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2度目の激突

 ヤツだけじゃない。

 少ないとはいえ、率いている部隊は小筒をズラリと構えているし、


「……お構いなしってか」


 自陣の中で、自陣の方へ向けて。


 大筒の方も持ち出している。


「フューちゃん!」

「構わん! 右は山! 左は敵陣奥! 迂回はできん!


 このまま突っ切るぞ!」


 被害は出るだろう。

 ここまで厳しい陽動をこなし、必死に抑制してきたわけだが。


 でも仕方ない。

 こちらは今、数で勝り勢いで(まさ)っている。

 今更方向転換して横腹を見せるより、このままの方が軽傷で済む。


 それに何より、エゴなのは重々承知だが、


「コンクカンツァーでの、クレッケル卿の因縁。


 あそこで討ち漏らした結果の、先のノエブリンガーでの敗退。



 そろそろキサマとの因縁も仕舞いにしたいところだな! 『鉄鹿』ァ!!」



 ヤツに挑みたい理由がある。


「騎士団傾注!

 もう壁はいらん! チンタラ進んでいたら、後ろが追い付かれるからな!


 死にたくなければ、とにかく走れ!」


 まるで私の宣言を待っていたかのように。

『鉄鹿』がゆっくり剣を抜き放ち、頭上に掲げる。


 お互い遠く、姿もはっきりとは見えちゃいない。

 私は体格で、アイツはハルバードの長さで相手を認識しているに過ぎないだろう。


 それでも、



 今、確実に『鉄鹿』と目が合った。



 私たちには分かる。

 なぜなら、


 ちょうど『鉄鹿』が剣を振り下ろしたからだ。


 それが合図。


 来るぞーっ!


 と叫んだ気がする。

 しかしそれも自分で聞こえないほどの轟音。


 なんなら激しい火薬のフラッシュで、視界すら奪われる。


 最初に感覚を戻したのは聴覚。

 悲鳴や雄叫びが聞こえる。

 味方のものだろう


 視覚が消滅していたわけじゃないが、


『見えている』

『感覚が機能している』


 ということを、響く声で叩き起こされる。


 こんな調子じゃ、死んでも分からんな。

 大筒も小筒も、当たらなかったのは偶然だろう。

 いくら精度が高くないとはいえ、私を狙ったヤツも多かっただろうに。


 こんな状況でなんだが、運がいいのかもしれん。

 運がいい()()()に、


「フューちゃん! 無事!?」

「オマエもか!」


 アネッサも無事だったようだ。

 だったら全然いい、と言ったら人の心がないが。


 正直いちいち被害を確認している段階ではない。

 後ろを振り返りはするまい。


 一応地雷原潰しに火属性魔法だけ先へ飛ばしつつ、

 前のみを見据える。


「走れ走れ! 敵にはインターバルがあるぞ!

 速く進んだ分だけ撃たれずに済む!」


 もう何度も伝えてきたウィークポイント。

 今更かもしれないが、条件反射的に希望が湧いてもくるものだ。


 距離が近付いてくると、入れ替わりに矢や魔法が飛んでくる。

 だが正直、散々大筒小筒を喰らったあとだと怖くない。

 いや、当たりどころが悪いと死ぬんだけどな?


 だが、それが私だけでないことは



「「「「「うおおおおおっ!!」」」」」



 味方の声が証明している。

 まったく衰えていないし、そんなに距離が離れてもいない。

 みんな恐れず、ピッタリくっ付いてきているってことだ。


 あるいはそんな細かいことは考えてなくて、単なるアドレナリンかもしれんがな。


 矢や魔法が止まると、また入れ替わり立ち替わりで小筒隊が前に出る。


「来るぞ! 備えろ!」


 今度はさっきより近いからな。

 より命中精度も上がるだろう。


 明らかにこっちを見ているヤツがいるのも感じる。

 運だけではかわせないだろう。


 できるだけ姿勢を低く、地面を這うような角度で。

 突き出した頭はハルバードのデカい斧部分を盾にする。


 響く轟音。

 手に伝わる衝撃。


 だが痛みはない。


「小筒隊敗れたり!」


 本当は掠っているけど痛みを感じていないだけ、なんて可能性もあるけどな。

 その場合は、感じていないのでないものとする。


 そんなことより大事なのは、


「1、2、3」


 体に馴染んだハルバードの長さ。

 それにより覚えた、『どの間合いから刃が届くか』。


 そこに至る歩数。


 最後に、



「お お お あ あ !!」



 振りかぶったハルバードを叩き付ける先に、『鉄鹿』がいるか。



 そこに意識を集中する。


「フューちゃん!」


 交戦状態となった私の背に、何はなくとも叫んだアネッサの声がして



「久しぶりだなぁ、ジビエ野郎!」

「この身のあだ名を指して言うのであれば、『女熊』も変わらんのではないか?」



 手応えはない。

 さすがに見えていた一撃は、剣で受け止められたらしい。


 つまりは、私の腕力で、全力の、遠心力も乗った重いハルバードを、

 受け止めるだけの腕力があるということだ。


「その様子だと、肋も無事治ったようだな?」

「さて。今でも()()()痛むものでな。

 後遺症か気のせいか、まったく関係がない別の何かか」


「『鉄鹿』さま!」


 私の接近を許したことに、敵兵たちが動揺している。

 しかし、


「手出し無用。それより弾込めを遅らせるな。

 諸君らは敵勢の進行を止めることに注力せよ」

「は、ははっ!」


 さすがに『鉄鹿』は冷静か。

 脚の速い私がひと足先に乗り込んで撹乱、とはいかなかったようだ。


「お熱いアプローチだな。悪い気はしないぞ」

「それは砲煙弾雨の中を、この身の元まで駆け抜けてきたそちらにこそ相応しいだろう」


「そう、かいっ!」


 今度は横薙ぎ。

『鉄鹿』は馬から飛び降りつつかわす。


 受けてもそのまま力で叩き落とされると考えたか。

 あるいは何度も打ち合っていれば、剣がへし折られると判断したか。


 向こうも私と戦ううえでの、ある程度の研究がなされているらしい。


 プロポーズでもする気か?

 だったら私は面食いだからな。

 まずはその血化粧を落として、素顔を確認させてほしいものだ。


 だがまぁそれも、


「ここでキサマを討ち取って、



 あとでじっくり首実験させてもらうとしよう!」

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