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『手触り』

 我々はベルノ城を包囲しているわけではない。

 そんな何十万という大軍は持ち合わせていないので、薄くなってしまう。


 なので3万強、4万弱の兵力を1ヶ所にぶつけた方が火力は出る。


 だがそれは敵も同じことで。






「大激戦だな」

「それなりに戦場にいるけど、見たことないや」


 ベルノを囲む城壁の西側。

 私たちの知る攻城戦は、


 1.城壁を魔法で破壊する。

 2.魔法で直される。

 3.そこを別の魔法で狙撃し妨害する。

 4.直されていないところから中へ侵入する。


 の手順で、4が成功するまで1〜3をくり返すものだ。


 それが、



『撃てーっ!』


『あの旗の下! 敵が多いぞ! 狙え!』

『赤いヤツか!』

『違う! 青い三角形のヤツだ!』


『いいかぁ! 今から味方部隊が斉射を行い、一時的に敵の抵抗を減らす!


 その隙に我々はあそこ!

 目印である飾り羽の矢が刺さっている地点に梯子を立てる!』


『掛かれーっ!』



「あっ、フューちゃん、梯子が」

「そりゃ木製だ。燃やされもする」

「あっちじゃ人が落ちていく」

「熱した油を掛けられたんだ」



 今までとは違う。


 人が人を狙って、

 兵士が兵士を殺すために戦闘している。


 いや、そんなもの、野戦はいつだってそうじゃないか。

 高所から人が落ちていくのは、壁を崩したときにも見てきたじゃないか。


 それでも、


「ッ! ……!」


 喉に矢を受け、城壁から真っ逆さまの男。

 声もなく消えていく彼にこそ、


「生々しい、とでも言うのかな」


 普段以上の断末魔を感じる。



 だが俯瞰した態度で偉そうに言うのもここまで。


「勇敢なる白十字王国の騎士諸君!」


 騎士団の前に、旗を掲げたドミニク殿下が飛び出す。


「殿下!?」

「何をなさるおつもりだ!?」


 先ほどのアデライド殿下とのやりとりを見ていない連中がザワつく。


 だが殿下が出ようが出まいが、我々の作戦は変わらない。



「これより城門の突破に取り掛かる!


 掛かれーっ!!」



 ドミニク殿下は大号令とともに、旗を門へ向かって振る。


 このままだと勢いに任せて突撃までしかねない。

 普段は冷静だが、あのアデライド殿下の弟君(おとうとぎみ)だしな。

 というか、


『先鋒隊に混ざって責務を果たしてこい』


 なんてエールを送ったのがアデライド殿下だ。


 いくらそれが両殿下のご意向であろうが、



『ドミニクを、お願いします』



 死なれでもしたら話は別だ。



「しからばフューガ・フォン・ミュラー!


 殿下の先駆けつかまつる!」



 危険なポジションは私が埋めようじゃないか。


「おお! フロイラインが出たぞ!


 誇り高き白十字王国の騎士諸君!

 女性に遅れをとって、なんの騎士道精神と言うのかね!」


 モミアゲの檄も飛ぶ。



「「「「「おおおおおお!!」」」」」



 こうなるともう、他の騎士たちも勢いに任せるしかない。


 どうせ結局は行かねばならんのだ。

 なら熱に浮かさせてくれるうちにやってしまった方がマシだ。


 チラリと後ろを確認すると、私に続いてアネッサ、

 騎士たち、その群れの中に丸太班も見える。

 殿下は……


 旗は見える。

 だがプロより騎馬が達者なこともない。

 追い抜かれていっているようだ。


 それでも構わないよ。

 鼓舞してくれただけで。


 いつか立派になってくれりゃいい。

 それまでは私たちに任せてくれ。



 さて、いつまでも余所見はしてられん。

 視線を前方に戻せば、



「おい! 新手(あらて)が来るぞ!」

「この忙しいときに!」

「ありゃ同じ白十字王国軍の部隊だぞ」

「やるのか? 同胞だぞ?」

「やれってのが国王陛下直々(じきじき)の命令だろ!」

「やらなきゃオレらがやられるんだ! やるんだよ!」



 城壁の上。

 何言ってるかは聞こえんが、敵方も私を認識し、迎撃の構えをとっている。

 うかうかしていると狙撃されてしまう。


 だが私が見えているということは、



「おっ、おい! 丸太! 丸太だ!」

「アイツら門をぶち破るつもりだぞ!」



 こちらの手の内も丸見えだろう。


「来るぞーっ!」


 盾を持った騎士たちが、丸太班を守るように前へ出る。

 後方からは別の騎士が、先手を取って魔法や弓矢で攻撃する。


 もっとも、高低差がありすぎてあまり届かないだろう。

 基本は『受け』の時間だ。


 なんて状況確認をしているうちに、


 頭上から矢玉に魔法の雨霰が降ってくる。


 矢はまだいい。

 盾で防げる。


 いつだって問題は、



「うわあっ! っつ!」

「縄を放せ! 引火する!」



 盾の隙間をくぐり抜ける、不定形の魔法たち。

 少なくとも、この突撃最優先の状況では防ぎようなどない。


「生き残りたければ急げ!

 門まで来れば、逆に撃たれにくいぞ!」


 丸太は大人数で、縄でぶら下げるように運んでいる。

 ひとりならいいが、複数人が脱落すると傾いてくる。


「ぐああぁ」

「交代だ。任せろ」


 負傷者と丸太の運び手を交代する。

 地面に擦るとスピードが落ちるからな。


 速度を緩めてはいけない。足を止めてもいけない。

 止めていいのは門をぶち破るそのときだけだ。


「団長!」

「よし」


 すかさずアネッサが盾に入ってくれる。


 ありがたいが、こうなるともう前が見えない。

 魔法が飛んできているかも分からないので、祈るしかない。


「むううう!」


 アネッサの盾がガンガン音を立てる。

 矢は確実に飛んできているようだ。


 これは堪らんな。

 いつもとは違うヒリヒリ感がある。

 普段好き勝手戦っているだけに、身動きが取れないのはキツい。


 早く着け。

 早く着け。

 早く着け。



「団長!」

「おう!」


 アネッサから合図が来る。



 ついに来た!



 前はまだ見えていないが、目的地が近いんだろう。



 だがまずは門までの道を作らねばならない。


 当然の防御機構として、幅跳びでは届かないような堀と跳ね橋が備わっている。

 まずはここを突破するところからだ。

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