第五十二普請 若殿、泥にまみれる
学びの場を訪れた、諫早家の若殿・茂敬。
農民の子、漁師の子、商いに励む娘たち。
身分も違えば、学ぶことも違う。
けれど、ある出来事が若殿に大切なことを教えます。
人の上に立つとは、どういうことなのか。
今回は、ちょっと泥だらけの国づくりです!
寛永三年(一六二六年)、初夏。
春の終わりを告げる雨が、諫早の大地をしっとりと濡らしていた。
長屋の前に広がる庭には、昨日まで子どもたちが書いていた文字の跡が、わずかに残っている。
だが、ほとんどは雨に洗い流されてしまった。
白瀬湊一は、その庭を見つめながら腕を組んでいた。
「……やっぱり、屋根が欲しいよなあ」
「またその話か」
隣で澪が、呆れたように笑う。
「昨日も一昨日も、同じことを言うておったぞ」
「いや、分かってるんだけどさ。人が増えすぎたんだよ」
白瀬が見渡す先には、朝早くから集まってきた子どもたちの姿があった。
いや、もはや子どもばかりではない。
農作業を覚えたい若者。
商いの帳面を読めるようになりたい男。
自分の名前を書いてみたいという老婆。
船の積み荷を数えたい漁師までいる。
白瀬が始めた小さな学びの場は、いつの間にか村の誰もが集まる場所になっていた。
「先生! 今日も教えてくれんね!」
「白瀬しゃん! 昨日の続きば!」
「おいは魚の数え方ば知りたか!」
「待て待て! 一度に言われても分からん!」
白瀬が両手を上げる。
その様子を眺めながら、澪は小さく笑った。
「おぬし、一人で教えようとするからじゃ」
「……ごもっとも」
白瀬は苦笑する。
人を育てる。
知恵を残す。
そう決めたのは自分だった。
けれど、一人でできることには限りがある。
だからこそ、長吉たちにも教える側に回ってもらっていた。
その成果は、少しずつ現れ始めている。
白瀬はそんなことを考えながら、ふと庭の入り口へ目を向けた。
そこに、見慣れぬほど立派な身なりの青年が立っていた。
◇
「ここで、百姓の子が学んでおるのか」
青年が、不思議そうに尋ねた。
年の頃は十八ほど。
背筋はまっすぐ伸び、落ち着いた顔立ちをしている。
だが、その瞳には若者らしい好奇心も宿っていた。
後ろには、武士が二人控えている。
白瀬はその顔を見て、少し驚いた。
「……若殿?」
青年が、わずかに笑みを浮かべた。
「久しいな、白瀬殿」
諫早茂敬。
領主・諫早直孝の嫡男である。
やがて、この諫早を治めることになる若者だった。
「本日は、何かご用でしょうか?」
「父上から、そなたの学び場の話を聞いてな。一度、この目で見てみたかったのじゃ」
「それは光栄です」
「だが……」
茂敬は、地面に書かれた文字や、板に描かれた水路の絵を眺める。
「ここでは、何を教えておる?」
白瀬は少し考えた。
「何でも、ですね」
「何でも?」
「田んぼのことも、魚のことも、商いのことも。昨日は雨のおかげで、屋根の大切さまで教わりました」
「……屋根?」
「はい。先生の俺が、一番勉強になりました」
茂敬は、何とも言えない顔をした。
そのときだった。
「若殿様も、何か習いに来たとですか?」
明るい声が飛んできた。
小春だった。
抱えていた竹の板を地面に置き、にこにこと青年を見上げている。
「こ、小春!」
健太が慌てて袖を引いた。
「若殿様に何ば言いよっとか!」
「何ね。学びに来たとなら、一緒に勉強すればよかたい」
「そういう話じゃなか!」
随行の武士が眉をつり上げる。
「無礼であろう! こちらにおわすは――」
「よい」
茂敬が片手を上げた。
「面白い娘じゃな」
そして小春に尋ねる。
「小春、と申すのか?」
「はい! うちは小春たい!」
「そうか。小春か」
茂敬は楽しそうにうなずいた。
「そなたは、ここで何を学んでおる?」
「うちは、人と話すこと!」
「……それは、学問なのか?」
「もちろんたい!」
