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一転攻勢

「団長! これ以上深入りすると、離脱するときに支障が!」


 アネッサの声がかろうじて聞こえる。


 皆さん1話ぶり、フューガ・ミュラーだ(フォンが有効か分からない)。

 私たちは絶賛、ブルーメ・ガトーを血で染めるのに忙しい。

 悪魔かな?


「さっきも言ったろう! 中途半端に止まっては陽動がバレかねん! それに!」


 いちいち説明しているのもキツい。

 しかし、せねばならんのが指揮官の役割だ。


「ある程度敵を押し込んでおかんと、逆に離脱に支障が出るぞ!

 背中にピッタリくっ付かれてボコボコだ!」


 でもこれ、聞こえているのか?

 聞こえているとは思うんだが。

 私のすぐ後ろにいるし、前は壁だし、しゃがんでいるから頭の位置も近いし。


 そう思うくらいには、


「第一、この数だぞ。


『時間を稼ごう』


 なんて受けにまわった考えで耐えられるか!

 死ぬ気でやってワンチャンスだ!」


 さすがに派手に騒ぎすぎたか。

 いや、どのみちこうなっただろう。


 援軍が加速度的に増加し、とんでもない量の小筒と壺攻撃に晒されている。


 もう擬音にしたら何か、ってのも考えられない轟音だ。音の暴力だ。


「そんなこと言ったって、明らかにもう進めてないよ!?」

「壁作っても壊されるからな!」

「逃げた方がいいって! みんなフューちゃんみたいに魔力無尽蔵じゃないんだ!」


『団長』呼びじゃなくなったな。

 体裁を保っていられないくらいには焦っているらしい。


「だったら向こうの火薬も、無尽蔵ではないはずなんだがな……!」


 こちらも魔法を撃ち返してはいるが、弾幕に差がありすぎる。

 射程も量も。


 連射性だけは魔法が勝る。

 しかし敵も増えるにつれて、魔法の練度が高いヤツも増えた。


 先手で得ていたアドバンテージは、なくなったと見るべきだろう。


「時間経過で悪化したってことは、このままだと捲られる、ってことか」


 思考に集中していたせいだろうか。


「っ」


 急拵えの壁の角度が悪かったんだろう。

 陶器の破片が跳弾して、左の頬を浅く切る。


「大丈夫!?」

「あぁ、顔だからな」


 顔は他の部位より、ちょっとの傷で血がよく出る。

 皮が張ってるからとか血管がどうとかだったっけな。

 学術的に分かってなくとも、騎士をやってりゃ自然と経験則で学ぶもんだが。


 分かったうえでも、指揮官の顔が負傷丸出しなのは士気に関わるか。

 幅自体は広かったらしく、痛みより濡れる感覚がある。


 何より、私まで負傷したということは、だ。


 少しずつ出始めた味方の死傷者。

 これも加速度的に増えていくことだろう。


「勝たなくてもいいが、潮時で退けんのが陽動のツラいところだな」

「言ってる場合!? とりあえず止血するからこっち向いて!」

「自分でできるよ」

「できるけどいつも


『この程度なら不要だ』(キリッ)


 とかやってんじゃん! つべこべ言うな!」

「ぐえっ」


 両手で顔を挟まれて、無理矢理アネッサの方へ、


 後方へ振り返らされたそのとき、



 視界に飛び込んできたのは



「な」




 ボッ、と

 ここまで聞こえてくるような。



 いや、実際鳴ったんだろう。

 空気中の酸素を一気飲みした音だ。




「なんちゅう火力だ……」




 ノエブリンガー山頂から、巨大な火柱が上がっている。





「お空を支える柱でも作るつもり……?」

「ていうかだな、陣中にだって大筒用の火薬とかあるはずだぞ。

 自爆が怖くないのか?」


 なんか空に、ラクガキみたいなアンヌ=マリーのダブルピース幻覚が見える。


 ナルデーニや『鉄鹿』と違って、アイツとは直接やり合っていないが、


「やらんで済んでよかったよ」


 ちょっと無茶苦茶がすぎる。

 ああいうのが野心持ったら、国家なんて一瞬で終わるんじゃないだろうか。


「すごいねー」

「なー」

「……」

「……」



「いや違う!!」

「ボーッとしている場合じゃないぞ!!」



 ノエブリンガーの敵陣が壊滅(確認いらないだろアレ)したってことは!




「総員! 作戦成功だ!!」




「「「「「おおおおおおっ!!」」」」」


 私たちの苦労が身を結んだってことだ。


 となれば、もうこんなところは()()()()

 そのためにも、


「だがウチに帰るまでが遠足だっ!



 まず手始めに、目の前の連中を叩き潰せっ!!」



 結局背後を叩かれたら()()()()()()からな。

 先にこっちが鼻っ面を殴ってやろうじゃないか。



「掛かれっ!」



「えっ? うわっ!」


 ちょうど敵はノエブリンガーの火柱に気を取られていたようだ。

 お得意の小筒も、撃たなきゃ花瓶にもなりゃしない。


「う、撃てっ、あっつ!?」


 こうなると、調子乗ってたのが災いしてくるぞ。

 数が多く集まっているのも弱点に変わる。


 アンヌ=マリーにも話したが、あんな筒、連射してたらすぐに熱を持つ。

 そんな慌てたら、布を巻いていない部分を触ってしまうヤツはいる。


 これだけいれば、必ずいる。

 それなりの人数いる。


 そしたらまた、そのなかから


「うわあっ!?」

「ぎゃっ!?」


 暴発や誤射を起こすヤツも出てくるさ。


 それが今度は、壺を落とすとかに派生していって、



「い、いかん! 突撃中止! 巻き込まれるぞ!

 東だ! 東へ迎え! とっとと()()()()ぞ!」



「ぎゃああああああ!!」



「フューちゃん、アイツら自爆してる!」

「アネッサの風すらいらんかったな……」


 なんにせよラッキーだ。

 これで連中は追撃してこれるまい。


 このまえの戦闘でこちらがやられたように、


「ひっ! ひっ!」


 火薬の音と衝撃は、敵兵すらも恐怖で動けなくさせるのだ。


「川もある! 手間取ると追い付かれるからな! スタコラサッサだ!」


 90度の回れ右。

 ノエブリンガーに味方がいるとはいえ、登山より平地へ抜けた方がいい。

 そっちの方がアルエ川の流れもマシになるからな。


「急げ急げ! もうその都度の指示は出さん!

 各自ファイエゲナウへ渡り、ユング通りに沿って帰るんだ!」


 私たちだって大変な思いをしたんだ。

 ここぞの逃げ足を発揮して、






「そろそろ川だな!」


 幸いにして邪魔する者もなく、ブルーメ・ガトーを突っ切った。

 だが、


 そのあと一歩というところで、


「フューちゃん! 前方に敵部隊!」


 最後の関門が立ちはだかる。


「数は多くない! 一気に叩き潰せ!」

「だけど!」


「!!」


 明らかにこちらを受け止めるには足りていない敵部隊。

 しかし、その先頭に立つ門番は、



 馬上であることを差し引いても非常な長躯。

 西陽を正面から受けていることを差し引いても赤黒いシルエット。



「『鉄鹿』、か……!」

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