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王国一の不運公爵と婚約しましたが、デートが毎回大冒険で最高です! ~噴水が割れても馬車が逃げても、次はどこへ行きましょう?~

作者:くらたん
最新エピソード掲載日:2026/08/02
 〈晴れ女〉と申します。

 進水式に、棟上げに、船出に、契約の席に。十九年、二百三十一回、わたくしは座らされて微笑んで「本日は、よき日にございます」と申し上げてまいりました。走ったことはございません。転んで傷がつくと、縁起が悪いのだそうです。

 そして本日、王国一の不運公爵と婚約いたします。

 行く先で物が壊れ、人が転び、屋根が落ちる。婚約は三度流れ、わたくしが四人目。

 顔合わせの乾杯の直後、天井飾りが落ちてまいりました。あの方がわたくしを抱えて避け、卓が傾き、床板が抜けて、二人そろって生垣へ。倒れた拍子に噴水が割れて、水柱が上がりました。

 泥と葉と水をかぶって、わたくしは息を切らしておりました。

 ——生まれて初めて、走ったのです。

「……申し訳ない」

「いいえ。最高です!」

 次のお出かけでは馬車が逃げました。その次は緞帳が落ちました。舟は流されて、対岸の村の祝言で踊りました。家の者が書いた予定は、一項目も残ったためしがございません。

 ——けれど、自分で書いた栞だけは、少しちがったのです。

 あの方は大きな革の鞄をさげていらっしゃいます。縄、添木、笛、油紙、火口と火打ち、晒、香油、鋸、砂の袋、替えの靴紐。それに、人を雇うための銅貨が二十枚。——合わせて十一品。壊れたあとに、まだそこに居るための道具ばかりです。

 うまくいかなかった日に隣にいてくれる人は、わたくし、これが初めてなのです。

 ——さて、あの方。次は、どこへ行きましょう?
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