小春は胸を張った。
「話さんば、相手が何に困っとるか分からんやろ?」
茂敬が目を瞬かせる。
「それに、話して仲良うなったら、一緒に何かできるようになるとよ!」
「ほう……」
茂敬は思わず白瀬を見た。
「白瀬殿。これは、そなたが教えたのか?」
「いいえ」
白瀬は笑った。
「小春が勝手に覚えました」
「勝手じゃなか! ちゃんと自分で考えたと!」
「はいはい。そこが大事なんだよな」
周囲から笑い声が上がった。
しかし、茂敬の後ろに控える武士たちは、少々困った顔をしていた。
武家の若殿に、百姓の娘が遠慮なく話しかける。
城の中では、まず見られない光景だったからだ。
◇
「では、実際に見せてもらおう」
茂敬が言った。
「白瀬殿。そなたは、ここで皆に何を教えておるのじゃ?」
「俺が教えることもありますが、今はあいつらが先生です」
「あいつら?」
白瀬が指さした先には、五人の若者がいた。
長吉。
健太。
おたえ。
源太。
そして小春。
かつて、白瀬の後ろを追いかけていた子どもたちだ。
今ではそれぞれに得意なものを持ち、村の仕事を任されるまでになっていた。
「まずは長吉から」
「お、おいからですか!」
長吉が慌てて立ち上がった。
「おいは、田んぼのことば話します!」
そう言って、木の箱を持ってくる。
中には、種類の違う土が入っていた。
「こっちは、水の抜けやすか土。こっちは、水ば抱え込む土です」
茂敬は、興味深そうにのぞき込んだ。
「どちらがよいのじゃ?」
「田んぼなら、水ば抱え込む土がよかです。ばってん、それだけじゃ駄目で……」
長吉は、土を手に取りながら説明した。
水が多すぎれば根が傷む。
少なすぎれば稲が育たない。
同じ田んぼでも、高い場所と低い場所では水の具合が違う。
「つまり、田にもそれぞれ癖があるということか」
「そうたい! ……あっ、そうです!」
長吉が慌てて言い直す。
茂敬は笑った。
「よい。普段どおりに話せ」
続いて健太が、水路の模型を持ってきた。
竹を半分に割り、板を組み合わせた小さな仕掛けである。
「ここから水ば流すと、こっちに行きます」
水が細い溝を流れていく。
「ばってん、ここを塞ぐと……」
健太が指で出口を押さえた。
水がたまり、別の溝へあふれ出した。
「こうなるとです」
「なるほど」
「水は、止めるだけじゃ駄目です。どこへ流すかも考えんば」
茂敬は何度もうなずいた。
そして、おたえの番になった。
「次は商いです!」
おたえは、板に大きな数字を書いた。
「若殿様。魚を十匹仕入れて、一匹三文で売ったら、銭はいくらになりますか?」
「三十文であろう」
「正解!」
おたえが、にやりと笑う。
「では、魚を買うのに十二文、運ぶのに五文、売れ残りの損が三文あったら?」
「……十文のもうけか」
「そうたい!」
おたえは、さらに別の数字を書き加えた。
「ばってん、その十文を全部使うてよかですか?」
「何?」
「舟が壊れたら? 道具が壊れたら? 明日の魚ば買う銭がなかったら?」
茂敬は黙った。
「商いは、もうかったら終わりじゃなかとです。明日も商いば続けられんば、意味がなか」
その言葉に、白瀬は思わず笑みを深くした。
長崎で何度も失敗し、悔しがり、それでも立ち上がってきたおたえ。
今では、白瀬が口を挟む必要もない。
「それに……」
おたえは続けた。
「銭ば増やすだけなら、何のために商いしよるか分からんごとなるけん」
「ほう?」
「村の人が腹いっぱい食べられて、子どもが学べて、病気の人も助けられる。そがんことに銭ば使わんば、つまらんでしょう?」
茂敬は、しばらくおたえの顔を見つめていた。
「……そなた、名は?」
「おたえです!」
「おたえか」
茂敬は静かにうなずいた。
「覚えておこう」
おたえは少し照れくさそうに笑った。
その様子を、白瀬は横目で眺めていた。
――おや?
