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40.ふたりきりの花火

 花火は、終盤に近づいていた。間を置かず次々と大きな花火が打ち上げられ、空を彩る。


 おれと天音さんは、堤防の上に腰かけて、空を見上げていた。


 ついさっき、スマホに『尋無事』という短いメールが八上から届いた。


 そのメールを見て、おれと天音さんは同時に安堵の息を吐いた。


 間に合ってよかった。

 本当にただの飲み会だったとしても、八上が迎えにくれば尋さんも帰るだろう。


 それにしても、時速何キロでバイクをぶっ飛ばしたらこの短時間で目的地にたどり着き、尋さんを見つけることができるんだろう。


 八上の強い気持ちの成せる業だな、思う。 


「きれい」


 天音さんの口から小さな呟きがこぼれ落ちる。


「うん。見られてよかった」


 ふたりきりで、見られるとは思ってなかった。 


 一際盛大な連射が続き、空が驚くほど明るくなる。


 ちらりと隣に座る天音さんを見ると、口を少し開けて、花火に見入っていた。


 その様子がすごく可愛い。

 そんな顔を見られただけでも、おれにとっては最高の夜だ。


 最後の花火が散ると、砂浜から続々と人が戻ってきた。


 始まる前よりも、人が多い。花火が終わったのを合図に、みんなが一斉に動き出したせいだ。

 この人ごみじゃあ、はぐれてしまうかもしれない。 


 天音さんと目が合う。


 両手とも、手伝いが終わった時に手袋を交換している。

 汗でしめってもいないし、まだきれいだ。


 おれは覚悟を決めると、左手で天音さんの手をそっと取った。

 いやだったらすぐ振り払えるように、軽く触れるような感じで。


 そんなおれの手を、天音さんがきゅっと握ってくれた。


 拒絶されなかったことが嬉しくて、泣きそうになる。


 おれが髪切りだと知っていても、おれが髪を食うところを見ても、おれに普通に接してくれる人。


 怖がりなのに、おれのことを怖がらずにいてくれる人。

 

 おれのことを考えて泣いてくれる人。


 おれは天音さんの手を握り返して、前を見た。


「行こっか」

「ん」


 おれたちは手をつないだまま、家路についた。

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