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【後日談②】恋をしないと出られない星

今回で最終話です。

いつもより、少し長くなっています。

 それから、3年ほどの時が流れた。


 私達の息子ミラールは、今は10歳くらいの姿に成長している。生まれてから、毎月1年分くらいずつ成長していたから、この姿になったのは、2年ほど前だと思う。そこで、成長がピタッと止まった。


 セルさんは、ロッコ族は転生すると10歳の姿になるから、アバターでも、そこに成長点の何かがあるんじゃないかと言っていたけど、それが正しいかはわからない。


 ミラール本人は、すっかり大人のつもりでいるみたい。背も私より少し高いし、セルさんから受け継いだ魔力の高さを活かして、ロッコ族の子供達に紛れて、未開地の手伝いにも行っている。


 危ないことはしないで欲しいけど、魔導士には必要な訓練だと、セルさんは黙認している。でも、アバターから生まれた子は成長が速いとはいえ、ミラールは、まだ3歳なのにな。




 私が乙女ゲームの主人公をしていた頃の記録から、20周年の大作のゲームの一つのルートが作られた。『恋をしないと出られない星』という仮題はそのまま採用され、配信も始まっている。地球への配信は2〜3年後からだって。


 今、配信されているのは全10ルートで、最終的には有料版も合わせると、30ルートを超えるらしい。攻略対象のキャラは、その倍以上はいるかも。今回の大作は、今までとは少し違うルート選択方式になっているみたい。



「オモチさん! 私、オモチさんのルートを全部クリアしたよー! すっごく素敵だったから、泣いちゃったよ」


 配信されたという情報は、開発室ではなく、サリィさんから聞く方が早かった。彼女は、配信日に入手していたみたい。


「もう、クリアされたんですか? あっ、今回は、いつもとは違って、登場人物が多いんですよね。名前もプレイヤーが付けるとか」


「うんうん! オモチさんのルートは、主人公の名前は自分だけど、攻略対象3人は、ちゃんと正しい名前を入れたよー」


 内情を知っているからこそ、出来ることね。


「私は、簡単なストーリーしか聞いてないですけど、攻略対象が過激なファンに狙われることを避けるために、名前はプレイヤーが設定する形になったから安心するようにと、説明されました」


「再登場禁止期間のルールに触れるから、誤魔化すためだという噂もあるよー。本当のオモチさんは、セルシードさんを選んだけど、ミッション29から先は、3ルートに分かれるから、私は、一番最初はシエル攻略ルートを選んだよー。オモチさんが故郷に帰るハッピーエンドだった〜」


 サリィさんは、やはりシエルさんを応援してるのね。


 あれから、シエルさんとは何度か会ってる。相変わらずモテていて、大変みたい。こないだは、私に娘が生まれたら、私の娘と婚約したい、なんて冗談を言ってたっけ。



「そうなんですね。半分くらいは、事実じゃないことを加筆されているみたいですが……」


「個人の特定ができる部分は、変えてあるみたいねー。でも、メモリーになっている部分はそのままなんだって。ウィル攻略ルートでは、役者の恋人が変なファンに狙われる事件が多くて、弱い主人公は大変だなぁって感情移入しちゃった〜」


「ウィルは、役者でしたっけ」


「そうだよー。大人気な役者という設定だから、一番バレやすいねー。ウィルさん推しの人達が、ファン会館で騒いでたもん」


 ウィルは、ケイトさんと一緒に、私達が住んでいる街によく来る。この街の住人の半数以上は子供だし、ロッコ族の子供達が治安を守ってくれてるから、安全だからかな。


 ケイトさんが、息子のミラールのことをいつもカッコいいって言うから、最近ウィルは本気で拗ねてるのよね。



「だから二人で、私達の街によく来るのかな。この街では、変なファンも少ないですし」


「確かに、ここは、チビっ子だらけだもんね。そういえば、20周年の大作の有料配信で、変わったスピンオフ物が出るよー」


 サリィさんは、携帯機を操作して、私に画面を見せた。そこには、『ちっちゃな初恋の街』というタイトルがあって、私達が住む街がメイン舞台になっていることが書かれていた。


「そんな話は聞いてないですけど、メイン舞台が、ここになるんですか? 攻略対象って……」


 まさか、ミラールが関わってないよね?


「攻略対象はないみたい。チビっ子だらけの街に来て、遊ぶんだって。主人公も、5歳くらいの子供の姿になるの」


「有料配信で子供になるゲームなんて、売れるのかな」


「すっごく売れてるみたいだよ。攻略対象も不在だし、全然キュンキュンしないよねーって思ってたけど、まだ配信前なのに、予約が過去最高の5倍とか言ってたかな?」


「どうしてかな? 珍しいからでしょうか」


「オルフルさんが言ってたけど、寿命の長い星で人気爆発してるらしいよ。子供に戻って遊びたいのかな」


「子供の少ない種族でしょうか」


「うんうん、そうみたい。でも、『恋をしないと出られない星』だから、子供に戻って、ちっちゃな子に恋をするのかな?」


「それは、ある意味、純粋な初恋ですね」


 私がそう言うと、サリィさんは、パッと顔が赤くなってる。何かのスイッチが入ったのかも。


「そうだね! 子供になって、純粋な恋をする初恋の物語って考えると、すっごく尊いよね! 私も申し込んでくる〜」


 サリィさんは、スッと姿を消した。いつもは、彼女が、イービー星の最強の国の王女様だということを忘れていたけど、このすごい行動力で、たまに思い出すよね。




 私がこの世界に来て生まれた物語は、関係者には、シナリオ集が配られた。


 乙女ゲーム『恋をしないと出られない星』は、主人公が人工星に旅行に行くことから、物語が始まる。そして、対象を攻略しないと、星から出られないという設定になっていた。


 私の記録から生まれたルートでは、クールな魔導士に、いきなりキスされることから始まる。つまりセルさんね。主人公が困ったときには助け、主人公を子供扱いする大人キャラとして描かれている。


