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誰が旗が立つか

「フロイライン!」


 会議はあのまま解散となった。

 それで私は自身のテントへ戻る最中なのだが。


 ずっとモミアゲが着いてくる。


 途中までは同じ方向だから当然っちゃ当然だが、


「おい、オマエの陣はあっちだろうが」


 そういう段階はとっくに通過している。


「だから話があるんだって!」

「帰れ。呼ばれてもいないのに女の部屋へ押し掛けるな」

「フザけている場合じゃない! 真面目な話なんだ!」


 やれやれ、しつこいな。テントに着いてしまったぞ。


「フロイライン!」

「うるさい」


 モミアゲを無視してテントに入ると、


「あん?」

「あ」

「何してるんだオマエ」


 ベッドにアネッサがいる。


「うわああああ!! フューちゃんが男連れ込もうとしてるうううううう!!」

「違うわ」

「ゆっ、許せんっ!!」

「仮にそうだとしても、空き巣に口出しする権利ないだろうが」

「私のコレはお布団温めてるだけだから。お布団温め業者だから」

「じゃあモミアゲの布団温め業務を発注する」

「たった今廃業いたしました」


 まったく、なんなんだオマエは。


「フロイライン!」

「まだいたのか」


 でも今はアネッサの相手している場合じゃないな。

 コイツの奇行は気にしていたらキリがないし。


「当たりまえだろう! いつものラブコールじゃないんだ!」

「ほー。じゃあなんだね」


 私は椅子に腰を下ろすが、モミアゲは立ったまま。

 その間すら煩わしいかのようだ。



「どうして攻城戦の先鋒まで買って出たんだ!」



「え? そんなことしたの?」


 アネッサもベッドに寝転がったまま目を丸くする。

 降りろ。


「私たち白十字軍の疲労はもう限界だ!

 誰より先頭で走ってきた君が一番分かっているだろう!」

「そうだよ! いくらフューちゃんが乙女と呼ぶにはなんらかの条例に引っ掛かる体力してるからって!」

「そんな人権侵害自治体は崩壊してしまえ」

「ここまでですでに多くの死傷者を出し、人員も減る一方だ。

 今いる人数だって負傷者を含んだ数値だ。実態はより厳しい」

「そうだな」

「いくら我々連合軍は数が多いと言ってもね。個別はそんなものだよ?

 指揮系統や言語が違うから、フルール側から補充もできない。


 今更君に言うまでもないことと思うんだけどね。

 攻城戦は野戦のようにいかないよ?

 圧倒的に兵の数が必要なんだ」


「本当に言われるまでもない」


「そうかい? 本当に分かっているかい?

 それだけじゃないんだよ?


 相手はもう帝国じゃない。

 同じ白十字王国の同胞なんだ!


 フルール王国軍もいるのに私たちばかり前に出て、やることは同胞殺し。

 少しまえまで敵だった連中に命じられて同胞殺しだ!


 どう兵に説明するんだい! 士気を保つと言うんだい!」


「フューちゃんはマリアンヌと仲がいいから平気かもしれないけどね?

 私たちはそうじゃないんだよ?

 フルールの奴隷じゃないんだよ?」


 そりゃ()()()()()だ。

 私だって東進するにあたって西方方面軍と戦ったとき、たっぷり苦しんださ。

『アンヌ=マリーと仲がいいから平気』は誤解だが。



「そうだな。では説明しよう」



「えっ」

「『えっ』てなんだ」

「いや、『説明してくれるんだ』って。ここまでずっと無視されてたから」

「あのなぁ」


 モミアゲめ。

 キサマ本当に指揮官か?

