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第12話 公開閲覧日のざわめき
王都では公開閲覧日が始まっていた。一般客と貴族が入り交じる閲覧室で、私は補助席から古文書の朗読を任された。
本来ならもう私の席ではない。けれど、旧記録官として余白の確認を頼まれたのだ。目の前には、寄贈本の由来を記した一覧が置かれている。私の母の蔵書が、すべて「花嫁リディアの持参本」として並んでいた。
私は観覧客の前で、静かに読み上げた。
「百合紋一三七番。旧所有者、故マリア・フォルクナー。備考、娘エリナへの相続指定」
ざわめきが起こる。局長が慌てて制止しようとしたが、私は一覧の余白へ指を置いたまま続けた。
「この項目は三週間前に書き換えられています。筆者はリディア・フォルクナー、立会はユリウス・ベルンハルト」
閲覧室がしんと静まった。私の【余白読解】は、人前でも容赦なく真実を拾う。
その背後で、アルノーが一歩前へ出た。
「続けてください、朗読記録官」
その一言だけで、私はもう下を向かずに済んだ。




