45.友だち
「こなたちゃん!」と名前を叫ぶと、ふたりが同時に顔を上げてこちらを見た。
よかった。無事で。
こなたちゃんが驚いたように目を丸くして立ち上がる。
「どうして狭霧と天音がこんな場所にいるの?」
「どうしてって、こなたちゃんを捜しにきたんだよ。東風さんたちが心配してる。一緒に帰ろう」
「帰ろう」
天音さんが、こなたちゃんをぎゅうぅと抱き占める。
「あ、天音っ……」
こなたちゃんがあたふたと両手をばたつかせるけれど、天音さんはこなたちゃんを放さない。
そんなふたりを、おさげの女の子がしゃがんだまま見上げている。
「君もね」
おれが声をかけると、女の子は少し驚いたようにおれを見上げた。
「わたしも?」
「そう。君も、そろそろ行かないと」
砂浜に膝をついて、女の子と視線を合わせる。
「わたしには、行くところなんてない」
「そんなことないよ」
「そんなこと、ある」
女の子が怒ったように唇を尖らせ、俯く。
「狭霧、ゆかはこなたの友だちなの。ずっと一緒に遊ぼうって、約束しているのよ」
天音さんに抱き占められたまま、こなたちゃんが顔をこちらへ向ける。
「うん。ずっと一緒に遊べたらそれはとても素敵なことだけどね。……でも、それはできないんだよ」
「できなくない!」
「ゆかちゃん……」
どん、と強い力に押されて、おれは後ろにしりもちをついた。
ゆかちゃんが両手をこちらへ突き出している。
幽体に体はないから直接押されたんじゃなくて、ゆかちゃんの思念による力――放たれた風圧のようなものだと思うけど、おれはびっくりしてその体勢のまま一瞬固まった。
「や、大和くん!? ――きゃあっ!」
続いて、おれの隣に天音さんも倒れ込む。
「大丈夫?」
「わたしは。でも、こなたちゃんが……」
はっと顔を上げると、天音さんから奪還されたこなたちゃんが、ゆかちゃんに引きずられるようにして海へ入って行くところだった。
「やめるんだ、ゆかちゃん! こなたちゃん、行っちゃだめだ!」
「狭霧!」
ゆかちゃんに引っ張られながら、こなたちゃんが恐怖の張り付いた顔でこちらを振り返る。
「ゆかちゃん、そんなことをしたらこなたちゃんが……」
「そしたら、ゆかはこなたとずっと一緒にいられるんじゃないの?」
海面すれすれに浮いたゆかちゃんが、にやりと笑うのが見えた。




