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92.



 セフィアさんの道案内で、わたしらは帝国へとやってきた。


 アナ曰く、ここはマデューカス帝国の帝都「カーター」。

 魔導具大国マデューカスの、中枢。突然、人もものも多くここへやってきてるからか、うちよりかなり文化水準が上だ。


 わたしがリサイクルショップを使い、苦労して作ってきたものが、普通に、そして当たり前のようにあるんだもん。

 つるつるの道路、道を走る車。おしゃれな服に、美味しそうな美食(屋台)。


「すごいなぁ、帝国」

「リオン様の国も、素敵だしすごいですよっ。胸を張ってっ」


 アナ、そしてキリカがギュッと抱きしめる。うん、褒めてくれるのは嬉しいよ。でもなんで、胸を押し付けてきたり、はみはみしたりしてるんだろうね……


 ほどなくして、大通り沿いの、すごい豪華ででっかい建物の前までやってきた。


「「「…………」」」


 田舎者であるわたしたちは、そのあまりの大きさに、呆然とするほかなかった。


 なにこれ、高層ビル……?

 異世界にそぐわない質感の、巨大ビルなんですけど。

 え、セフィアさんって、ここまででっかい建物を、普通に所有できてるわけ……?


 OTK商会……とんでもないな。


「ささ、どーぞどーぞ」

 

 セフィアさんがわたしたちを、建物の奥へと案内する。なんか高級ホテルと見紛うほど立派なエントランス。

 そこを抜けて、わたしたちはエレベーター(!?)を使い、最上階へ。


 ……改めて思う。マデューカス帝国の技術力、高すぎ。高すぎる。不自然なほどにね。


 到着したVIPルームにて、わたしたちはソファに座る。これもまあふわふわだ。


「さてさてさて、商談と、いっちゃいましょー!」


 セフィアさんがテンション高くそう宣言する。

 見た目は深窓の令嬢、おとなしい子なのかなーって思ったんだけど。どうやら中身は違うらしい。


 まあ、うちの家臣らもそーだし、女の子ってそーゆーものなのかもしれない。


「わたしたちは、これを売りたいと思ってます」


 わたしは虚空に手を伸ばす。ずぶ、と沼に手が沈む感覚。

 空間にできた穴から手を引くと、わたしが加工して作った通称……リオン玉がでてくる。


「これを売りたくて……セフィアさん?」


 彼女は、口を大きくあけていた。なんだかとんでも無いものを目撃した、そんな表情だ。


「い、いまの、アイテムボックスじゃないよねっ?」


 がたたっ、と身を乗りだすセフィアさん。


「よ、よくわかりますね」

「分かるよ! だってアイテムボックスの場合、眼前に箱が出現するんだもん!」


 あ、そうだったんだ。


「君は何も無い空間に手をつっこんで取り出してたっ。見たことないっ、なにそれなにそれー!」


 めっちゃグイグイくるな……。おとなしそうな見た目とは大違いだ。


「ええと、わたしのスキル、リサイクルショップの副次的効果で」

「?! わ、私の聞いたことない、スキル! ねえねえそれどんなの!?」


 なんて好奇心の強さだ……若干怖い……

 全部を知られるのはまずいし。かと言って、嘘を言うのもまずい。信頼関係を構築しておきたいし。


 ……あんまり困ってると、キリカが切り掛かりかねないし。


「ええと、不用品を回収・貯蔵し、加工できるスキルです」


「回収!? 貯蔵!? 加工!? 何それ三つも効果のあるスキル!? 複合スキルってことー! しゅごーい!」


 そんなにすごいこと?


「スキルって、一個につき一つの効果だもんね!」


 そう言うもんなんだ……


「おっほ、すごいすごいすごいしゅごーい! これはしゅごすぎますー! そんなしゅごいひとと商談……期待高まるよー!」


 セフィアさん変な……げふん、個性的な人だなぁ。


「さっそく見せてもらいましょう」


 さっきの子供っぽい雰囲気から一転し、彼女は職人のまなざしで、リオン玉を見ている。

 一見すると宝石にしか見えないこれを、さて彼女はどう評価するか……


「しゅごおぉおおおおおい!」


 ……あれ、また元の雰囲気に戻ってるや。

 よだれをたらしながら、リオン玉……ではなく、わたしにくっついてきた。


「こ、これ、魔石だよねっ。ここまで真の球体を保っているの、しゅごすぎるよ!」


「そ、そうだよね。球体であればあるほど、魔力伝導効率がいいんだもんね」


「そう! これを手作業でできる職人はいないよっ。身内に一人いるけど」


 いるんかい!


「でも世界でただ一人その人だけだし、今はもう加工請け負ってないからさ」


 その身内の、すごい手先の器用な人は、どうやらセフィアさんの親類縁者のようだ。

 しかも、今は廃業中と。となると、この真玉を作れるのはわたしだけってことになる。


「これほどのものを売るんだもの。どれくらいの対価をお求めで?」


「普通、対価はそっちが提案するものじゃあないです?」


「欲しいものを届けるのが、うちの家訓なので」


 はぁ。まあじゃあ。


「油」

「……ぱーどうん?」


 パードゥン? ああ、聞き返してるのか。てゆーか、この人さっきから思っていたけど、わたしと同類じゃ……?


 まあ、それは今はいいか。商談の最中だし。


「だから、油が欲しい」


 どさ、と。セフィアさんはその場にひざまずいた。え、え、え!?


「神……」

「いや神って」

「もしくは聖人。こんな莫大な富を生み出すものの対価に、油程度を望むなんて。なんて、なんて、なんて謙虚なかたなんでしょーーーー!」


 えー……そうなっちゃうの……。

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