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開戦

「『鉄鹿』も来ているらしいな」

「旗は見えないけどね」


 私たちいつもの三大将 with アネッサは、アルテンテヒャーに来ている。


 ここは鉄血軍が到着したノエブリンガーという低山の尾根伝い。

 もはや地名を分ける必要があったのか分からん。

 でも昔の人がそうしたからには、なんかあるんだろう。



 それは今、どうでもいい。

 私たち4人は、あと数十名の供回りでこっそり、


 連中の偵察に来ている。


「意外だね。フロイラインの話を聞いていたから、先行してくるものだと」

「我々フルールが両殿下を大義名分にしているように。

 向こうも一応はマルグリット殿下を戴いている。

 足並みを揃える必要があったのでしょう」

「てことは、マルグリット殿下も従軍なさっているということか。

 鉄血本国で人質みたいになっているかと」

「それは私たちが両殿下引っ張り出して来たから、対抗したんじゃない?」


 確かに。

 (いくさ)の勝敗が第一ではあるが、象徴性の競争でもあるからな。


 ただ、それなら白十字の旗がどこかに立っているはず。

 しかし『鉄鹿』同様、ここからは見えない。


 手前の山に陣取った連中は、全て鉄血のようだ。


「いらっしゃるとすれば、ブルーメ・ガトーの方か」

「一応まだ陣を築いている最中だ。あとで配置が変わるかもしれない」


 モミアゲがモミアゲを撫でるも、


「いえ、それはないでしょう」


 アンヌ=マリーが即座に否定する。

 ムッとした顔をするモミアゲだが。


 悪いが聞かずとも分かる。

 絶対アンヌ=マリーの意見の方が正しい。


「相手がいかに大軍勢とはいえ、ブルーメ・ガトーに収まらないことはない。


 また、ノエブリンガーの麓にはアルエ川が流れています」


「なんか、私より地理に詳しくないかい?」


 残念だかモミアゲ。

 将としての器量はアンヌ=マリーの方が上だぞ。

 言うほど残念でもないか。


「これでは両陣の連携に支障が出る。

 だのに敵は手勢を割き、ノエブリンガーを抑えました。


 なんのためか分かりますか?」


「あ、っと」


「その先にいる我々を牽制するためです」


 おいおい、授業か。

 しかし、いち修道女の方が、いやしくも方面軍指揮官の騎士より上なぁ。

 私は残念ではないが、オマエは残念なヤツだよモミアゲ。


「ここを我々に取られれば、高低の差はつき、動きは鳥瞰(ちょうかん)される。


 それを避けるために()()()()()抑えている」


「敵は我々が仕掛けてくることを想定しているってことか」


「はい。ですのでこちらにマルグリット殿下を配置することはないでしょう。


 万が一こちらの手に渡れば、後継者問題はフルールが独占。

 彼らの遠征は土地を奪って終わりになってしまう。


『マルグリット殿下のため』


 という大義名分で奪った土地まで返しはしないでしょうが」


 と、モミアゲへの特別講義が終わったところで。


「じゃあフューちゃん、今すぐ仕掛けた方がいいよね?」


 アネッサが話を本筋へ戻す。


「向こうはこっちを意識してる。

 ってことは、ここからもっと防衛を固めてくるわけでさ。


 早く仕掛けないと、陣だけじゃなくて地雷原まで作られちゃうよ」


「うむ」

「どのみち帝国軍と戦うのは決まってるんだしさ。

 だったらそのまえに勝負に持ち込まないと」


 まったくもってそのとおりだ。

 見習えモミアゲ。


「ではすぐに戻って出陣いたしましょう。急げば陣も未完成のうちに奇襲できる」


 というわけで、私たちは偵察を切り上げた。


 何やらアルテンテヒャーには美しい池があるのだとか。

 だが残念ながら、観光している時間はない。


 また今度にしよう。


 血で汚れていなければ。











 斥候によれば、敵軍の総勢はこちらと大差ないらしい。


 が、ノエブリンガーのみで見れば3分の1とかそんなくらいか。


 こちらが全体でぶつかれば、その兵力差は圧倒的だ。

 惜しむらくは山で木が多く、数を生かした大展開ができないことだが


「また先頭で突っ込んでいくの? そろそろ後ろでふんぞり返ったらいいのに」

「それがオマエの大好きな私か?」


 先手衆を率いるのは、久しぶりに私とアネッサのコンビだ。


 何ヶ月も離れていたわけじゃないが、最近は別行動だったしな。

 あと会議シーンばっかり(?)。


 やっぱり『久しぶり』って感じがするし、


「ううん、これが一番『フューちゃん』って感じ。


 負ける気がしない」


「私もさ」


 手の中のハルバードが、いつもより馴染む気がする。

 馬にも乗っていないが足取りは軽い。

 気分はハイキングだ。



 さて、坂を登りきると少し高いところに出る。

 そこは鉄血の陣を見下ろせる位置だ。


 そのうえ、(くだ)りの斜面はやや険しい。

 が、()りれないことはない。


 つまり、



 凶悪なまでの、(さか)落としの勢いで攻め込む、ということだ。



 木々の隙間から敵陣の様子が見える。


 木を切り倒して(ひら)けた場所を広げているようだ。


「人の国の山を環境破壊しやがって」

「許せないよねぇ」


 アネッサが悪い顔で頷く。

 では、意思の統一もなったところで。


 これから戦火で荒れるだろう空気を、新鮮なうちにいっぱいに吸い込み、



「全軍、掛かれぇっ!!」



 言うや否や飛び出す、一番槍は私だ!


「掛かれーっ!」


 背後にはアネッサの続く気配。



「「「「「おおおおーっ!!!!」」」」」



 さらには士気じゅうぶん。

 先手を務める西方方面軍5,000が続く。


 そこからはまた、分けた意味がないほど間髪入れず味方が続くだろう。


 一歩進むごとに敵が近付く。

 まだ多少の距離はあるが、気分は目と鼻の先だ。



「総員! さっさと片付けて、昼飯に間に合わせるぞ!」



 敵ではなく、勝利へ向かって駆けていく

 その最中(さなか)



 ん?


 アレはなんだ?



 敵襲に慌てる敵陣。

 まだ遠く小さくて詳細は分からないが、



 車輪に挟まれた、デカい筒のようなものが引っ張り出されている。



 嫌な予感がした刹那、


 こちらを向いた筒が光って、



 背後から強烈な轟音と衝撃が被さってきた。











お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりドキドキしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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