第21枠 半魔物にも覚悟くらいある
ポリュムニアでの暮らしは、思いのほか早く軌道に乗った。
マロスの実技審査が通った翌日から、俺たちは三人で依頼を受け始めた。シルバーリングが監督の立会人を引き受けてくれたおかげで、他の冒険者からマロスへの警戒も、日に日に薄れていった。
羊の角を持つ大男が、街の外で真面目に魔物を狩り、戻ってくれば街で困っている人の手助けをし、仲間たちと楽しそうに買い物をしている。
その姿を何度も見れば、人の見る目も変わってくるものだ。
「いやぁ…平和な暮らしってのは、いいもんだなあ」
依頼の帰り、宿で夕飯を食べながら、マロスがしみじみと言った。
「あったかい布団で朝起きて、いろんな味のする飯を食って、コトギとエウリと一緒に仕事して、顔見知りになった人たちの手伝いして、帰ってきたらまた、おいしい飯を食って、あったかい布団で寝る。
こんな幸せな生活が送れるようになるなんて、少し前の僕だったら信じられないだろうなぁ」
「マロスのそれ、もう5回は聞いたぞ」
最近は3人でご飯を食べるたびに、マロスが遠くを見つめながら感慨深そうにうんうん言っている。その隙にエウリはマロスの皿から大きめの肉を取ったりしているのも5回目である。
逆にエウリは自分の皿に乗っているブロッコリーのような野菜を、こっそりとマロスの皿に置いた。
「エウリ…野菜も食べないとだめだぞ」
「実は…昔その緑がのどに詰まって…トラウマが…」
エウリは目を合わせずに何やら言い訳めいたことを言い始める。
「絶対うそじゃん…」
「まぁ、僕は野菜の方が好きだから、エウリから野菜を貰うのは嫌じゃないけどね~」
マロスはフォークとナイフで、器用に野菜を切り分けながら食べている。彼の食事姿もだいぶ洗練されてきたものだ。
マロスは作られた研究所で、マナーなどは教わったことがないらしい。そのため、最初は全部、手づかみで食べようとするし、ちゃんとした料理というものを初めて食べた時なんか、暴走した魔物のように皿にかじりついていたし、本当に大変だった。
好き嫌いの多いエウリと、食事マナーが何も分からないマロスの面倒を見ているときは、ナイトメア戦よりもはるかに心労がたまっていくのを感じた。
俺は、そんな少し前の苦労を思い返しながら、ダッシュボードを開いた。
――――――――――
チャンネル名 コトギ
職業 吟遊詩人
加護 【秘匿】?????の寵愛、アレスの加護
スキル
・歌唱
・【秘匿】神威
・【秘匿】軍神の戦歌
・【秘匿】???
・【秘匿】???
・【秘匿】???
称号 【秘匿】???
現在の視聴者 7
――――――――――
…視聴者が、また増えてるな。
マロスが仲間になってから、視聴者がじりじり増えている。神様たちの間で、うちのパーティの評判でも上がっているんだろうか。だとしたら、ちょっと誇らしいな。
街に着いて依頼をこなし、金を稼ぎながら、北にある魔族領への生き方について情報を集めた。どうやら、魔族領への道は一時的に封鎖されているようで、しばらくは往来ができないことが分かった。
「…これって、辺境伯の反乱が関係あるのか?」
「たぶん、そう。
…人目もあるし、小声で魔族語で話すね。
パルデ辺境伯の領地は人間領と魔族領の境目の大半に値するから。パルデ辺境伯の領地で何か事件が起これば、この国も警戒して、国の行き来を制限するのはありえると思う」
政治的な処置…というわけだろうか。前世では、ほとんど政治のことを学んだ記憶がないので、国同士のやり取りは詳しくないが、お互いの国の行き来を制限する方が、何かと安心なのだろう。
「足止めを喰らったわけだけど…この間にしっかりと力をつけて、俺たち3人の連携を高めていく時間だと思えばいいか…って、マロスはどこに行ったんだ?」