何となく、面白いものを見つけた気がした。
だが、今は黙っておくことにした。
◇
源太は魚の種類や潮の満ち引きを教え、小春は長崎の商人とのやり取りを披露した。
長崎の明謝楼で明美から聞いた言葉を、小春が得意げに口にする。
「言葉の分からん相手でも、仲良うなれるとです!」
「どうやってじゃ?」
「まず笑う!」
「……それだけか?」
「それから、相手の話ば聞く!」
「分からぬ言葉をか?」
「分からんけん、もっと知りたくなるとよ!」
茂敬は、また笑った。
しかし、すべてが順調だったわけではない。
随行していた武士の一人が、とうとう口を開いた。
「白瀬殿。少々よろしいか」
「はい?」
「学びを広めることは結構。されど、若殿が百姓の子らから教えを受けるというのは、いかがなものであろうか」
周囲が静まり返った。
「武士には武士の学問がある。民には民の務めがある。それを一緒にする必要があるのか?」
白瀬が答えるより先に、茂敬が口を開いた。
「わしも、それは少し気になっておる」
若殿自身も、幼い頃から武家の学問を修めてきた。
文字を読み、古い書を学び、武芸を磨く。
人の上に立つための教育である。
それが間違っているとは思っていない。
けれど、目の前の若者たちが教えることは、城の中では習わないものばかりだった。
「白瀬殿」
「はい」
「そなたは、なぜ百姓の子らに教えさせるのじゃ?」
白瀬は少し考えた。
「俺より詳しいからです」
「……何?」
「俺は田んぼのことを長吉ほど知りません。魚のことなら源太のほうが詳しいし、今じゃ商いも、おたえのほうが上手かもしれません」
「白瀬しゃん! 今じゃ、じゃなか! 最初からたい!」
「はいはい」
笑いが起きた。
白瀬は、改めて茂敬を見た。
「人の上に立つ人ほど、いろんなことを知らないといけないと思うんです」
「それは、わしも教わった」
「でも、全部を自分で知るのは無理ですよ」
白瀬は、地面の水路の絵を指さした。
「大事なのは、誰が何を知っているかを知ること。そして、その知恵を生かせることです」
茂敬は黙って考え込んだ。
すると白瀬が、にやりと笑った。
「まあ、こんなところで話してても分かりませんよね」
「ん?」
「田んぼへ行きましょう」
「田んぼ?」
「百聞は一見にしかず、です」
茂敬は目を輝かせた。
「よかろう!」
こうして、若殿の初めての野外授業が始まった。
◇
雨上がりの田んぼには、若い稲が並んでいた。
風が吹くたび、緑の葉が一斉に揺れる。
遠くでは農民たちが畦を直し、畑では女たちが草を抜いている。
茂敬は、その景色を眺めながら歩いていた。
「……見事なものじゃな」
「まだまだですよ」
白瀬が答える。
「今年は水路の手入れも増やしましたし、肥やしも工夫しています。でも、天気だけは思いどおりになりません」
「それは、領主とて同じじゃな」
「ええ。雨には命令できませんから」
「ははっ!」
茂敬が笑う。
そこへ、ガタ吉が水路から顔を出した。
「おーい、白瀬! こっちの泥ばさらいよるぞ!」
茂敬が、ぎょっとする。
「か、河童!」
「何ね。おいの顔に何かついとるか?」
「いや……」
ガタ吉は、濡れた頭をぽりぽりとかいた。
「そいより、団子はなかと?」
「今は仕事中だろ!」
「仕事しよるけん腹の減るったい!」
白瀬が呆れる横で、茂敬は思わず吹き出した。
河童まで、人間と同じように文句を言いながら働いている。
城の中で聞く話とは、ずいぶん違う。
そのときだった。
「白瀬どん!」
農民の一人が、慌てて駆けてきた。
「大変たい! 下の水路が詰まっとる!」
「何?」
「昨日の雨で、木の枝やら泥やら流れてきて! 水のあふれ始めよる!」
白瀬の顔つきが変わった。
「健太! 長吉! 行くぞ!」
「はい!」
「おいも行く!」
ガタ吉も水路から飛び出す。
澪はすでに、遠くの水の流れへ目を向けていた。
「白瀬。急いだほうがよいぞ」
「分かるのか?」
「水が、苦しんでおる」
澪は静かに言った。
「あの先で、行き場を失うておるのじゃ」
◇
現場は、思った以上に厄介なことになっていた。
水路の途中に流木が引っかかり、枝や草が絡みついている。
その周囲に泥が積もり、水の通り道を狭めていた。
行き場を失った水が、畦の低いところからじわじわとあふれ始めている。
「まずいな……」
白瀬は水路を見渡した。
このままでは、近くの畑に水が流れ込む。
茂敬が前へ出た。
「人を集めよ! 土を積んで、水のあふれるところを塞ぐのじゃ!」
随行の武士が動こうとする。
だが、健太が叫んだ。
「待ってください!」
全員が振り向いた。
