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第15話 雪祭りの朗読会
北辺へ戻ると、ちょうど雪祭りの準備が始まっていた。
文庫前の広場には小さな灯りが並び、子どもたちがぼろぼろの貸本を抱えて集まってくる。私は母の詩集を修復してもらい、簡易壇上で読み上げた。
朗読の最中、ふと視線を上げると、少し離れた柱のそばにアルノーが立っていた。いつもの無表情に見えるのに、目元だけが柔らかい。
「辺境伯も聞いていたんですか」
「領主は領民の様子を見るものだ」
「本当は、続きを聞きに来たんでしょう?」
そう言うと、彼は少しだけ困ったように黙った。黙ることで答える人なのだと、私はもう知っている。
朗読会が終わるころ、マルタが涙ぐみながら言った。
「春にもまた読んでください」
私はその願いに頷いた。王都で失った席はもう要らない。けれど、ここで必要とされる声なら、いくらでも届けたいと思えた。




