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派手に派手に派手に

 とは言っても、今のは早めに来たヤツを()()()()だけだ。


「もうこんなところまで来ているぞ!」

「なんとしても食い止めろ!」

「懲罰モンだ! 死にたくなけりゃあ殺せ!」


 大国の、大軍の、敵中ど真ん中だ。

 次から次へと増援が湧いてくる。


「壁に入れ!」


 だんだん集まってくるし、数も増えてくる。


 が、1発の威力が上がるわけではない。


「よしよし、全然耐えるな」


 壁を貫通してくることはない。

 あの筒じゃ、容量的にも耐久的にも火薬は増やせまい。


「どれどれ」

「団長、顔出すと危ない」

「だがなアネッサ。

 よく見てなくて飛び出した方が危ないこともあるぞ。

 インターバルと思ったら時間差撃ちかもしれん」


 だがそこまで冷静ではないらしい。


 音が止めば、こちらに筒を向けているヤツはいない。

 みんなモタモタ穴に火薬を注いでいる。


「行けそうだな」


 その代わり、


「! いや待て!」


 何やら陶器の壺を持ったヤツらが現れる。

 手のひらに少し余るくらいのサイズで、縄で括ってぶら下げている。


 他と違い、ゲイル語文化圏だから何言ってるかは分かる。

 が、それ以前に、



「ぶっ飛べ!!」



「伏せろ!!」


 アレが何を狙ったものかは、大体察せられる。


 指示が通ったか確認している暇はない。

 なんなら先頭にいる私が一番危ないんだ。


 すぐさま、小筒の1発とは比べものにならん音がして、



「無事かーっ!」

「はっ、はいっ!」


「今すぐ壁を作りなおせ! 次が来るぞ!」



 幸い負傷はしなかったが、小筒すら防ぐ壁が崩された。

 チクショウ土まみれだ。


 壺いっぱいに火薬を詰めて、塊を投げつけてきたな?

 これも恐るべき新兵器だし、なるほど構造も扱いも簡単だ。

『鉄鹿』の石礫(いしつぶて)スタイルがなけりゃ、真っ先に思い付くヤツだ。


「団長! どうするの!?」

「無理に前へ出ると危ないし、『耐え』といきたいところだがな。

 時間を掛ければ掛けるほど、包囲が厳しくなるだろうな」


 壁なんか立てなおせばいいったって。

 何個も何個も投げ込まれりゃ大変なことになるからな。

 味方が魔力切れを起こすってこともある。


 まったく、新兵器に対策立ててきたら次のビックリドッキリ出しやがって。


 だが言うほどマズいことばかりでもない。


「屋根もしっかりさせておけよ?

 あんなモンをポンポン投げてボンボン言わしてりゃ、


 そろそろノエブリンガーの連中もこっちに気付いて、攻撃してくる頃合いだ」


 陽動に関しちゃ、100点の状況を引き出せたと言えよう。


 あとは私たちが生存するだけだ。


「アネッサ。風魔法を頼めるか」

「ガッテン!」

「私が合図をしたら頼む」


 さて、陶器の破片とかも危ないが、もう一度顔を出すか。


 今までは弾丸を防ぎつつ、ジリジリ壁を増やして進んでいた。


 だが今回の壺は壁を壊すので、その修復の繰り返し。

 向こうも『足止めに有効だ』と次々運んできている。


 また何人かが紐を振り子のように揺らしはじめている。


「いつでも行けるよ」

「まだだぞ、まだだぞ」


 壺から伸びている紐には火が着いている。

 今すぐは爆発しないように、時間差で引火させるための機構か。

 その火種が消えないよう、注意深く壺を加速させ


 肩に力が籠ったその瞬間



「今だ!」



 アネッサが強風を吹かせる。

 一瞬でもいい。その分強力な風圧を効かせてもらう。


「うおっ」


 敵兵はより遠くへ壺を飛ばそうと、ステップを踏む最中。


 ちょうど片足でバランスが怪しくなったところ。


 そこへ唐突に強風が吹けば、


「おっおっ」


 体勢を崩し、壺を地面に叩き付け、



「があああっ!!」



 大爆発。

 からの周囲への誘爆。


 阿鼻叫喚の爆発事故が繰り広げられる。



「うわあああ、ああああ」

「がああ!」

「腕っ、腕がっ!」

「前が見えん!」

「ひいっ、ひいぃっ!」


 いいか鉄血ども。思い知れ。

 確かに命を奪うのにいいも悪いも存在せんがな。


 一撃で粉々になったヤツは幸いだ。


 だが、中途半端に体が吹っ飛び、しかも助かる見込みのない者たち。


 これが火薬で殺し合いをするってことだ。


 もちろん刃で殺し合うことが尊いなどと思わんが、


 自分の手で命を奪う瞬間を忘れ、目の前で死ぬ命へのリスペクトを忘れ、


 ただより早く、より楽に、より多く

 殺しの効率化に囚われた末路がこれだ。



「北方方面軍の痛みを思い知れ」



 ま、それはただの私怨だろう。

 証拠に、後ろの騎士たちが絶句、ドン引きしている。

 似たようなのは大筒で見ているし、やられたはずなんだがな?


 それはよかろう。

 人としては慣れない方が健全なのだし。


 何より、そんなこと考えている場合じゃない。



「今だっ! 掛かれっ!


 諸君らに心あらば、騎士の誇りあらば、死に損ないどもを楽にしてやれっ!!」



 ますます広がった風穴、活用しないわけにはいかない。


「団長! あんまり深入りすると!」

「分かっている!

 だからこそ派手にやるんだ! ピンチを演出するんだ!


 高みの見物しているヤツらが、無視できないほどの展開をな!」


 逆に半端に止まれば、『陽動がバレる』とまではいかなくとも、勘繰られる。


 妹魔法と一緒だ。

 やるからには手抜きなく、100パーセントで演じなければならん。


 それに、せっかくの有利だしな。

 いずれ私たちが離脱するのは織り込み済みとしても、


 別に、叩いてしまってもかまわんのだろう?


 やってはいかんという決まりはない。


「行け行け! 火属性の上手はどんどん撒き散らしてやれ!

 引火と誘爆で、ここを地獄の釜の底にしてやれ!」


 私の合図に導かれてか、妹魔法のよくない予後か。


 熱に浮かされた数人が、私より前に、


 壁と屋根より前に飛び出した瞬間、



 地面に倒れる。


 乾いた甲高い音が()()()()した。



「フューちゃん!」

「団長と呼べ! それより、


 遅かったじゃないか。待ち侘びたぞ」


 戦死者を前に言うのは倫理観がなさすぎるがな。


 だが振り返れば分かる。

 低山で、高低差込みでも意外と近い距離にある以上に、



 あの気配は、ノエブリンガーの敵がこちらへ集まっている。



「後方からの射撃だ! 屋根を展開しろ!」



 釣れたぞ!

 我が()()成れり!

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