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栗田さんの憂鬱な美少女生活  作者: 黒田如風


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123/129

あなたのためと言いつつも③

 暗い室内で重なる寝息。

 パジャマ越しに密着する肌。

 布団の中で伸びて来た指先が、腕に絡みつき抱き締められた。

 ぬくもりを欲するように。

 既視感とは良く言ったものだ。

 いつぞやの木村さんと同じ状況。

 偶然……ではないな。

 どこかで話しを聞いて、同じ事をしたいと彼女が望んだ結果だろう。


「あの………」

「ん?」

「うざいとか、思ってます?」


 耳元で囁かれるお伺い。

 強引にしておきながら、嫌われたらどうしようと不安になるあたり、実に宇垣さんらしい。


「別に」


 敢えて、そっけなく答えた。

 娘の春佳が幼い時も、よく一緒に寝ていたっけ。

 懐かしいな。

 そんな事、彼女に話せるわけもないが。


「栗田さん。少しお話しをしても、よろしいでしょうか?」

「良いけど」


 眠れないとか?


「あと何人の方と、お会いする予定ですか?」

「そうだねぇ」


 性別反転者をネット上で検索し、片っ端から連絡を試みた。

 半分は返信がなく。

 更に半分は明らかに偽者。

 直接、面談まで辿り付けたのは結果的に数人のみ。


「まぁ、それなりに収穫は有ったけど………」


 未だ肝心な情報が欠けていた。


「登録方法が、まだ判らないんだ」


 性別反転を実行するネットアドレスには、今でもアクセスだけは可能。

 だが、自分の登録情報では入り口で弾かれる。

 先へ進むには、新規登録が必要だった。


「でも、有力なそうな人は、もう残っていないのでは?」

「いるよ。あと一人だけ」

「まさか、あの人ですか? それ絶対に危険ですよっ!?」


 やめてくださいと言わんばかりに、宇垣さんは腕を強く握った。


「危ないのは判ってるよ。でも、放っておくのもさ、少し可哀想だから」


 ずっと気になっている人がいた。

 女性から男性への性別反転者。

 年齢は中学生くらい。

 もともと不登校だったらしいが、性別が変わってから一歩も部屋から出られず、以後は引き籠もり生活との事。

 連絡を取り合った当初、ネットでの会話を要望されたが、丁重にお断りした。

 自分の身を守るためにも、情報の露出や漏洩に繋がる方法はなるべく避けたい。

 対面にこだわるのも、それが一番の理由だった。


「栗田さん。わたしも一緒に連れて行ってください。二人なら、危険度は下がりますよね?」

「その気持ちは嬉しいけど……」


 確かに二人なら心強いのだが。


「自分の身を守る事が出来る? 逃げ足も遅いよねぇ~」

「それは………そうですけど」


 一人だけなら何とかなりそうだが。

 宇垣さんと一緒だと、流石に自信がない。


「では、男子と一緒行くのは?」

「向こうが警戒して、会ってくれないと思う」


 もし誰かを連れて行くとしたら。

 三川君の妹、一香ちゃんが適任だろうけど。

 その為だけに、自分の正体を明かすのは気が引けた。


「もし雰囲気がダメそうなら、即座に走って逃げ出すよ」


 明るい声で答えるも。

 心の底では、一抹の不安を感じていた。


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