俺とエウリは食事が終わって、そのまま宿の食堂に座って会話していたが、気づいたらマロスの姿が見えなかった。
「あそこにいる」
エウリが指さす方を見ると、宿のおばちゃんと何やら会話している様子が見えた。身振りから察するに、今日の料理について、作り方を聞いているのだろう。
「マロス、料理に熱心だね」
「初めてちゃんとした料理を食べたとき、あまりのおいしさに獣化して食ってたもんな…それから、旅の途中、街の外でも料理が食べられるようにって、熱心に料理を教わってるのはすごいと思うよ」
マロスは獣人族の特性として、獣化することができる。最初に俺たちが見た、黄金色の羊というのはマロスの獣化状態だったようだ。
ほかの獣人族がどうかは分からないが、マロスの獣化はシックスシープと酷似しているため、街中での魔物化は禁止にした。
「エウリはマロスの手料理の味見したことあるんだろ?味はどうだった?」
エウリは何か嫌なことを思い出したかのように顔をしかめた。
「緑、の方がマシ」
どうやらマロスの料理技術はまだまだこれからのようだ。
そんな街中での色々もありながら、俺たちはゆっくりと力をつけていった。
◇
異変の兆候は、その数日後から、急にはっきりと現れ始めた。
「最近、魔物の数が明らかに異常だという話が出ている」
ギルドで顔を合わせた“シルバーリング”のリーダー、アルケスさんが地図を広げながら言った。
「ポリュムニアの北の森。本来なら、低級の魔物がぽつぽつ出る程度の場所だ。それが、ここ二週間で、冒険者たちの魔物の討伐件数が3倍以上に跳ね上がってる。しかも、異常なのは数だけじゃない。出てくる個体が、妙に活性化してるという話も出ている」
ギルドの会議室には、Aランクパーティの“シルバーリング”のほか、俺たち3人、そしてBランクパーティが2組集まっていた。これが、この町の上位パーティ全てだという。
「…活性化、ですか」
「ああ。普段ならおとなしい魔物が、徒党を組んで街道を襲う。臆病なはずの種が、人を見て逃げずに突っ込んでくる。……何かが、魔物を駆り立ててるとしか思えん」
俺とエウリは、視線を見交わした。
グレーブスの誘引の紋章ーあれと、同じ怪しい気配を感じる。
マロスは、無言で俯いていた。フードに隠された彼の表情が、わずかに曇っているのが見える。紋章で魔物を呼び寄せる手口は他でもない、かつての彼自身の仕事だったからだろう。
「とういことで、これからは森の調査に入ろうと思う。経験豊富なBランクパーティ“森の誓い”と“ケリオン”はそれぞれ、森の東西を端から調査してくれ。細かい指示は、ギルドの受付で聞けるようになっているから、あとは頼んだぞ」
二つのパーティはそれぞれ了承し、会議室から出ていった。
彼らはこの街で10年以上も活動しているベテランとのことで、調査対象の森にもかなり詳しいのだろう。
「さて、お前たちはそれぞれBランク程の力を持ちながら、冒険者としての経験が浅いと聞いてる」
アルケスさんが、にやりと笑って、俺たちを見た。
「さっきBランクパーティの2組に依頼したとおりなんだが、ギルドから東の森の大規模討伐依頼が出てる。この依頼はBランク以上パーティを対象としていて、俺たちシルバーリングが頭となって受けているんだ。
お前たち三人は正式にはBランクパーティではないが、実力は十分だと思っている。そこで、俺たちと一緒に調査に参加しないか?きっと、いい経験になるぞ」
「もちろん、やります!」
俺たちは、アイコンタクトをして、すぐに返答した。
ゲームで強くなるための近道は、実力者と一緒にプレイして、間近でコツや思考を学ぶことだった。今回も同じように、実力者であるAランクパーティと一緒に依頼を受ければ、より強くなれるだろう。
「おい、リーダー」
横から口を挟んだのは、盗賊のドラベルトさんさんだった。少しはマシになったが、相変わらず、マロスを胡乱げに見ている。
