表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/20

第19話 もうあなたの蔵書印には戻らない

すべてが明るみに出たあと、ユリウスが一人で私の前に現れた。


「やり直せないか」


 夕暮れの閲覧室跡。かつての婚約者は、ようやく私を真っ直ぐ見た。


「君は必要だったんだ。記録も、蔵書も、落ち着きも」


「私は家具ではありません」


 自分でも驚くほど、声は穏やかだった。


「あなたが必要だったのは、私じゃなくて、私が守っていたものよ」


 私は母の百合紋が押された蔵書印を手に取る。


「もうあなたの蔵書印には戻らない。私は私の本棚で、私の名前で生きていく」


 ユリウスは何も言えなかった。ようやく、本当に終わったのだと思う。喪失よりも、解放の方がずっと大きかった。


 振り返ると、入口の外でアルノーが待っていた。言葉を挟まず、ただ帰る場所がこちらにあると示すように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