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第7話 偽りの貸出台帳
北辺の商家の娘ノエルが、父の蔵書返還を求めて文庫へ駆け込んできた。
「王都で貸本契約をしたことになっているんです。でも父は字が読めません。そんな契約、結べるはずがないのに」
差し出された貸出台帳には、私の朗読記録官印が押されていた。私は紙へ触れる。
朗読者名、エリナ・フォルクナー。
実施者名、リディア・フォルクナー。
用途、花嫁文庫装飾用貸出。
「やっぱり」
私はアルノーへ帳面を見せた。
「私の名で偽の貸出契約を結び、地方の希少本まで集めています」
ノエルが唇を噛む。
「父の本は戻りますか」
「戻します。貸出台帳そのものが偽造です」
アルノーはノエルに向き直ると、短く告げた。
「君の本は、こちらで預かる。証言も頼めるか」
辺境伯の声に、ノエルは力強く頷いた。地方商家の証言まで必要になった時点で、これはもう家族の醜聞では済まない。王立蔵書局の不正だ。