「そこば塞いだら、向こうの畦が破れます!」
「何じゃと?」
健太は地面にしゃがみ、指で線を引いた。
「今はここから少しずつ水の逃げよるけん、まだよかとです。ばってん、そこば塞いだら、水の行き場がなくなる」
茂敬は、先ほど教室で見た竹の模型を思い出した。
出口を指で押さえたとき、水が別の溝へあふれた。
――あれと同じか。
澪もうなずく。
「健太の申すとおりじゃ。水は止めるだけでは駄目じゃ」
「ならば、どうする?」
茂敬が尋ねた。
今度は長吉が答えた。
「こっちに、使うとらん低か土地があります。そこへ一度水ば逃がせば、畑は守れます!」
源太も、水路の下流を見た。
「下の流れはまだ余裕のある。先にそっちまで道ばつければよか!」
「よし!」
白瀬が手を打った。
「まず逃げ道を作る! 詰まりを取るのは、そのあとだ!」
健太は高低差を見ながら、仮の水路の位置を決める。
長吉は農民たちに声をかけ、使える土地を確かめる。
ガタ吉は河童水工衆を呼び、流木の引っかかり具合を調べ始めた。
おたえは資材を数える。
「竹が十二本! 縄が七束! 土俵が足りんばい!」
「西の納屋にある!」
「小春! 人ば呼んできて!」
「任せとって!」
小春が駆け出す。
茂敬は、その光景を呆然と見ていた。
誰も命令を待っていない。
誰も一人で解決しようとしていない。
それぞれが、自分にできることを探して動いている。
しかも、誰かが何かを言えば、ほかの者がそれを補っていく。
白瀬は、ただ指示を出しているのではなかった。
皆の知恵を、一つにまとめているのだ。
「……これが」
茂敬は小さくつぶやいた。
「白瀬殿の申す、学びなのか」
その直後だった。
どさり。
鈍い音がした。
◇
「危なか!」
小春の声だった。
対岸の畑で働いていた老夫婦に、水があふれる危険を知らせに行っていた小春。
二人を安全な場所へ送り出し、戻ろうとしたところだった。
雨で緩んでいた水路脇の土が、足元から崩れた。
「きゃっ!」
小春の身体が傾いた。
とっさに草の根をつかんだものの、片脚が泥の深いところへ沈み込んでしまう。
「小春!」
健太が叫んだ。
駆け出そうとしたが、仮水路の支えに使っている竹を手放せない。
ここを離せば、水に押されて土留めが倒れる。
「くそっ!」
健太は歯を食いしばった。
「小春! 動くな!」
「動けんとよ!」
小春が叫び返す。
足を引き抜こうとするたび、泥がまとわりついた。
しかも、すぐ横では水が勢いを増している。
このまま土が崩れれば、小春ごと水路へ落ちる。
「ガタ吉!」
「分かっとる!」
ガタ吉が水へ飛び込もうとした。
だが、澪が制した。
「待て! そこは水の下まで土が緩んでおる!」
水守の澪には、水の流れだけでなく、その下の危うい動きも感じ取れる。
「今、むやみに近づけば、二人とも巻き込まれるぞ!」
白瀬は周囲を見渡した。
水路に近づける場所。
踏んでも崩れにくい場所。
縄を固定できる場所。
頭の中で、必死に道筋を組み立てる。
「縄を持ってこい! 長い板もだ!」
源太が走った。
おたえが、納屋から運んできた縄の束を抱える。
「こいば使って!」
「よし! あの木に回して、二人がかりで支えてくれ!」
白瀬が指示を出した、そのとき。
「わしが行く!」
茂敬が前へ出た。
「若殿!」
随行の武士が叫んだ。
「おやめくだされ! 危のうございます!」
「では、そなたが助けられるか?」
「そ、それは……!」
茂敬は小春を見た。
朝、自分に向かって遠慮なく話しかけてきた娘。
何が学びたいのかと尋ねた、自分。
人と話せば仲良くなれると、屈託なく笑った娘。
その小春が今、泥の中で必死に踏ん張っている。
「わしは、あの娘の名を知っておる」
茂敬が静かに言った。
「名を知り、言葉を交わした者が目の前で危うい目に遭うておるのに、ただ見ておれと申すか」
随行の武士は、答えられなかった。
「白瀬殿!」
茂敬が振り向く。
「どうすればよい!」
白瀬は一瞬、茂敬を見つめた。
そして、力強くうなずいた。
「まず腰に縄を結びます! 板の上を進んでください! 無理に引っ張ったら駄目です!」
「心得た!」
「俺も一緒に行きます!」
「いや、そなたは皆を動かせ」
茂敬は、きっぱりと言った。
「ここを守れるのは、そなたじゃ」
白瀬は、その言葉に息をのんだ。
――この若殿。
ただの好奇心で来たわけじゃない。
そう思った。
◇
源太たちが長い板を渡し、足元の泥に重さが集中しないよう支えた。
茂敬は腰に縄を結び、慎重に足を進める。
澪が水の動きを読みながら声をかけた。
「右じゃ! そこから先は踏むな!」
「承知した!」
