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【ノベル7巻4/7発売!】悪役令嬢の矜持〜婚約者を奪い取って義姉を追い出した私は、どうやら今から破滅するようです。〜  作者: メアリー=ドゥ
第六部/表 淀んだ過去の亡霊に。

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国王陛下の謝罪。


 ーーーその翌日。


 エサノヴァの情報を得たエイデスと連れ立って、ウェルミィはお義姉様の元へと向かった。

 場所は、王城の編纂室でもお義姉様に与えられた王妃宮でもなく、王城の謁見室である。


 そうして姿を見せた相手を、ウェルミィ達は最敬礼で出迎えた。


 一人は当然、お義姉様……後ろにはオレイアが控えており、ミザリの姿はない。

 そして連れ立って現れたもう一人は、レオだった。


 こちらはウェルミィとエイデス、ヘーゼルとシドゥ、そして万一何かが起こった場合に備えてヌーアが同席している。


「貴方が出張る程の話かしら」


 わざわざこの場に現れたレオに、ウェルミィは開口一番にそう問いかけた。


 訪れた際に出迎えてくれたオレイアから、『国王陛下が今回の来訪に際して同席なさりたいと仰っておられます』と伝えられたのだ。


 別にそれ自体は構わなかったけれど。


「何かおかしいか? ウェルミィ」


 流石に正装はしていないけれど、王として立った後からそれなりに威厳を備えているレオは、笑みを浮かべながら片眉を上げた。


「王城内で誘拐事件が起こったんだぞ。しかも拐われたのは、我が国の筆頭侯爵家であるオルミラージュ侯爵家の夫人付き侍女だ。由々しき事態だろう」


 と、レオはヘーゼルに気遣うように目を向ける。


「恐ろしい思いをしたと思う、ヘーゼル。こちらの警備体制の落ち度もある。すまなかった」


 謝られたヘーゼルが戸惑ったように視線を向けてくるのに、ウェルミィは小さく頷いた。


「め、滅相もございません、国王陛下……身に余るお気遣いありがとうございます……!」


 彼女は緊張していたけれど、今のところ言葉通り、無理はしていない。

 【精神操作の魔薬】の影響は短時間だったこともあり軽微だったし、心情については多分、シドゥがあの後、どうにか落ち着かせてくれたのだろう。


 今朝方も、多少ルトリアノの件で固くはあったものの、感情の乱れは特になかった。

 レオがこちらに目配せをしてくるのに、ウェルミィは『本当に大丈夫よ』と、小さく笑みを浮かべて応える。


「重ね重ね、申し訳なかった。犯人から情報を得たら、今後同じことが起こらないように善処しよう」


 元々王族は、臣下に対して頭を下げてはならないし、最大限の謝罪は『遺憾の意を表する』ことだった。

 それはかつてと変わらないルールだけれど、レオはそれに関して、自分が国王になってから変えたことがある。


『公的な場ではまだしも、私的な場で謝罪するくらいはいいだろう。人に対して何か迷惑を掛けたら、相手が臣下であろうと目上であろうと謝る。当然のことだ』と。


 多くの守るべき人々の為に王の権威と法を守るのなら、同様に、守るべき人々の感情も大切にする。

 それがレオの基本方針であると聞いた時、ウェルミィは問いかけた。


『絶対、勘違いする連中や口うるさい連中が出てくるわよ?』


 するとレオは、それに対してこう答えたのだ。


『差別と区別は違う、というのが父の教えだ。この程度のことでその線引きが見えなくなる者は、差別を助長する。本当に国に必要な諫言をしている人物かどうかを見極めるのが『王』の役割だろう?』


 そんな彼に、先代国王陛下の姿が重なった。


 あの方は、ウェルミィがレオにいつもの軽口を叩いても咎めることなく『息子に気の置けない友人が出来たようだ』と、先代王妃殿下と共に喜んでいた。

 けれど、人が罪を犯したり役割を逸脱した行為を行った場合には、温情こそかけるけれど、何らかの代償を求め、制裁を与えていた。


 ウェルミィ自身がかつて救われた、証人保護や司法取引に関する法律の制定も、エイデスやレオ達の進言だけでなく『線を引くべき部分』だと先代陛下がご判断なさったから作られたものだ。


 理と情に、どこで『線』を引くのかを示し続けること。


 レオはそれが『王』の役割だと先代陛下の姿から学んだのだろうし、そんな彼にとってヘーゼル達は特別な存在だからこそ、わざわざ顔を見せたのだろうと納得する。


 元々、グリンデル伯爵家を襲った悲劇は、レオが特務卿に就任した際に最初に担当した事件なのだ。

 あの時レオはその凄惨さと、お義姉様の時とは違って自分には防ぎようがなかった事実に直面して、心が折れかけていた。


 そんな彼にウェルミィは『人は神ではないし、それが起こらないように少しでも努力出来る立場が王でしょう』と伝えたのだ。


 最初に保護した被害者であるヘーゼルとミザリは、先代陛下から『王』を受け継いだレオが守るべき民の象徴でもあり、同時に彼自身の契機でもあった。

 本当に『王として立つ覚悟』を定めたのだろう彼は、まだ多少残っていた甘さが完全に抜けて、頼もしく変わっていったのだ。


 ウェルミィは別に、レオがこの場に同席するのが嫌だったわけではなく、本当に理由が知りたかっただけである。


「ヘーゼルに謝りに来ただけなの? 犯人はエイデスが捕まえたし、他に何かあるのかしら?」


 話を先に進めると、レオは表情を引き締めた。


「犯人は朱色の瞳の男なんだろう? それも、イオーラの母であるローラ・エルネスト伯爵夫人の縁戚関係者かもしれない、と聞いた。妻に関係するかもしれない話をするのに、夫が同席するのは何もおかしな話ではない」