「半魔物も森に連れてくのか?これは俺たちからしても危険な任務になる。不確定要素はできるだけ排除するべきだ」
「ドラベルト、言葉がすぎるぞ」
僧侶のステンノさんさんが、ドラベルトさんの肩を掴んで諫めるが、彼は手をすぐに払った。
「俺は街全体が被害にあわないようにリスクを冒したくない。この魔物が、ほかの魔物を呼ぶかもしれねえだろ。俺たちは街で最上位のパーティだ、相応の責任ってもんがあるだろ」
「……それは」
マロスが、何か言いかけて、口をつぐんだ。ドラベルトさんの言い分も理解できるのだろう。街の安全を背負う彼らにも、重圧と覚悟があるのだ。
「ドラベルトさん」
俺は、彼をまっすぐに見て言った。
「マロスは魔物じゃない。俺たちのパーティ―メンバーで、普通の羊獣人だ。街にも、あなたにも迷惑はかけないし、何かあっても俺たちで全部対処して、責任を取る」
「……ふん。口じゃ、なんとでも言える」
ドラベルトさんは、そっぽを向いた。
どう説得したものかと悩んでいると。マロスが手を力強く握り、うつむいた顔を上げて話し始めた。
「ぼ、僕が証明するよ。僕は街に害をなす魔物じゃない、コトギたちと共に街を守る、ちゃんとした冒険者なんだって!魔物の攻撃は全部僕が受ける、街への攻撃なんて起こさせない、何かあったら…」
彼が必死に証明しようとしている。最初は街に入ることすら、後ろめたく思っていた彼が、前を向いている。
緑色の瞳には、覚悟の決まった力強い意思が宿っていた。
「何かあったら、ドラベルトさんに、僕の首を差し出すから」
彼の翡翠の瞳は、ドラベルトさんの目をしっかりと見つめている。ドラベルトさんはしばらく、その視線に応じていたが、やがて眼をそらして言った。
「お前が信用に足るかどうか、俺が監視してやる…覚悟しろよ、羊」
「…うん、任せてほしい」
マロスは俺とエウリの方を見て、快活に笑った。
その様子を見て、本当にマロスを助けることができて良かったと、改めて実感した。
◇
調査目的地の森は、事前の報告どおり、異様な雰囲気を醸し出していた。
足を踏み入れた瞬間から、空気がざわついており、森全体が何かに煽られているかのような騒々しさを放っている。
「来るぞ、陣形を組め」
アルケスさんの低い声が、静かに、だが全体にしっかりと響いた。
次の瞬間、魔物が群れを成して襲い掛かってきた。そこから先は、A級パーティの洗練された戦いが繰り広げられた。
弓使いのイオさんが、木々の隙間を縫って、正確無比な矢を連続で放つ。突出した魔物の眉間を、一射で射抜いていく。無駄口ひとつ叩かず、淡々と、的確に討伐数を重ねていった。
「Cランクのファングウルフが6体、東から。Dランクのロックボアが2体、南。優先順位はファングウルフ」
「了解、任せてもらおう」
僧侶のステンノさんが、巨体に似合わぬ速さで前に出る。手に付けた籠手のような防具でウルフの群れを受け止め、ぶん殴って反撃していた。あまりに数の多い波状攻撃に、籠手で受けきれない攻撃がステンノさんの足や肩に傷をつけるが、ステンノさんの口元はうっすらと笑っていた。
「……いい。もっと、もっと来い!」
「ステンノさん、楽しそうですね……」
「怪我をするから癒しがある、痛みがあるから救いがあるのだ!さぁ、わしをもっと傷つけ痛めつけてみろ!ハッハッハ!!」
もはや身を守ることもせずに、ファングウルフの群れに突っ込み、魔物を片っ端からなぎ倒していく。後ろに抜けそうな魔物がいたら、無理やり進行方向に割り込み、ボディブロックをもって完璧なタンクをこなしていた。
ステンノさんは傷がついた傍から回復魔法の光が灯ってキズが治っていく。タンク役と回復役を、一人で兼ねているため、とんでもない打たれ強さだった。っていうか、顔が怖い。これ子どもに見せられないだろ。