「次の一歩は、ゆっくりじゃ!」
茂敬は言われたとおりに進んだ。
立派な袴が、泥で汚れる。
足袋も泥まみれになった。
それでも、止まらない。
「小春!」
茂敬が叫んだ。
「わしの手を取れ!」
「若殿様!」
小春は、必死に手を伸ばした。
だが、あと少し届かない。
「小春! 身体ば倒しすぎるな!」
白瀬が叫ぶ。
「板をもう一枚! 茂敬様の前に渡して!」
源太が板を押し出した。
茂敬は片膝をつき、慎重に身体を伸ばした。
ようやく、二人の手が触れる。
「つかまれ!」
小春が、茂敬の手を握った。
「若殿様……!」
「大丈夫じゃ。離さぬ!」
その瞬間。
小春の足元で、泥がずるりと動いた。
「きゃあっ!」
小春の身体が沈みかける。
茂敬も前へ引かれた。
「縄! 張れ!」
白瀬が叫ぶ。
源太と村人たちが、必死に縄を支えた。
健太は竹の支えを隣の男に預け、板の端を押さえに走る。
「若殿様! 板から落ちんごと!」
ガタ吉も、流れの緩い下手から回り込んできた。
「小春! 足ば無理に引っ張るな!」
ガタ吉は泥の中へ手を差し入れ、足首に絡みついていた草の根と木の枝を外した。
「今たい!」
白瀬が声を張る。
「みんな! ゆっくり引け!」
「おおっ!」
村人たちが、一斉に縄を引く。
茂敬は小春の腕をしっかり支えた。
小春は空いた手を板につき、身体を持ち上げる。
ずるり。
泥が足から離れた。
「抜けた!」
健太が叫んだ。
「小春! こっちたい!」
皆に支えられ、二人はようやく安全な場所へ引き戻された。
そのまま、どさりと地面に座り込む。
しばらく、誰も声を出さなかった。
そして。
「……助かったと?」
小春が、ぽつりと尋ねた。
茂敬は荒い息を整えながら、隣を見た。
「そのようじゃな」
二人は顔を見合わせた。
小春の顔は、泥だらけだった。
茂敬の顔も、泥だらけだった。
小春が、ぷっと吹き出した。
「あはははっ!」
「な、何がおかしい!」
「若殿様、河童みたいになっとる!」
「河童!?」
「顔も着物も、泥だらけたい!」
ガタ吉が、ぬっと顔を出した。
「何ね! おいみたいになったとね!」
「褒めとらん!」
白瀬が突っ込む。
「おいに似とるなら、立派な水工衆たい!」
ガタ吉は、なぜか胸を張った。
茂敬は自分の姿を見下ろした。
上等な着物は、見る影もない。
袴は泥を吸い、足袋は茶色に染まっている。
これでは、城へ戻ったら大騒ぎになるだろう。
だが。
「……ははっ」
茂敬が笑った。
「はははははっ!」
腹の底から、声を上げて笑った。
それにつられて、周囲にも笑いが広がった。
随行の武士だけが、泣きそうな顔をしている。
「若殿……! 何というお姿に……!」
「よいではないか!」
茂敬は笑いながら言った。
「着物など、洗えばよい!」
そして、小春を見た。
「だが、人の命は替えが利かぬ」
小春は、目を丸くした。
それから、にっこり笑った。
「若殿様、ありがとね!」
茂敬は少し照れくさそうに顔をそむけた。
「……礼には及ばぬ」
「ばってん、若殿様も、なかなかやるばい!」
「小春!」
健太が、また慌てた。
「何ば言いよっとか!」
「何ね! 褒めよるとたい!」
茂敬は、また笑った。
「よい、よい。小春の申すとおりじゃ」
そして白瀬へ向き直る。
「白瀬殿」
「はい」
「わしは今日、ひとつ学んだ」
茂敬は、縄を引いてくれた村人たちを見渡した。
「一人では、あの娘を助けられなかった」
白瀬は黙って聞いていた。
「そなたが道を示し、皆が縄を支え、河童殿が足を自由にしてくれた」
「ガタ吉でよかたい!」
河童が胸を張る。
茂敬は笑った。
「そうか。ガタ吉殿」
「殿はいらんばい!」
「ははっ!」
また笑いが起きた。
茂敬は、改めて皆を見渡した。
「誰か一人が偉いから、助かったのではないのじゃな」
白瀬がうなずく。
「はい」
「皆が、それぞれの役目を果たしたからこそ……」
茂敬は、小春の顔を見た。
「こうして、笑っておられるのじゃ」
白瀬は、静かに答えた。
「それが、俺たちのやりたい国づくりです」
◇
もちろん、仕事はそれで終わりではなかった。
「さあ! みんな、もうひと踏ん張りだ!」
白瀬が手を打つ。
「水路を直さないと、また同じことになるぞ!」
「おおっ!」
村人たちが動き出した。
小春は足を洗って手当てを受け、健太から散々叱られていた。
「何であがん危なかところに行ったと!」
「じいちゃんたちに知らせんばと思ったけん!」
「そいは分かっとる! ばってん、おまえまで危なか目に遭うたら意味なかろうが!」
「……うん」
小春は、珍しくしゅんとした。
健太は何か言いかけて、口を閉じた。