「まぁ、そうね」


 ウェルミィ自身もだけれど、お義姉様もその話を今朝方、エイデスの出した早馬で聞いたばかりだろう。

 ついでに、ミザリに『グリンデル伯爵家の真実』を伝えるかどうかも、この場で決めてしまおうと予め伝えて貰っていた。


 お義姉様の顔を見ると、動揺はしていないようである。

 

「お義姉様は、この件についてどう思ってるの?」

「以前、ウェルミィにリロウド公爵家に赴いて欲しいとお願いした時のことを、覚えているかしら」

「ええ。例の件でよね」


 ルトリアノの霊やヘーゼルの誘拐は、元々〝精霊の愛し子〟について調べていた時に起こったことである。


「その時に、ペソティカ男爵とは別ルートで調べておくことも幾つか言ったと思うけれど、サバリンとお母様が再婚した時に縁を切ったという親戚とも、辿れる限り連絡を取ったわ」

「それで?」


 お義姉様の話が少し本題から外れている気もしたけれど、ウェルミィは先を促す。

 関係のない話をし始める人ではないからだ。


「残念ながら、お母様のご実家も幾つかのご不幸が重なって、血の繋がりが特にない遠縁の方に継がれていたわ。お母様が再婚を決意したのもそうした事情があったようなの」

「頼れなかったのね」


 〝精霊の愛し子〟についての話は、伝わらなかったのだ。

 多分その遠縁というのは、言い方からして血族の伴侶に当たる人物で、主家だった家の詳しい事情を誰も知らなかったのだろう。


「あては外れてしまったのだけれど、わたくしのお祖父様に当たる人物が、どうやら中央大陸北部からこちらに渡って来られた方だということは分かったの」

「それって……」

「ええ。多分、もう一つの朱色の瞳の一族よ」


 そこで、エイデスが口を挟む。


「なるほど。ヘーゼル誘拐の犯人が『ローラ・エルネスト伯爵夫人の甥』の可能性がある、と話を聞いて思ったが、そういう繋がりか。『バルザム覇権戦争』で帝国に併呑される前にどこかの小国に住んでいた人物が、夫人の実家に入ったと」

「はい。向こうの一族がお母様の実家を頼った事情も、おそらくは」


 二つの〝精霊の愛し子〟の一族が繋がり、再び別れたのだ。

 

「そして別に探っていた二つのルートで、それぞれ有力な情報を得ました。その情報を重ね合わせたら、ある意味当然の帰結ですが……お母様のご実家は、かつてリロウド公爵家の分家だったことが発覚しました」


 ーーーまぁ、そうよね。


 ウェルミィは納得しかなかった。


 というよりも本来であれば、最も血の濃い〝精霊の愛し子〟の血族である筈のリロウド公爵家からお義姉様が生まれないと、おかしいのである。


 なのに何故お義姉様が『エルネスト伯爵令嬢』だったのかを考えれば、『どこかで〝精霊の愛し子〟とリロウド公爵家が袂をわかった』というのがごく自然な話だ。


「それが分かった二つのルートって、どれのこと?」

 

 リロウド公爵家の話はウェルミィに任されているし、クラーテスお父様に聞いたら会えそうだったので、今後会いに行く予定だったのだ。


 するとお義姉様は微笑んで、レオに頷きかける。

 彼がスッと手を挙げると、オレイアが控え室に続く入り口の方に向かい、そちらから数人の方々を招き入れる。


 一人は、ズミアーノだった。

 その後ろから、ペソティカ男爵がちょっと青い顔をしながら現れ、さらに妹のアルミニカ・オルブラン夫人が、昔顔だけ見たことがある人物と共に入室してくる。


 ーーー相変わらず、男とは思えないほど綺麗ね。


 ズミアーノと同じように帝室由来の浅黒い肌を持つ、アルミニカ様より少しだけ背の高い『彼』は、体のラインが出ないハイネックの豪奢なドレスを身に纏っていた。

 髪も長髪を貴族夫人のように結い上げており、手入れが行き届いた爪の先に色も乗せている。


 ズミアーノの弟、セフィラ・オルブラン。


 貴族学校時代は『令嬢』として学校に通っており、彼が男だという事実が発覚したのは卒業後だった。

 ウェルミィ達と同じ時期に貴族学校に通っていた為、交流はなかったけれど面識はある。


 女装している元々の理由は、二人の父が『うちには女がいないから、一人そっちに回そう』という冗談みたいな当主命令を出したことで、その後も続けているのは趣味だ、という辺りが、ズミアーノの弟という感じだった。


 そして最後に、もう一人。


「お久しぶりですわ〜」

「あら、もう来てくださったの?」


 そこにいたのは、金髪に緑の瞳を持ち、のんびりのんびりした動きと間延びした喋り方をする女性だった。


 テストの結果が『落第』基準だった為に貴族学校を一年で辞めた、と言われているが。

 その実は、外見や動きとは裏腹に、あまりにも明晰過ぎる頭脳を持ち合わせていたことから『貴族学校で君に教えられることは何もない。むしろ一緒に研究をしないか』と特に厳しい教授に認められたことが理由という才媛。


 そして、〝精霊の愛し子〟について調べる際に、助力を頼んだ人物。

 

 南部辺境伯騎士団長夫人、リオノーラ・アバランテが、ふわふわゆったりと、こちらに向かって手を振っていた。

 

ノベル7巻『悪役令嬢の矜持7〜貴女を蝕む冤罪に、わたくしからの贖罪を。〜』4/7より発売中ですー♪


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