そして、盗賊のドラベルトさん。
彼は、柳を通る風のように戦場を駆け回っていた。魔物の死角から死角へ、瞬間移動でもしているかのように現れては、急所に短剣を突き立て、また消える。攪乱と暗殺の役目をこなし、前衛と後衛の隙間を、自在に埋める遊撃だった。
リーダーのアルケスさんは、戦場全体を見渡しながら、要所要所で高火力の魔法を撃ち込んでいる。火力の要でありながら、司令塔もこなしている。まさにパーティの心臓だった。
すごい、これが冒険者全体の上位数パーセントしかいないAランクパーティか。
一人ひとりが自分の役割を完璧に理解し、互いの隙を埋め合う。連携の精度が俺たちとは段違いだった。
「コトギ、見惚れてる場合じゃないよ」
エウリが、月地を構えて言った。
「私たちも、いこう」
「ああ。――身体強化、神威!」
俺たち全員に赤いオーラが立ち上る。ランクが低い魔物しかいないとはいえ、何しろ数が多いので、油断せずに全力のバフをかけた。更に、俺のバフは対象が多くても問題がない―
「シルバーリングの皆さんにも、バフをかけます! ――神威!」
その瞬間、戦場のシルバーリング4人にも、赤いオーラが灯った。
「なっ!?」
最初に反応したのは、イオさんだった。
次の矢を番えた後、瞬きの間に連続の矢を放った。明らかに先程よりも早い速射で、飛ばされた矢はウルフを2体貫通し、奥にあった木まで貫いた。
「っ、これは…おそろしいほどの能力上昇ね…」
ステンノさんは、一層、力強く魔物を蹴散らしていくが、その表情は少し残念そうだった。
「……これは凄まじいが…傷が少なく済んでしまうな…」
「ステンノは黙っておけ」
ドラベルトさんの動きが、目で追えないほどに加速する。アルケスさんの魔法の威力が、一段跳ね上がる。
「……おいおい、なんだこれは」
ドラベルトさんが、敵を片付けながら、思わずといった声を漏らした。
「このバフ量、普通じゃないだろ。コトギ、お前なにものだ?」
「ただの、バッファーですよ!」
俺は笑いながら答えた。
「行くぞ、エウリ!マロス!」
「うん!」「おう!」
マロスが大盾を構え、紫黒の影をまとい、魔物の群れを真正面から受け止める。正面からくる敵は大盾で防ぎ、脇から抜けようとした敵にはナイトメアを広げて防ぐ。
「エウリ先輩! 今だ!」
「ん!」
マロスが作った壁の傍からエウリが飛び出す。月地の一撃が、密集した魔物を、まとめて吹き飛ばした。マロスが守り、エウリが砕く。そこへ俺が遊撃で漏れた敵を狩った。
俺たち3人と、シルバーリング4人。
七人の連携は、最初こそぎこちなかったが、戦いが進むにつれて、どんどんと噛み合っていった。
異常発生した魔物の群れは、半日とかからず、討伐された。
◇
戦いがひと段落し、俺たちは森の開けた場所で一息ついていた。
ドラベルトさんが、マロスの前に立った。
マロスが、身構える。
「……おい、羊」
「は、はい」
「お前はまだまだ動きが荒い、大盾を扱いきれてないし、死角も多い。盾職なら、もっと視界を広げるべきだ」
「えっ…は、はい!」
「ドラベルト、初めての大規模戦闘にしては良い線いってただろ?少しは褒めたらどうだ?」
アルケスさんは何やらにやにやとからかうような顔でドラベルトさんを見た。
ドラベルトさんは、ふん、と鼻を鳴らし、そして、ぶっきらぼうに、手を差し出した。
「まぁ、街に害がないと完全に信じたわけじゃないが…少しは認めてやるよ……マロス」
マロスが、目を見開いた。
「……っ、あ、ありがとう、ドラベルトさん!」
マロスが、慌ててその手を握り返す。羊の角の下で、緑の瞳が、また少し潤んでいた。本当に、涙もろいやつだ。
「泣くな、暑苦しい」
「泣いてないし! 目から、汗が!」
「何言ってんだ泣き羊」
俺とエウリは、そのやり取りを、笑って見ていた。
「ところで、お前たち」