 次に出会うのが、大人気の舞台役者。これがウィル。主人公は、彼の推し活を始めるけど、親しくなると、彼のファンから嫌がらせを受ける。変装する彼とのデートは、とてもオシャレに演出されている。


 最後に出会うのが、王宮務めの料理人。これは、シエルさんね。彼は、主人公に寄り添う、優しくて、あたたかいキャラとして描かれている。うん、一番シエルさんが一緒にいてくれたもんね。


 ルート選択場面に戻るアイテムや、攻略対象の印象をアップさせるアイテム、また成功率を知る測定アプリなども、課金アイテムに加わってるらしい。なかなかの儲け主義ね。


 でも、無課金勢への配慮も忘れてない。ビンゴクリア枚数で、課金アイテムが購入できる仕様になってる。さすが、抜け目ないよね。


 私の現状では、ビンゴクリア分は、結局は、リセット日にゴールドに換金されるから、お小遣いになってるだけなんだけど。




「オモチ、サリィさんから聞いたか? この街がゲーム舞台になったぞ」


 夕食の買い物をして家に帰ると、セルさんが慌てた顔をしていた。その横には珍しく、息子のミラールもいる。


「うん、さっき聞いたけど……何? チビッコ園?」


 セルさんは、指示書のような紙を見せた。


「あぁ、チビッコ園という名の宿屋だ。開発室からの命令だよ。ゲーム舞台になると、すぐに観光客が来るからな。明日、向かいの公園が宿屋に変わる。その運営管理の命令書だ」


「大変だね、頑張って……」


「は? オモチが園長先生だぜ? 観光客のアバターは、この街では、子供の姿にするらしい。つまり、中身が大人のガキが大量に押し寄せてくるぞ」


 えーっ? 確か、有料配信だよね。わざわざ子供を体験しに来るのかな。あっ、来るか。


「じゃあ、悪い子は叱らないとね」


「いや、客だぜ?」


「子供体験に来るんだから、子供として扱えばいいでしょ? ミラール、街の子供達にも、何か聞かれたら、そう説明してね」


「ふぅん、母さんに叱られても、怖くないと思うよ。母さんは、弱いじゃないか」


「中身が大人なら、きっと新鮮だと思うよ。擬似体験をするために観光に来るんだから」


 少し難しい言葉を使うと、ミラールは、また聞こえないフリをしている。まだ3歳だけど、そろそろ……。


「ミラール、聞こえないフリは、ガキの仕草だぜ?」


「なっ!? うっせーな。文句あるなら外に出ろよ」


「ふっ、チビ猫のくせに、偉そうだな」


 あーあ。また、親子ゲンカが始まっちゃった。最近のミラールは、セルさんに魔法をぶっ放すみたい。


 セルさんはニヤニヤしながら、ミラールはぷりぷりしながら、二人で公園へと出掛けて行った。


 さて、私は夕食の用意ね。ミラールが負けて拗ねて帰ってくるだろうから、あの子が好きなオムライスにしようかな。


皆様、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

本作は、なろうの深海に沈んでしまっていましたが、毎日読んでくださる皆様のおかげで、最後まで書き切ることができました。本当にありがとうございます。

アリ(´・ω・)(´_ _)ガト♪


タグには、ハッピーエンド? をつけました。オモチが、日本に帰らない選択をするため、ハテナ付きです。ですがオモチには、これからも、充実した彼との生活が待っているはずです。作者的には、ハッピーエンドとして描きました。



本作は、書き始めた序盤で、二部作にしようと思いつきました。途中から話に関係のない設定説明が入るなぁと、気付かれた方もいらっしゃるかと思います。また、歴史の上書きはどうなったの?という疑問も残っていますよね。今、ミラールがその手伝いをしていますが、ファンタジー色が強くなるため、別のお話で書いていきます。


別のお話は、オモチがクリスタルショップで会ったロッコ族の女の子(←実は女の子ではない)を主人公にした、この人工星の危機を救う物語です。ジャンルは、乙女ゲーム要素も入ってきますが、ハイファンタジーにしようと考えています。


投稿は、少し書き溜めてからにしたいので、7月上旬か中旬からになると思います。

同じ世界を舞台にしているので、本作の登場人物も何人か登場します。また覗いていただけたら嬉しいです。


後書きも、最後まで読んでくださって、ありがとうございます♪ (〃ω〃)


【追記7/11】新作は、8月からになりそうです。待ってくださっていた皆様、ごめんなさい。途中で話の順番を大きく変えたことで、大幅に遅れます。よろしくお願いします。

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