表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶を共有できる僕と私の日常は  作者: 高坂静


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/250

第247話 ふえぇー、驚きです

 いつもの東屋あずまやに到着した後、話を続ける。


「あとよ、遊牧民の方はどうだったんだ?」


「遊牧民! そうそう、面白いことを聞いてきたよ」


 みんなは風花に注目。


「結論から言うと、今回の寒波で盗賊に堕ちてしまった遊牧民は少なかったみたい」


「最初の話題に乗らなかったからたぶんそうだろうなとは思っていましたが、改めて聞くと安心します」


 凪ちゃんだけでなく他の二人もホッとした表情。


「んじゃ、コルカにはあまり来てないのか?」


「いや、物資の補給のために結構来ているって」


「ほぅ! それじゃ、家畜は生き残ってたんだな」


「いやそれが、やっぱりたくさん死んでしまっていたらしくて、コルカのバザールで馬や羊を買っていってるみたいだよ」


 家畜たちにも寒さをしのげる場所があればいいんだけど、遊牧民が持っているのはユルト(モンゴルではゲルとも呼ばれる移動用住居。中央アジアのチュクル語系ではユルトと言います)ぐらいで、カルムによると入れられても子羊や子馬でそれも数頭が限度みたい。その子たちは助かったのかもしれないけど、外にいた残りの家畜はあまりの寒さに持たなかったか、持ったとしても地面が凍り付いたままならエサである草を食べることができずに結局は餓死してしまうんだって。


「でもよ、家畜がいないんなら、何と交換してるんだ? 盗ってじゃなくて買ってんだろう?」


「そうだよ。ねえみんな、なんだと思う?」


 ふふ、風花がもったいぶっている。


「あ、わかりました。きっと毛皮です。北の方から運ばれて来ると聞いたことがあります。ルーミンが小さいときに村のバザールで見た毛皮は、ふわふわで暖かそうでした。イタチとかキツネとかの質のいいものはかなりお高かったので、馬にも変えられたはずです。あの頃は食べるのにやっとでしたが、今なら……」


 ふむふむ、ルーミンは毛皮が……コルカのバザールを探してみよう。


「僕は薬草じゃないかと思います。確か、あの辺りでしか採れない貴重なものがありませんでしたか?」


 凪ちゃんの言うとおり、寒いところの湿地帯でしか採れないものがある。コルカのバザールでそれが売りに出た時はコルカの行商人さんが取ってくれていて、カイン隊が行った時に渡してくれることになっているんだ。


「他は?」


 みんな他に何があるんだという表情。遊牧民は馬や羊を育てて、必要に応じてそれを売って生計を立てている人たち。たまに狩りで動物を仕留めたり野草を採集することはあっても、畑で作物を育ててるわけじゃないから扱っているものが限られちゃうんだよね。


「もちろん、そういうものもあるんだけど、実は……ジャーン!」


 風花がポケットから500円玉を出した。


「もしかして、硬貨ですか!?」


 うんと頷く風花。


「ふえぇー、驚きです。でもですよ、ソルさんたちが硬貨の普及のためにコルカに向かったのは去年の夏頃でした。それから今まで……いえ、冬は寒波で動けなかったはずですから、秋までの間に北の遊牧民のところまで拡がっていたということですか?」


「ボクも驚いたけど、どうもそうらしい」


「あ、でもわからんでもねえな。遊牧民は年がら年中移動して回るから、荷物はできるだけ少なくしてえ。そんな時に硬貨の話を聞き付けて、麦の代わりになるのならと率先して余剰分の麦を硬貨に変えていたのかもな」


「そうだったのかも、去年の秋ごろコルカのバザールでの硬貨の流通量が運び込んでいる量よりも少なかったから、カルトゥあたりに流れているんだと思っていたけど一部は北の方に行ってたんだろうね」


 あちらの世界には統計調査のようなものがないからはっきりとはわからないけど、恐らくそういうことだったんだと思う。


「それで、飼っていた馬や羊が寒さに耐えきらずに死んでしまっていても、新たに買うことができる硬貨があったから、盗賊にならなくても済んだというわけですね」


「たぶんね。あと、コルカの行商人に家畜の値段を抑えてもらっていたのも功を奏したんだと思う」


「ということは、あいつも……」


 竹下がこちらを見た。

 うんと頷く。若馬くんは明日の朝、リュザールたちと一緒にバザールに行くことになる。


「そっか、いいやつのところに行けたらいいよな……」


 ほんと、そう思う。



〇1月14日(地球の暦では4月2日)テラ 木の日



 リュザールに引かれてバザールに向かう若馬くんを見送り、朝食の後片付けをしてから町へと出る。

 初めてコルカに来た時には女の子一人では危ないからってアラルクがついてきてくれたけど、今は治安もよくなったということで昼間は護衛役は必要ないみたい。それでも、裏道は使わないようにと言われているのでメインの通りを進む。

 町長まちおささんの家は確かこの角を曲がって……そうそう、この先だ。ん? 前を進む鹿毛かげの馬は……あの子だ!

 物陰に隠れて様子を見る。

 連れているのはこの辺の服装じゃないから北の遊牧民かな。もう買ってくれたんだ。男性と男の子の二人連れだから、親子で馬を探しに来ていたのかも……あっ! 若馬くんが立ち止まってキョロキョロし始めた。急いで首を引っ込める。匂いかな……そういえば風はこっちから吹いてる。

 ちょっと時間を置いてから、そーっと顔を出して……うん、歩き始めている。男の子が手綱を引きながら男性に話しかけていて……ふふ、なんだか嬉しそう。暖かくなって、雪が解けた大草原を一緒になって駆けてくれたらいいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=onツギクルバナー
― 新着の感想 ―
タイトルがシンプルになりましたね。 これはこれでわかりやすいので、良いと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