アルケスさんが、いい感じの切り株に腰を下ろしながら、こちらを見た。
「お前たちの今日の戦い方を見ていて、正直、驚いてるよ。個人の高い能力に、まだ未熟だが噛み合ったときに爆発力のある連携、正直、お前たちは規格外だ。Bランクでこの実力は、正直異常だよ」
「あ、ありがとうございます」
「だからこそ、お前たちはもったいない」
「もったいない…?」
俺達には何かが足りないというのだろうか。個人の戦闘力?連携の深さ?それとも別の何かか…
いろいろと考えがめぐっていく中、アルケスさんから言われたのは予想外のことだった。
「お前たちには、まだ、足りないものがある。――それは…」
「それは…」
ごくりとのどが鳴る。
緊張した面持ちで聞いていると、アルケスさんは急ににかっと笑って言った。
「それは、必殺技だ」
「ひ、必殺技?」
俺は、聞き返した。
そんなファンタジーみたいなアドバイスがあるだろうか、いや、そういえばファンタジーの世界だったなここ。
「お前たちはすでに強い。しかし、冒険者の中でも上位のひと握りになりたいならば、格上すらも倒せるような強力な技が必要になるんだ」
「決め技、ってことですか」
「そうだ。実力者というのは、ある域に達すると自分だけの技を身につける。得意な動作を、極限まで、何千、何万回と繰り返す。そうやっていく中で、壁を破る日が来るんだ」
アルケスさんは、自分の杖を、軽く掲げた。
「俺の場合は、火炎魔法だ。何万回と撃つうちに、ただの火球が、もっと熱くもっと早く飛ぶようになった。こういうのをスキルとして結晶化するというんだ。
イオの速射も、ステンノの耐久力も、ドラベルトの速さも、みんなそうやって手に入れた、自分だけの必殺技だ」
「なるほど…」
俺は、思わず呟いた。
神威や軍神の戦歌は、神様から授かったものだ。条件を満たせば、ダッシュボードが解放してくれる。しかし、神の力を借りているせいか、体が耐え切れずに重い反動が来る。
アルケスさんの言う必殺技は、それとは違う。修行と反復で、誰でも――エウリやマロスでも、自分の力で、掴み取れるスキルで、自分の力で発揮するから反動もないに等しいだろう。
「お前たちには素質がある。パーティ連携も、個々の力も申し分ない。あとは、それぞれが自分の必殺の一手を持てば――更に化けると思うぞ」
アルケスさんは、にやりと笑った。
「……必殺技」
エウリが月地をぎゅっと握りしめた。その白い十字架が浮かぶ緋色の瞳が、いつになくギラついている。
「やる。私、もっと強い一撃がほしい」
「僕も、どんな時でも仲間を守れる技が欲しい…!」
「俺も…どんな敵も倒せるくらい、強力な技が欲しい…!」
今までも火力がもっとあれば、簡単に倒せた場面があった。ナイトメア戦でも、強力な一撃を反動なしで放てていれば、もっと楽にマロスを助けられただろう。
何より…必殺技ってめっちゃカッコいい…!!
アルケスさんが、満足そうに頷いた。
「よし!将来有望なお前たちを鍛えてやるよ。それぞれ、近い役割の者が手ほどきするのがいいだろうな。コトギは俺、エウリは…ステンノかな。ステンノは打撃のスペシャリストだからな」
「……ふ、腕が鳴る」
ステンノさんが不敵に笑った。
「マロスは……ドラベルト、頼めるか」
アルケスさんが、ちらりとドラベルトさんを見た。
ドラベルトさんは、一瞬、嫌そうな顔をして――それから、ふん、と笑った。
「……仕方ねえな。マロスはそもそもの技術もだが、メンタルが弱すぎる。俺が叩きまくって、強靭な戦士の心を育ててやるよ…」
「…ひっ!あ、アリガトウゴザイマス…」
夕暮れの森で新しい目標ができた。
自分だけの、必殺技。
神様から授かった力じゃない。自分の手で、掴み取る力。
俺は、心の底からあふれる厨二心を抑えながら、明日から始まる修行に思いをはせた。




