく堀を渡れる。


 それを待たなくていいんだから楽なもんだ。



 だが、スキップしたゆえの手間もある。


 せっかく堀に道を作っても、



 門の前には上がったままの跳ね橋が壁として立ち塞がる。



「火属性!」


 だが跳ね橋ってのは、有事の際に上げ下げできるようになっているわけで。


 つまりはそれが可能な程度には軽く作られている。

 鉄や石でないのはもちろん、分厚い丸太を結ぶこともほぼない。


 大抵は骨組みと板材で、最低限の重さに耐えられる程度の強度にしてある。

 思ったより薄いんだ。


 次々に放たれる火属性魔法で、跳ね橋が燃え上がる。

 一瞬で油を掛けたのと同じくらいの炎上を起こせるのも便利なもんだ。


 まぁ白十字は列強から攻め込まれる、便利さに殴られる側の方が多いんだがな。



 しかし私たちと跳ね橋にあまり距離はない。

 焼け落ちるには時間が足りないだろう。


 まさか見せものみたいに火の輪くぐりで突っ込むわけにもいかない。


「水属性!」


 ここで散々使わないとか言っていた水属性の出番だ。

 ごめんね。


 燃え盛る橋を一気に鎮火する。


「ん゛っ」


 とんでもない量の水蒸気だ。

 息ができん。


 だが、私より馬の方が苦しかろうし、


「ぶわっ!」

「あ゛っづ!」


 スチームが立ち昇ってくる、城壁の守備兵の方がモロに喰らうはず。



 さて、ここまでやっても、さすがにまだ橋はそこにある。

 いくら薄いと言ってもな。橋だしな。


 だが着実にダメージは入っているのだ。


 水蒸気が晴れるのも待たず、メイスを持った部隊が先行する。


 ところどころ炭化し脆くなった橋を、


 最後はやはり物理。

 打ち壊しだ。


 間に合わせてくれよ?

 こちとらノンストップの勢いでぶつけたいからな。


 私はアネッサで前が見えないから、祈るしかない。

 そもそも跳ね橋に通れる穴が開くタイミングを見計らう、ってのができない。


「団長!」


 そのアネッサが横に逸れる。

 視界に映るのは、



 残骸となった跳ね橋の向こう。


 目と鼻の先になった鉄の門。



「行くぞーっ! タイミングを合わせろーっ!!


『せー』で引いて、『の』で突き出せ!」



 その『の』でちゃんと門にぶつけられるように。

 間合いを見極めるのは、ちょうど先頭にいる私だ。


 だがじっくり計算している暇はない。

 この距離は馬じゃ一瞬だ。


 視界が(せば)まり、鉄の門しか見えなくなる。

 逆に距離感が狂いそうだ。

 今顔に矢が飛んできてもかわせない。


 落ち着け。


 馬が地属性魔法で作った橋に差し掛かる。



「せーっ!」



 3


 2



 1



「のっ!」



 肩まで痺れるような衝撃と、鼓膜も麻痺するような音が響く。



「どうだぁっ!」


 視覚は奪われていない。

 見れば鉄の門は、


 明らかに歪んで隙間も生じているが、まだ人が通れる幅ではない。


 というかこの際、完全に吹っ飛ばしたいんだよこっちは。


「もうイッパーツ!」


 ここからはもう馬の勢いではなく、振り子の原理と腕力で。

 ぶち破れるまで何発でもお見舞いだ。


 だが、


「ぐえっ!」


 私の逆側で縄を持っていた騎士が落馬する。



 門の隙間から、血濡れた槍の穂先が飛び出している。



 そりゃ当然、敵だって防衛に駆け付けるに決まっている。


 槍なんかまだいい。


「おおっ!」


 門前の、堀によって限られたスペース。



 ここに火を撒かれるのが一番タチが悪い。



 私なんかは馬が驚いて落馬だけで済んだが(恥辱千万ではある)、


「うわあああああ」


 燃やされた騎士たちは大変だ。

 走り回るも、すぐに堀へ落ちる。


 だが残念ながら、ここは水のない空堀だ。

 水属性使いが鎮火するあいだにも、死傷で味方が削られる。


 やられっぱなしで堪るかよ!


「アネッサぁ!」

「はいな!」


 返事があったってことは無事ってこと。

 すかさず背後から強風が吹き込む。



「「「「「うああああああ!!」」」」」



 炎が隙間から逆流して、入れ替わりに断末魔が聞こえてくる。


「追加で燃やしてやれ!」


 炎での押し合い。

 アンヌ=マリーからすりゃ()()()かもしれんが、こっちは必死だ。


「水だっ! 水で消せっ!」


 向こうは消火活動を優先するようだ。

 これでいい。抵抗が減る。

 さすがに風属性での吹かし合いになったら、そこらの騎士じゃアネッサには勝てまい。


「今のうちに、2発でも3発でもかましてやるぞ!」


 落馬のときに落とした縄を拾う。

 ちょっと焦げて短くなったか。


 そもそも人数は足りているのか。

 振り返ると、


「いつでも行けるよ!」

「オマエまで前に来たらマズいだろうが」

「そう言わずに」


 モミアゲがメンバーに加わっている。

 おい、指揮官が一気に焼かれたらどうするつもりだ。


 なんて思ったら、



「殿下!?」



 後ろの方の縄を、ドミニク殿下が握っている。


「お控えください!」

「ジジが託したんだ。こういうこともやってみようと思ってね!」

「普通に危険ですから!」

「音頭も私に任せてくれるかな!? 務めあげたい!」

「あーもう!」

「フューちゃんなんでもいいから早くして!」


 確かにアネッサといえどもずっと風を吹かせっぱなしはキツいか。

 もう四の五の言ってられん!


「殿下! お願いします!」

「よし! せーっ!」

「のっ!」


「せーっ!」

「のっ!」


「せーっ!」

「のっ!」


「せーっ!」

「のっ!」


 散々火属性魔法をぶち撒けたあとに、消火で水属性も使ったからだろう。

 何度も言うが、ここは鉄の門だ。



 鍛治仕事の『焼き入れ』における『急冷』ってのがある。



 金属は高温で熱したあと急激に冷やすと、ヒートショックを起こす。


 硬さは上がるが、丁寧にやらないと歪んだりヒビが入ったり、脆くなったりする。


 そのせいだろう。



「せーっ!」



「のっ!」



 意外と、10回も叩かぬうちに


 両開きの門が吹き飛んだ。

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