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私たちの南海トラフ

最新エピソード掲載日:2026/11/05
横須賀の港を、米海軍駆逐艦マッキャンベルが離れた。巨大地震と津波の混乱が続く夜、艦内には燃料の匂い、金属の軋み、眠れない乗員たちの気配が満ちている。

副長ジョン・ハワードは、艦を率いる艦長を支えながら、海の向こうに広がる惨状と向き合っていた。冷静で、規律を重んじる軍人。けれど彼には、誰にも語らない過去がある。

メアリー・スー。海兵隊員として艦に乗り込んだ彼女は、ジョンが故郷チャールストンで過ごした少年時代を知る、かつての恋人だった。裕福な農園主の家に生まれたジョンと、貧しい農家の娘だったメアリー。二人は幼い日の淡い恋を胸にしまい、それぞれ別の道を歩んできた。再会した今も、その記憶は言葉にならないまま、二人の間に横たわっている。

やがて、相模湾を襲う新たな巨大地震。艦上で救助活動にあたるメアリーは、危険を顧みず仲間を助けようとする。その一瞬の判断が、彼女自身を海へと追いやった。

暗い海。遠ざかる艦の灯。彼女を待つのは、冷たい波と、誰にも届かない声だけなのか。

捜索を続けるマッキャンベル。しかし、海に落ちた彼女の姿を見つけることは容易ではない。そんな中、日本の民間クルーザーが小さな無人機を飛ばし、暗闇に漂う一つの影を捉える。

救助されたメアリーを待っていたのは、かつての恋人ジョンだった。

「副長……私、少し眠ってもいいですか?」

それは、軍人としての命令でも、恋人としての約束でもない。長い年月を隔てた二人が、ようやく口にできた言葉だった。

海の上で交差する災厄と記憶。失われたはずの時間。そして、まだ別れを告げるには早すぎる夜。

ジョンとメアリーの故郷は、同じ風景の中にありながら、決して同じ場所ではなかった。幼い二人が交わした約束は、進学と軍務、家柄と生活の違いに押し流され、いつしか遠い記憶になった。再会しても、互いに言えなかった言葉は年月を経て胸の奥に残っていた。

救助のために艦を離れたメアリーが海へ落ちたとき、ジョンは副長として捜索を指揮する。だが、無線に向かう声の奥には、職務だけでは説明できない焦りがあった。艦の灯を頼りに、暗い海を探す時間。報告が重なるたび、彼の中で過去と現在が交錯する。

そして、思いがけない日本のクルーザーが、夜の海に小さな希望を見つける。救助された彼女が艦へ戻ったとき、二人の間に残されていた距離は、ほんの少しだけ縮まる。
プロローグ
第1章 私たちの南海トラフ
第1話 地震予知
2026/11/05 14:21 (改)
第2話 まさか、ほんとに!
2026/11/05 14:29 (改)
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