9/20
第9話 元婚約者の釈明
数日後、ユリウスから手紙が届いた。
『すべては君を王都の醜聞から遠ざけるためだった』
言い訳としても手垢がついている。私はその手紙を読み上げる気にもなれなかったが、アルノーに促されて封を開いた。
「読む必要がある」
彼の言葉に従い、私は文面へ指を触れる。
作成補助者、リディア・フォルクナー。
目的、慰留阻止。
追記事項、装丁庫視察日は明後日。
「釈明ですらありませんね」
私は乾いた笑いを漏らした。
「私が王都へ戻らないよう、装丁庫へ入る日程だけをわざわざ残しています」
「なら使える」
アルノーはそれだけ言って、北辺文庫の馬車手配を命じた。
「王都へ行く」
唐突な宣言に私は目を瞬いた。
「一人ではありませんよね」
「当然だ。私の領から持ち出された本も含まれている」
無口な辺境伯は、必要なときだけ迷わず前へ進む。その横顔を見ていると、不思議なくらい心が落ち着いた。




