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圧倒的

 勝った。


 確実だ。



 なぜって?

 昼間の一騎打ちは有利に運んだからかって?


 まぁ物理近接でいえば私の方が有利なのはハッキリしたよな。


 でもそうじゃない。

 あのときとは状況も装備も違うからな。


 あんなのは参考記録にしかならん。



 じゃあ何が勝ち確なのか。

 急に第四の壁を超えて悪いが(今まで何回か超えてるが)、


 正直、もう気付いている人はいるんじゃないのか?


 あるいは、解答文までは行かなくとも、ある種の疑問を抱いている人くらいは。



『鉄鹿』がまた突っ込んでくる。

 こちらも応じて真っ直ぐ進む。


 さっきはこちらが先手を取ったが。

 今度は『鉄鹿』がすでにランスの切っ先を向けてくる。

 (せん)(せん)を取る構えだ。


「来いっ!」

「おおおお!」


 私の()()()()目掛けて突き


 と見せ掛けて



「ふっ!」


「うおっ」



 急に腕を上げて角度を変えてくる。

 振りかぶるのではなく、切っ先の向きは固定のまま、並行移動で持ち上げる感じ。


 突き下ろしか!


「でぇい!」


 その一撃が降ってくるまえに、こちらからハルバードを振るってランスを叩く。

 後の先(カウンター)は出せなくなるが、


「ちいっ!」


 向こうも高速戦闘のなかでは修正が間に合わず、そのまま馬がすれ違う。


 やるな。

 馬上槍(ばじょうやり)をよく知っている。


 正面からの突きや横薙ぎ。

 X軸Z軸の攻撃は、上半身を(かが)ませたり左右へ振ったりで回避できる。

 だがY軸の攻撃は、馬上では


『横っ飛びで回避する』


 とかができない分回避不能だ。

 だから受け止めるしかないのだが。


 これが長柄武器の振り下ろしなら、こちらも柄の部分を柄で受け止められる。


 しかし点攻撃の突きじゃそうはいかん。


 よってこの場合、


『突かせない』


 前捌きが重要なのだ。



 ん?


『勝ち確とかいって、早速危ないところだったじゃないか』


 って?


 まぁまぁまぁ。


 それより、やっぱりおかしいと思わないか?


 だって、『鉄鹿』を相手にしているんだぞ?



 さて、3合目。

 別にターン制バトルではないが、今度は私から仕掛けよう。


「ハイヤッ!」


 最初から見え見えの、しかし渾身の大上段に振りかぶる。


 それを見て『鉄鹿』は、左脇を少し開き、右脇は締める。

 それから馬の向きを僅かに右斜め前へ。


 私は得物を、釣り竿の持ち方で例えた場合右手が前で構えている。

 だから腕がクロスせず自然に振り下ろせるのは右から左。

 逆に『鉄鹿』にとっては左から。


 だから盾をすぐ掲げられるように左腕を楽にし、

 その左側を私へ向けやすいよう相手の左へ進路を取る。


 だが今度はランスが相手から遠くなる。

 なので脇を締めてコンパクトな突きを狙う。


 とまぁ、そんなところだろう。


 いいぞ『鉄鹿』。

 格闘が本領の私でも、やり合うのに満足なレベルだ。


 が、

 緻密に組み立てているところ悪いが。


 間合いが半分、もうすぐハルバードの射程内に入る

 というところで、


「うっ!」


 火属性魔法を使う。


 なに、この私が使うんだぞ?

 これで焼き殺すのはもちろん、小石を投げるほどの武器にもならん。


 だが、


 振りかぶって相手の方を向いているハルバードの石突。

 その先端に、一瞬パッと灯してやれば。



 篝火あれど松明あれど、


 夜にはそこそこの目眩(めくらま)しになる。



「おのれっ!」


『鉄鹿』はなんとか耐えたらしい。

 普段から火薬だ爆発だとやっているからな。


 だが、


「ヒヒヒィィン!」


 臆病な動物である馬には、耐えられない要素だったらしい。


「おおっ!」


 想定外の急停止に、『鉄鹿』が()()()()()


 思い切り体勢が崩れたところを、


「うっ!」



「喰らえやァ!!」



 堂々上段に構えた分だけ、渾身の一発を叩き込む。



「がっ!」


 チッ、仕留め損なったか。

 さすがに武芸者、反射で盾を間に合わせた。


 だがその分さらに体勢を崩し、

『女熊』のフルパワーを受け止めたんだ。



 当然落馬する。

 しなかったら騎士を辞めてもいい。



 こうなればもう勝負は決まったようなものだ。

 馬のパワーとスピードに対応できる人間はいない。

 一方的だ。


「そらそらそら!」

「くっ!」


 この有利を決定付けるべく。

 まず地面に転がった『鉄鹿』を狙って突きまくる。


 転がって回避されるが構わない。

 当てても鎧を貫通するのは難しいからな。

 元よりトドメではなく牽制だ。


 こうすることにより、


「まだまだ……、!!」


『鉄鹿』が一気に転がり距離を取り、

 ようやく起き上がって体勢を立て直したときには


「チッ!」



「どうした。


 どうする?」



 ヤツは馬と相当離れ、

 あいだには私がいる。


 もう馬上には戻れないというわけだ。



「決まりだ」

「やってくれるな、『女熊』」


 ん? なになに?


『これが言っていた勝ち確の絵図か』


 って?


 違う違う。

 一度打ち合っただけで、ここまで細かくシナリオは描けん。


 でも、こうなるだろうことは想定できた。

 なぜなら、


「そうだ。私はやるんだよ『鉄鹿』」

「……」

「それに比べてオマエはどうだ?」

「なに……」


 今のは見下した煽りではない。

 だから『鉄鹿』も怪訝(けげん)な顔をする。


「私はオマエに勝つため、魔法まで使ったぞ」

「!」

「それがどうした、昼も夜も、今日の戦いぶりは。

『鉄鹿』らしくないじゃないか」


 そう。


『読者の皆さま方にも気付いている方はいるんじゃないか』


 と言っていたアレは


「オマエ、魔法はどうした?

 火薬はどうした?

 爆発はどうした?」


「くっ」


「騎士の誇りか?

 使わないのか?


 実は爆発が怖いか?

 使いたくないのか?」


「散々言ってくれる」


「そして違うことも分かっている」


「なっ」


「オマエ、



 使えないんだろう?」

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