そして、小さくつぶやいた。
「……無事で、よかった」
小春は顔を上げた。
「健太?」
「何でもなか!」
健太は、ぷいっと顔をそむけた。
その様子を見ていたおたえが、にやりと笑う。
「ふうん?」
「何ね、その顔!」
「別にぃ?」
おたえは楽しそうに肩を揺らした。
一方、茂敬は泥のついた袴をたくし上げ、再び水路へ向かっていた。
「白瀬殿! わしにも何かできることはないか!」
「えっ、まだやるんですか?」
「当然じゃ!」
白瀬は思わず笑った。
「じゃあ、あの竹を運んでください!」
「心得た!」
随行の武士が、とうとう頭を抱えた。
「若殿ぉ……!」
だが、茂敬は気にしなかった。
長吉に竹の組み方を教わり、源太から縄の結び方を教わる。
健太には、仮水路の支え方を何度も尋ねた。
おたえからは、使った資材の数まで数えさせられた。
「若殿様! 竹は何本使いました?」
「ええと……二十三本じゃ!」
「二十四本たい!」
「何!?」
「一本、折れた分ば忘れとる!」
「むむ……!」
おたえは腰に手を当てた。
「使うたもんは、全部数えんば!」
「……参った」
茂敬が苦笑する。
そして、自分より年若い娘を見て、素直に頭を下げた。
「教えてくれて、礼を申す」
おたえは、一瞬きょとんとした。
それから、ぱっと笑った。
「よかですよ! また間違うたら教えてやるけん!」
白瀬はその光景を眺めながら、心の中でつぶやいた。
――本当に、いい先生になったな。
◇
夕暮れ。
応急の水路が完成し、ようやく水が落ち着いた。
あふれていた水は、決めておいた低い土地を通って下流へ流れていく。
完全に直ったわけではない。
明日からは、詰まった泥を取り除き、傷んだ畦を補強しなければならない。
それでも、今日守るべき田畑は守れた。
茂敬は、水面に映る夕焼けを眺めていた。
「……白瀬殿」
「はい?」
「わしは、今日まで学問とは書を読み、教えを覚えることだと思うておった」
白瀬は、隣に立った。
「それも大事ですよ」
「うむ。だが、それだけでは足りぬのじゃな」
茂敬は、泥の残った手を見つめた。
「長吉は土を知り、健太は水の道を知り、おたえは銭の使い方を知っておる」
「はい」
「源太は川や海を知り、小春は人の心をつなぐ術を知っておる」
白瀬は、少し驚いた。
たった一日で、五人のことをよく見ている。
茂敬は続けた。
「わしは、その誰よりも身分が高い。されど……」
夕陽が、水面を赤く染めていた。
「その誰よりも、この田を知らなんだ」
白瀬は、ゆっくりとうなずいた。
「でも、若殿は今日、知りました」
「うむ」
「なら、明日は今日よりいい判断ができます」
茂敬は、しばらく黙っていた。
そして、ふと笑った。
「白瀬殿」
「はい」
「そなたは、妙な男じゃな」
「よく言われます」
「ははっ!」
二人は笑った。
やがて茂敬は、朝の学び場を思い出したように尋ねた。
「ところで、白瀬殿」
「何でしょう?」
「あの庭で学んでおる者たちは、雨の日はどうするのじゃ?」
白瀬は、頭をかいた。
「……それが、困ってまして」
「やはりか」
「地面に書いた文字は消えるし、板も濡れる。人数が増えたら、座る場所も足りません」
「では、屋根を建てればよいではないか」
「そう簡単に言いますけどね……」
白瀬は笑った。
「屋根だけじゃなくて、皆が集まれる場所が欲しいんです」
「皆が?」
「はい。子どもも、大人も、農民も、漁師も。できれば武士の子も一緒に学べるような場所です」
茂敬は目を見開いた。
「武士の子も?」
「もちろんです」
白瀬は即答した。
「今日、若殿が長吉たちから学んだみたいに」
茂敬は、じっと白瀬を見つめた。
「……なるほど」
そして、静かに笑った。
「面白い」
白瀬も笑う。
「でしょう?」
「実に面白い」
茂敬は、もう一度、村の方角を振り返った。
「この話、父上に申し上げよう」
◇
茂敬が帰ったあと。
白瀬は、長屋の前へ戻ってきた。
夕陽の下で、澪が一人、地面に残った文字を眺めていた。
「何してるんだ?」
「今日の名残を見ておる」
「名残?」
澪は足元を指さした。
そこには、雨に消えかけた文字と、小さな水路の絵があった。
「朝には文字を教え、昼には水を教え、夕には命の守り方を教えた」
「……そうだな」
「ずいぶん忙しい学び場じゃ」
白瀬は笑った。
「俺が一番勉強になったよ」
「ほう?」
澪が、いたずらっぽく目を細めた。
「おぬしも、ようやく人から教わることを覚えたか」
「俺だって、毎日学んでるぞ」
「そうか。ならば、わしからも学んでおるか?」
「もちろん」
白瀬は即答した。
