表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創り人の箱庭  作者: サボ
第五章
109/137

5-10『後悔』※リク視点

第五章

第十話『後悔』※リク視点



 我が大祖父の声は、それと承知して聞いたとしても、かなり強く心を抉るものだ。

 自分や兄が初めて聞いたときは、ただ身体を固くして何もできなかった。

 妹は、意識を飛ばしてしばらく寝込んでしまった。

 それほどのものだと判っていても、どうしても聞いて貰わなくてはと思った。

 その判断が間違っていたとは思わない。

 だが、それでも。

 繋がった手が急速に冷えて固まるのを感じたとき、心が軋んだ。

 大きく見開かれた目。

 血の気の失せた唇。

 それを見た瞬間、自分はカスミの手を振り払っていた。

「アディ!」

 そう叫んだのと、彼女が膝から崩れるのはほぼ同時だった。

 繋がったままの手を引き、腰を支える。

 高祖父の声はもう聞こえてはいないはずだが、強いショックは残るだろう。

 片手で腰を支えたまま、アディの頬に手を添えて顔を上向かせる。

 大祖父の声が聞こえていたときよりは多少強張りが解けた気もするが、目には虚ろな光しか宿っていない。

「アディ!!」

 もう一度、耳元で強く名を叫ぶと、不意にアディが瞬きをした。

「……あ……」

 青ざめた唇から、小さな声が漏れる。

 瞬いた黒い瞳にも、こちらを見ているとはっきり判る色が浮かんだ。

「アディ、自分が判るか?」

 その様子にほっと安堵の息を吐き、呼び掛ける。

「あ、えっと……」

 状況がよく判っていないのだろう、何度か瞬きを繰り返すアディの声は僅かに掠れていたが、自分が予想していたよりはしっかりと聞こえてほっとした。

「大丈夫だ、ゆっくりで構わない」

 頬に添えた手を撫でるように少しだけ動かし、静かに呼び掛ける。

 アディは頬を掠める感触がくすぐったかったのか、手を添えたほうの目を閉じて微かに身じろぎした。

「え、っと……」

 呟きながら何度も瞬きを繰り返す度、黒い瞳に浮かぶ正気の色が濃くなっていく。

 どうやら妹のように、数日間寝込むようなことにはならずに済みそうだ。

「リ、ク……?」

 少し時間を掛けたが、先程自分が問い掛けたことに答えてくれたらしい。

 その様子がなんだか微笑ましくて、自分の口元には自然と笑みが浮かんだ。

 とても笑っていられるような状況ではないと判ってはいるのだが、『不幸中の幸い』というものを感じると、人は微笑んでしまうものらしい。

「ああ、そうだ」

 その目は間違いなく現実を見ているんだと知らせる為に頷けば、アディはほっとしたように息を吐いた。

「ごめん……なんか、ぼんやりして……」

「大丈夫だ。何も気にする必要はない」

 目を伏せ、額を押さえるアディに、自分は首を振る。

 今のこの状況で、ただ意識が朦朧としているだけだというなら、そのままでいいのだろう。

 意識をはっきりさせたいなら、時間が解決してくれる。

 これがもし戦闘の最中であったのなら話は別だが。

「少し別室で休もう」

「あ、うん……」

 自分の言葉に頷くアディを見てから、視線を父のほうに向ける。

 父は静かに頷き、先を促すようにドアのほうを見た。

「済まないが、運ばせて貰う」

 すぐに反応できないと判っていたが、ひと声掛けてからアディの身体を抱え上げる。

 アディは矢張り自分の声に反応することはなく、自分の腕の中で大人しく身を任せてくれていた。

 まだぼんやりとした表情を間近で見ながら、心の中で唇を噛んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