『海王戦記――鄭芝龍、平戸より起つ』
最新エピソード掲載日:2026/10/17
十七世紀初頭、平戸。
海の向こうからやって来た若い唐人・鄭芝龍には、金も地位も、自分の船さえなかった。
あるのは、覚えたばかりの日本語と、人を見る目。そして「どこで何が高く売れるか」を見抜く、商人としての勘だけ。
そんな芝龍が平戸で出会ったのは、物怖じしない日本の女・田川まつだった。
やがて二人の間には、一人の男児が生まれる。
幼名、福松。
後に「国姓爺」と呼ばれ、歴史に名を残す鄭成功である。
しかしこれは、鄭成功の物語ではない。
その父――鄭芝龍の物語である。
平戸の商人たちから商いを学び、海を渡り、異国の言葉を覚え、銀と生糸を動かし、船を手に入れ、仲間を増やしていく芝龍。
商人。
通訳。
密貿易者。
海賊。
そして明朝の将軍。
昨日の敵と商い、今日の仲間を明日には討つ。
国家と国家の狭間を渡り歩きながら、芝龍はついに東シナ海に巨大な海上勢力を築き上げる。
だが、明が崩れ、清が迫ったとき。
生き残ることを選ぶ父と、戦うことを選ぶ息子は、決定的に違う道を選ぶ。
「生き残らなければ、何も守れない」
「守るものを失って、生き残る意味があるのですか」
言葉を覚え、人を結び、海を越え続けてきた男が、最後まで言葉を通じ合わせることのできなかった相手。
それは、自分の息子だった。
日本、中国、台湾、東南アジア、そして西洋勢力までが入り乱れる十七世紀の東アジア。
国境よりも先に海を見た男・鄭芝龍の、栄光と転落を描く歴史海洋戦記。
海の向こうからやって来た若い唐人・鄭芝龍には、金も地位も、自分の船さえなかった。
あるのは、覚えたばかりの日本語と、人を見る目。そして「どこで何が高く売れるか」を見抜く、商人としての勘だけ。
そんな芝龍が平戸で出会ったのは、物怖じしない日本の女・田川まつだった。
やがて二人の間には、一人の男児が生まれる。
幼名、福松。
後に「国姓爺」と呼ばれ、歴史に名を残す鄭成功である。
しかしこれは、鄭成功の物語ではない。
その父――鄭芝龍の物語である。
平戸の商人たちから商いを学び、海を渡り、異国の言葉を覚え、銀と生糸を動かし、船を手に入れ、仲間を増やしていく芝龍。
商人。
通訳。
密貿易者。
海賊。
そして明朝の将軍。
昨日の敵と商い、今日の仲間を明日には討つ。
国家と国家の狭間を渡り歩きながら、芝龍はついに東シナ海に巨大な海上勢力を築き上げる。
だが、明が崩れ、清が迫ったとき。
生き残ることを選ぶ父と、戦うことを選ぶ息子は、決定的に違う道を選ぶ。
「生き残らなければ、何も守れない」
「守るものを失って、生き残る意味があるのですか」
言葉を覚え、人を結び、海を越え続けてきた男が、最後まで言葉を通じ合わせることのできなかった相手。
それは、自分の息子だった。
日本、中国、台湾、東南アジア、そして西洋勢力までが入り乱れる十七世紀の東アジア。
国境よりも先に海を見た男・鄭芝龍の、栄光と転落を描く歴史海洋戦記。