「水のことも、人のことも。それに……」
「それに?」
「一人じゃできないことが、二人ならできるってこともな」
澪が、ぴたりと動きを止めた。
「……な」
「ん?」
「何でもない!」
澪は、ふいっと横を向いた。
夕陽に照らされた頬が、ほんの少し赤い。
白瀬は首をかしげた。
「どうした?」
「何でもないと言うておろう!」
「変な澪だなあ」
「おぬしが鈍いだけじゃ!」
「ええっ!?」
長屋の軒先から、ガタ吉の笑い声が聞こえた。
「白瀬は、まだまだ修業の足りんばい!」
「何の修業だよ!」
「そいは自分で考えんね!」
白瀬は、ますます訳が分からなくなった。
澪はそんな白瀬を横目で見て、小さくため息をついた。
――まったく。
水の流れは読める。
風の変わり目も分かる。
遠くの雨の気配すら感じ取れる。
なのに。
自分の胸の内だけは、どうしてこうも、思いどおりにならぬのだろう。
澪は、夕暮れの空を見上げた。
「……本当に、厄介な男じゃ」
白瀬には、その声は届かなかった。
◇
その夜。
諫早の城では、思いがけない騒ぎが起きていた。
「若殿! まずは湯を!」
「いや、その前に父上へ報告せねばならぬ」
「せめて、お召し物だけでも!」
「これでよい」
「よくございませぬ!」
随行の武士たちは、半ば泣きそうになっていた。
何しろ、諫早家の嫡男が、泥だらけの袴で帰ってきたのである。
しかも本人は、やけに上機嫌だった。
「父上!」
茂敬は、そのまま父のもとへ向かった。
書を読んでいた諫早直孝は、顔を上げた。
そして、息子の姿を見るなり、目を丸くした。
「……茂敬」
「はい!」
「そなた、どこで転んだ?」
「転んではおりませぬ!」
「ならば、田んぼで相撲でも取ったか?」
「それも違います!」
直孝は眉間にしわを寄せた。
「……では、何をしてきた?」
茂敬は、今日の出来事を一つずつ話した。
白瀬の学び場のこと。
農民の子らが教える側に立っていたこと。
算術を教えてくれた、おたえという娘のこと。
水路の詰まりを皆で直したこと。
そして、小春という娘が泥に足を取られたこと。
「……それで、そなたが助けに入ったのか」
「はい」
直孝は、しばらく黙っていた。
「危ういことをしたな」
「申し訳ございませぬ」
「そなたに何かあれば、諫早の家はどうなる」
「……はい」
茂敬は頭を下げた。
父の言葉はもっともだった。
嫡男である自分には、守るべきものがある。
自分一人の命ではない。
家臣も、領民も、これからの諫早も背負っている。
だが。
「父上」
「何じゃ」
「それでも、わしは行かねばならぬと思いました」
直孝の目が細くなる。
「なぜじゃ?」
「あの娘は、わしに話しかけてくれました」
「……ほう」
「わしが何者か知っても、恐れず、遠慮せず、笑っておりました」
茂敬は、泥の残った手を見つめた。
「あの娘は、わしが治めることになる土地に暮らす、一人の民です」
直孝は黙って聞いていた。
「民を守るのが領主ならば、あのとき、わしはどうすべきだったのでしょうか」
部屋に、静けさが満ちた。
しばらくして、直孝が口を開いた。
「……人を助けるために、己の命を粗末にしてよいわけではない」
「はい」
「されど、民の危うさを知りながら、見ぬふりをする者にも、領主は務まらぬ」
茂敬は顔を上げた。
直孝は、静かに続けた。
「難しいものじゃな。人の上に立つということは」
「……はい」
「今日、そなたはその難しさを、少しばかり知ったようじゃ」
茂敬は深く頭を下げた。
「父上。もう一つ、お願いがございます」
「申してみよ」
茂敬は背筋を伸ばした。
「あの学び場には、屋根がございませぬ」
「屋根?」
「はい。雨が降れば文字が消え、人が増えれば学ぶ場所も足りませぬ」
直孝は、じっと息子を見つめた。
「それで?」
「父上。諫早には、建てねばならぬものがございます」
「……ほう」
茂敬の目は、真剣だった。
「城の石垣を高くするより先に、民の知恵を守る屋根が必要なのです」
直孝は、しばらく何も言わなかった。
茂敬は続けた。
「白瀬殿のもとでは、百姓の子も、漁師の子も、商いをする娘も、皆が教え、皆が学んでおります」
「……うむ」
「わしも、あそこで学びたい」
直孝の眉が、ぴくりと動いた。
「そなたが?」
「はい」
「武家の学問では足りぬと申すか?」
「いいえ」
茂敬は、きっぱりと答えた。
「武家の学問だけでは、足りぬのです」
その言葉に、直孝は目を見開いた。
そして。
「……はっはっは!」
突然、大きな声で笑い出した。
「父上?」
「いや、すまぬ!」
直孝は、腹を抱えて笑った。
