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第14話 誰の名で書き換えたのか
証拠は十分に集まり、残るは最後の書換指示だけだった。
局長室の保管箱から見つかったのは、婚礼準備室への移送命令書。差出人の名は空欄になっている。私は紙の余白を読む。
起案者、局長ヘルムート・グラン。
承認印持込者、リディア・フォルクナー。
利益配分、局長三割、ユリウス二割、残りは婚礼支度名目。
「ずいぶん安い持参金ですね」
私の声に、局長の顔が青ざめた。
「余白読解など証拠にならん」
「では、装丁庫の控え、修道院の修復依頼、書庫係の証言、偽造貸出台帳も全部偶然だと?」
アルノーが横から静かに書類を並べていく。逃げ道が、目に見える形で消えていく瞬間だった。
局長は椅子へ崩れ落ちた。ユリウスはなおも何か言い訳を探していたが、もう聞く気にもなれない。
奪われた余白は、ようやく私の手に戻ってきた。




