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第16話 マネージャー! 現金の用意を。

 キャストとスタッフが決まったと連絡が入ってきたのは、それから1週間後のことだ。何せ、ギャラのほとんどでない映画製作に関わりたい人がどれほどいるのか……と、かなり心配をしていたが、なんとか集まってくれたようだ。ヒロインは、劇団からのたたき上げで若いけどベテラン女優が手を挙げてくれたらしい。


「……緊張するな」

「そんなに?」

「俺、ドラマ撮影はあるけど、劇団の女優さんと絡んだことないから」

「そうなんだ? オレは逆に舞台ばっかだから、カメラがわかんない。演技指導してもらったけど……ダメ出しが、本当……」


 珍しく弱気な未彩に、なぜか緊張している凛。二人の意外な反応に僕は少しだけ笑ってしまった。それを目ざとく見ているのは、もちろん、凛だ。


「湊、笑っただろ!」

「笑ってない、笑ってないから」

「凛でも、緊張することがあるんだなぁ~って、オレはちょっと親近感わいたわ」

「……舞台女優にあんまりいい思い出がないんだよ」

「あぁ、凛が大根だから?」


 僕がからかうと、キッと睨んでくるので、無視をしておく。まだ、三人とそれぞれのマネージャーしかいないので、はしゃいでいたが、扉が開いたのでそちらを見た。


「おう、もう来てたか」

「おはようございます」


 監督の月影が入ってきた。その後ろには、ヒロイン役の女優や他の共演者、スタッフも入ってきている。今日は、麗月も原作者として来ており、社長と話をしていた。


「全員集まったから、さっそく、顔合わせをする。座れ」


 用意してあった会議室に、今回の映画製作関係者が一堂に会した。広い撮影所とは違い、密集しているので、とても大人数に見えるが、映画製作をする規模からするとかなり少ない。


「集まってくれたみなに感謝する。まずは、この映画のスポンサーでもあり、主演で座長の如月湊だ。みなも知っていると思うが……湊、挨拶」

「はい。今、監督の月影さんからご紹介にありました主演『南条緋月』役の如月湊です。今回の映画製作において、皆さんにお集まりいただけたこと、ありがとうございます。自主制作に近い映画撮影となりますので、皆さんには、満足のいく手当は出せないうえに、自身の役目以外にもお願いすることがあるかもしれませんが、ここに集まったキャストやスタッフそれぞれの強みを最大限に生かし、素晴らしい映画が作れればと考えています。みなさんにも、これからの自身の学びにつなげていただければ幸いです。この先、もっと良い環境で、この作品を映画化することができるかもしれません。ただ、この作品だけは、今、映像として残したいと思い、急遽、製作となりました。本来なら、下準備も含め、時間を取るところではあります。短い時間、決められた予算など、縛りの多い撮影となります。みなさん、ひとりひとりの持てる力以上のものを貸していただきたく、どうぞ、よろしくお願いします」


 僕は立ち上がって、深々と頭を下げた。今回、集まったスタッフの多くは、初顔合わせの人ばかり。世間で知られている『アイドル如月湊』しか知らない人がほとんどのようだったので、僕の挨拶にとても驚いているようだ。

 なぜか、パチパチと拍手があり、僕も驚いた。


「湊らしい挨拶だったな」


 月影が僕の方を見て、ニヤッと笑ったあと、視線を次の役者へと向けた。


「次、ヒロイン」

「はい。『高月 響』役の工藤ルナです。舞台中心の役者です。今回、映画撮影に参加させていただきますが、カメラに対しては素人同然ですので、至らないところがあれば、ビシビシご指導ください! 劇団『紅月』は……、知っている方もいるかもしれませんが……」


 そのあとは、言葉にせず、あははは……と苦笑いするルナに何人ものスタッフが頷いている。何かしら『劇団紅月』との付き合いがあるスタッフたちなのだろう。僕は名前以外知らないので、隣にいる月影にこそっと耳打ちすると、「おまえんとこの社長の100万倍はキツイ団長がいるんだ」とだけ返ってきた。それを聞くだけで、視線を逸らしたくなった。


「……よろしくお願いします」


 最後はニコッと笑い、ルナは場を和ませた。拍手が終わり、席に座る。


「次は、緋月の友人」

「はい。『藤谷光希』役の霜月未彩です。私は歌舞伎役者として、普段は活動しています。工藤さんと同じで、カメラの前に立ったことがありませんので、よしなにお願いします」


 未彩も深々と頭を下げると、「あぁ、あれが歌舞伎界のプリンスか」、「すごいいいじゃん!」と次々とスタッフが話し始める。未彩は、そこそこ背もあるが、綺麗な体つきをしていて、所作も綺麗だ。今は、女形に芸を振っている。今後の指針を決めるための挑戦でもあると、僕は、この映画の出演が決まったときに聞いた。


「次……」

「監督! そろそろ、オレ!」


 そわそわしている凛を見て、月影が大きくため息をついていた。今回集まった中では、1番面倒な人物だろうことは、なんとなく察している。ただ、わがままを言うのは、心を許している優くんと僕くらいなので、スタッフに迷惑をかけることはないだろう。そもそも……、日本トップクラスのアイドルが、スタッフに迷惑をかけるなんて、ナンセンスだ。


「あぁ、わかったわかった。自己紹介をさっさとすませてくれ」

「……なげやりじゃね? まぁいいけど。改めて……、天才ピアニスト『南条 永遠』役に抜擢されました水無月凛です。今回は、みなさんとこうして……」

「凛、後も控えてるから。はい、次」

「……監督、湊は結構な時間」

「そりゃ、座長でありスポンサーでもあるからなぁ……。しゃべりたきゃ、スポンサーになれ。そしたら、あと2分は話させてやる」

「マネージャー! 現金の用意を。誰に渡せばいい?」

「湊んとこの社長に渡しておいてくれ。けち臭いことはするなよ。あと、2分しゃべらせてやる。スタート」


 月影がふざけた申し出をしたせいで、何故か資金も集まり、満足顔で話す凛に、僕は笑うしかなかった。資金が増えることは願ったりなので、ありがたくいただくことにする。視線の先では、社長と優くんが話しているのが見えた。

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