「白瀬め! とうとう、わしの息子まで巻き込みおったか!」
「……白瀬殿は、そのようなつもりでは」
「分かっておる!」
直孝は笑いを収め、息子を見つめた。
「茂敬」
「はい」
「そなた、よい顔になったな」
茂敬は、少し驚いた。
「……そうでしょうか」
「うむ。泥だらけじゃがな」
「父上!」
再び、笑いが起きた。
やがて直孝は、静かに言った。
「よかろう」
「……父上?」
「そこまで申すなら、わしも見てみたい」
茂敬の顔が明るくなった。
「では!」
「ただし、学び場を建てると決めたわけではないぞ」
直孝は、指を一本立てた。
「建てるだけならば、銭と人を集めれば済む。肝心なのは、そこに何を残すかじゃ」
「……はい!」
「わし自身の目で確かめよう」
茂敬は、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
立ち上がろうとした茂敬へ、直孝が声をかけた。
「それとな」
「はい?」
「千代にも、今日の話をしてやるがよい」
「妹に、ですか?」
「うむ。あれも城の外の話を聞きたがっておる。そなたの泥だらけの姿を見れば、さぞ面白がるであろう」
茂敬は苦笑した。
「それは……少々困りますな」
「はははっ!」
直孝の笑い声が、夜の城に響いた。
そして茂敬は、まだ知らなかった。
この日、自分が父へ語った小さな学び場の話が、やがて妹の心をも動かすことを。
その妹が、一人の商い好きな娘と親友になり、遠い長崎の歌姫へとつながっていくことを。
もちろん、その未来を知る者は、まだ誰もいない。
◇
同じ頃。
長屋の前では、白瀬が小さな木の板に何やら書き込んでいた。
「……何を書いておる?」
澪がのぞき込む。
「今日の記録だよ」
「ほう?」
「水路の詰まった場所。応急の水路を通した場所。それから、使った竹や縄の数」
澪は感心したようにうなずいた。
「おぬし、ずいぶん字が上手になったのう」
「まだまだだよ。さっきもおたえに一文字直された」
「ふふっ。先生が生徒に教わるとはな」
「それでいいんだ」
白瀬は笑った。
「俺がいなくなっても、誰かが次の人に教えられる。それが一番いい」
澪は、白瀬の横顔を見つめた。
「……おぬしが、いなくなっても?」
「ああ」
白瀬は何気なく答えた。
「知恵ってのは、人がいなくなっても残せるだろ?」
澪は、しばらく黙った。
そして小さく、うなずいた。
「……そうじゃな」
白瀬は板へ向き直る。
「さて、明日は水路の本修理だ。それが終わったら、学び場の場所も考えないとな」
「まだ屋根の話をしておるのか」
「そりゃするさ!」
白瀬は笑った。
「雨が降っても、風が吹いても、みんなが集まれる場所が欲しいんだよ」
澪は、そんな白瀬を見て微笑んだ。
「ならば、わしも考えよう」
「何を?」
「水があふれぬ場所じゃ。せっかく建てる学び場が、水浸しになっては困るであろう?」
「……なるほど!」
白瀬は目を輝かせた。
「さすが水守先生!」
「ふふん。もっと褒めてもよいぞ」
「はいはい。頼りにしてますよ」
「その返事は軽い!」
二人の笑い声が、夜の長屋に響いた。
空には、雲の切れ間から星がのぞいている。
雨に消された地面の文字は、もう戻らない。
けれど。
長吉が教えた土のこと。
健太が教えた水のこと。
おたえが教えた銭のこと。
源太が教えた川と海のこと。
小春が教えた、人と人が手を取り合うこと。
そのすべては、今日、若き諫早の後継ぎの胸に刻まれた。
そして一人の若殿は、泥まみれになって初めて知った。
人の上に立つということは、人より高い場所に立つことではない。
時には誰よりも低い場所へ降り、人の手を取ることなのだと。
翌朝。
白瀬のもとへ、城から一通の知らせが届くことになる。
それは、学び場の未来を大きく変える知らせだった。
諫早の国づくりは、また一つ、新しい時代へ踏み出そうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回の主役は、諫早家の若殿・茂敬でした。
城の中では学べないことが、田んぼにも、水路にも、そして村人たちの暮らしの中にもある。
小春を助けるために泥へ踏み込んだ若殿も、また一つ、大きく成長したようです。
そして、父・直孝のもとへ届けられた学び場の話。
次回、領主自らが動き出します。
果たして、白瀬が夢見る「誰もが学べる場所」は実現するのでしょうか?
次回、**第五十三普請。**
新たな出会いとともに、諫早の未来が動き始めます!
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