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記憶を共有できる僕と私の日常は  作者: 高坂静


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第246話 めし屋もできるのか!

〇4月1日(水)地球



 朝の散歩の時間に早速昨日のことをカイン組に報告。


「うおぉ! マジか!」


「しっ!」


 後ろを向いて竹下に注意する。


「あ、ヤバ!」


 竹下は口を押えてあたりを見渡している。まだ早い時間だから気を付けないと……大丈夫みたい。


「ボクも思わず声を出すところだったよ」


 そうそう、リュザールもビクッとしていた。まあ、ちょっと離れたところにいた僕(ソル)も、びっくりして立ち上がるところだったから、竹下が雄叫びを上げてしまったのもわかる。たぶん、テラで料理を出す初めての隊商宿になるはずだから。


「驚かれたということは、前もってリュザールさんがアドバイスされていたわけではないということですね」


 ふふ、凪ちゃん、平静を装っているけどちょっと声が上ずってる。


「うん、そうだよ。ボクは何も言ってない。自分たちで考えたみたいだね」


「自分たちでですか……やっぱり、他の隊商宿との差別化でしょうか? カルトゥは大きな町だから、隊商宿も何軒もあるのでしょう?」


「俺が前にいた町ではそう聞いてたぜ。確か4軒くらいあったんじゃなかったか?」


「正解。4軒であってる。でもね、理由は差別化じゃなかったんだ。ねえ、樹」


「うん、僕も途中から話に加わったんだけど……」


 みんなにその時に聞いた話を伝える。


「なるほど、時間的な余裕ができたからか」


 若い行商人のお母さんでもある隊商宿のおかみさんは、糸車のおかげで糸を紡ぐ時間が短くなり、空いた時間を使って料理を作りたいみたい。それも大人数分。


「はい」


 前を歩く海渡が手を上げて振り向く。


「新たな食材も増えてきていますから腕を振るいたい気持ちはわかりますが、そのおかみさんは、もしかして料理をタダで振舞ったりしませんよね?」


「そう、そのまさか。だから、ちゃんと硬貨や麦と引き換えにするように言ったよ」


 テラでは結婚式のような嬉しいことがあった時に、喜びを分かち合う手段の一つとして料理を食べてもらう習慣がある。だから、対価を貰って作るということまでは気が付かなかったみたい。


「サービスでやってもいいけど、それが当たり前になると後から困るのは本人たちだからね」


「それなら、よかったですぅ。体調や都合が悪くて料理が出せない時に、不公平だという人が現れるのは想像にかたくはありませんから」


 そういうこと。


「でもよ、そうなると他の隊商宿の客は減るんじゃねえのか」


「たぶんね。料理当番が回ってくるのを嫌がっている行商人はたくさんいるもん」


「で、どうするんだ? どこかが潰れたら、繁忙期には入りきれねえこともあるんじゃね?」


 隊商宿の繁忙期は春になった頃と冬になる前、この時期の大きな町には付近の村々から物資を求めてたくさんの行商人が集まってくる。現にソルたちがいるコルカでも、マルトゥさんによるとそろそろ満員になっている隊商宿も出てきているみたい。


「途中からカルトゥ隊の隊長も加わって話をしたんだけど、カルトゥでは他の隊商宿でも料理を出さないといけなくなるかもって伝えたよ」


「料理……作れますかね? 男所帯の隊商宿も多そうですが……」


 クトゥさんのところの隊商宿でも、奥さんを亡くしてからはマルトゥさんがお嫁さんを貰うまでずっと男だけでやっていた。それに、隊商宿には行商人だけでなく、訳アリの旅人もやってくる。危険だからと、住むのは別の場所にして奥さんを見せないようにしているところもあるみたい。


「隊商宿の人たちだけで無理な時は、誰かを料理人として雇うか近くに料理を出す店を作ることを勧めたよ」


「料理を……めし屋もできるのか!」


「うん、カインのような小さな村では無理だけど、カルトゥやコルカぐらいの町になったら商売として成り立つと思うんだ」


 隊商宿のお客さんが少ない時でも、町の人たちが利用してくれたら何とかなると思う。


「それに、カルトゥで料理を出す隊商宿がうまくいったら、コルカでもおいしい料理を食べられるようになって、より交易が発展していく!」


 以前リュザールは、料理が下手な行商人しかいない村の隊商には、参加者が少なくなる傾向があると言ってた。料理の不安が無くなったら、一人、二人と行商人になろうとする人が増えて安全面でも心配がなくなるから、さらに行商人が増えていって交易がより盛んになって、珍しいものが手に入るようになるかも。


「それで、海渡。パスタ麺の量産が早まったから、そのつもりでいてくれる」


「はい、人知れず準備をしておきます。商売として出すのですから、作るのはスパゲッティ麺だけでなくマカロニなんかもあったらよさそうですね」


「へぇ、マカロニもできるんだ。運ぶときに気を付けなくてもいいから助かるよ」


 短くて折れにくいからね。料理のレパートリーも増えることになって、カルトゥの隊商宿のおかみさんも喜ぶんじゃないかな。でも……


「作れるの?」


 前を歩く海渡に問いかける。

 パスタ麺は、先端にダイスを付けた筒に荒めに挽いた小麦粉で作った生地を入れて、ところてんのようにグッと押し出すことで形を作っていく。スパゲッティは丸い穴を開けるだけでできるんだけど、マカロニは中心に穴があいているからダイスの形状を穴ではなくて中心に穴があいてない円にしたらいいはずだけど……円の中心部分をどう保持したらいいんだろう。円を途切れないようにしとかないとマカロニは筒状にならないし……


「お任せください。出口部分の形状を二重構造にしたらいいのは分かってますので……えーと、凪ちゃん教えますのであちらで図面にしてもらっていいですか? ダイスをセリナさんに作ってもらいます」


「あ、はい」


 ダイスというのは、パスタを押し出すときに筒の先に付けるアタッチメントのこと。ここの形を変えることで、出てくるパスタ麺の形状が変わってくるんだ。凪ちゃんの絵があったらパルフィが正確に作ってくれるから、カインに戻る頃には試作品ができていそう。

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― 新着の感想 ―
実はマカロニよりフジッリやコンキリエの方がダイスの形状は簡単なんだよな。
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