 今し方の現状を踏まえた論理は多少関心したがな。


「アネッサも。私が


『アンヌ=マリーと仲がいいから思考停止している』


 なんてとんでもない。


 むしろ適度に警戒しているし、だから外じゃ答えられなかったんだ。

 どこで誰が聞いていて、何がどうアイツの耳に入るかも分からんからな」


「そうだったのか」


 なーにが『そうだったのか』だよ。

 危機管理ゼロか。

 抜けてんのはオマエの方だろうが。


 だが『説明する』と言った手前、愚痴るのは話が違う。

 ベッドの方に腰を下ろし、椅子をモミアゲに勧める。

 長くなるからな。


「いいか。オマエたちの考えは私にもよく分かる。

 私だって戦うのが好きなわけじゃない。

 正直後ろでゆっくりしていたいさ」


「あ、そうなんだ」

「ほんとぉ?」

「説明はいらないようだな」

「「すいませんでした」」


 なんだコイツら。話の腰を折りやがって。

 聞きたいのか違うのかハッキリしろ。


「だからアンヌ=マリーから


『今回はフルール軍が前に出る』


 と聞いたとき、ありがたい申し出に思えたさ。

 だが、いなかったアネッサはいいとして、モミアゲは情勢を考えろ。


 アイツが急にそんなことを言ってきた意味を」


「ふむ」


 モミアゲがアゴの代わりにモミアゲを撫でる。

 何優雅ぶってんだ。剃るぞ。


 優雅か?


「『我々に苦労だけさせておいて、おいしいところ、カッコいいところ取り』かな?」

「……」

「フロイライン?」

「まぁ間違ってはいない、とは言えるか。

 正しく深刻さを理解できているかは(はなは)だ怪しいが」


 おいしいところを取られるってのはつまりだ。


「いいか? あそこにいる白十字王国民の、いったいどれだけが鉄血との戦闘を見てたって言うんだ?」

「ん、うーん?」


「そうなんだよ。答えられないくらい微妙な感じなんだよ。


『結構注目されてたんじゃないか』


 なんて言えないんだよ。

 彼らは鉄血戦なんて知らないんだよ。どうでもいいんだよ。

 あそこで私たちがいくらがんばったかなんて関係ないんだよ」


 モミアゲとアネッサの顔が寂しそうになる。

 まぁ苦労全否定だものな。

 かわいそうだが、気持ちを汲んでやる場合ではない。


「彼らにとって大事なのは。

 この先新体制で統治する国民たちが見ているのは。



『誰がハインリヒを倒し、この国を勝ち取ったか』



 なんだ。

 その重要な、全ての始まりの瞬間に、


 歴史に残る解放の瞬間に、だ。



 真っ先にベルノ城に(ひるがえ)る旗が、『ヤグルマギク』だったりしてみろ。



 本当に全てを持っていかれる、最悪のプロパガンダだろうが」



「「あ、あぁー」」


 またリアクションが一致している。

 仲いいなオマエら。


「だからな。今こそが一番、誰よりがんばらなきゃいけないんだ。

 白十字王国が、白十字王国民の手で取り戻されるためには」


 何やらポカンとした表情のモミアゲ。

 まさか


『話が難しくて分かりませんでした』


 とか言わんよな?


 私の心配をよそに、返ってきた言葉は



「ちゃんと、考えているんだね」



「当たりまえだ!!」



 なんだコイツ!?

 今まで私を見てきて、脳死で暴れるだけと思っていたのか!?


「私はオマエの5倍も10倍も考えて行動しとるわ!

 それをだな! たわけ、たわけ、たわけ!!」


 思わず立ち上がってしまったが、蹴飛ばすのはギリギリ我慢した。


「ごめんねフューちゃん。考えが足りなかった」

「アネッサはいいよ。何も考えていないのはいつものことだから」






 非常に前途が不安になる時間だった。

 が、目的意識を共有して戦闘に入れるってことでヨシとしよう。



 翌日、午前中は配置決めなどの最終確認、作戦会議を行い、

 午後は休みをとって、











 その翌日。

 もう夏になったといっていいような、入道雲と晴れの朝。



「さて、行くか」



 ついにベルノ城攻略作戦が開始された。











お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりドキドキしていただけたら、

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よろしくお願いいたします。

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