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猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
6章

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78/80

67 詰め

 ロボットのように典型的な言葉を綺麗に並べて言うその言葉は、まさに翻訳をするときのマンダであるとカイラは思った。


 そういって、カイラたち一行、貴族や大臣、王様という順番で向かってお辞儀をしていった。カイラはその間心臓の鼓動が鳴りやまずにいて、うずうずしていた。


 人間の王はそれに見向きもせずに、ファランから事前に送られてきていた通達書を広げては、わざとらしく口をとんがらせた。


「議題は……移民が主でございますね。」


 人間の王がかまわず言うと、間髪入れずにマンダがこの言葉を一文ずつ、正確に意味を伝えた。もうすっかり慣れた作業のように。


「その通りです。ぜひうちの国民を、エーテルに招き入れてもらいたい。先着で入れてもらった獣人の様子も、なかなかに役立つことができているともカイラから先日お聞きしました。なので、デメリットは少ないはずでございます」


「いや、それが結構ありましてね、どうやら、人間のことを「猿獣人」と呼んでいるだとか。かなり獣人も性格が悪い用で?センスは良いですがね」


「え?」


 人間の言葉がわかるカイラは、翻訳される前に困惑していた。マンダが翻訳をして代弁すると、他の獣人たちも驚いたような顔をした。


 そんな報告など1度も聞いていないし、事前のアンケート調査でもそんな問題はなかったのだから。


「そちらの件については、私は聞いてはおりませぬ。」


 と言いながらも、カイラは様々な可能性を考えていた。裏で集団で何かが動いていたか、それかただの報告ミス。


 王様は、一瞬カイラと目を合わせ、カイラもそちらを向いたが、表情を見て何かを考えては黙り込んでしまった。


 早速洗礼を受けているのだろう。


「ほほぉ、しかし報告があるのですよ。しっかりと3枚もの長い手紙で。それに、証言もあるのです。それもかなりの数がね。またいろいろな人が報告をしてきたのです。これは、どういうことですか?」


 まくし立てるように王は早口でそういう。


「なるほど、で」

「なるほどではなくてですね?どうしますか?と聞いているのです」

「……」


 思わず相手の攻め具合に腹を立てて息を吐いてしまう。

 私が息を吸うと、間髪入れて腕を組みながらそう言ってきた。


 明らかに、なめられている。


「お答えいたしますのでこちらの話を聞いてくださいますか?それとも、王様は一方的に言葉攻めをするおつもりで?」

「……続けたまえ」


 ぐぐ……という声が聞こえたのを獣人たちは見逃さなかった。

 その中でロードロールがただ一人欠伸をしながら爪を削っていた。

 それに明らかダルそうなあくびも。


「では、私たちは移民を募集するとき、事前にこう伝えております。「人間族とのトラブルを起こした場合、集団責任で全員国外追放」と。」


 これは本当の事だ。募集要項にも、契約書にも、留学に関するすべての書類でこのことは書かれていた。この全員にはカイラも含まれる。


「書いてあることは確認しているはずです。どこかで。ですよね、留学生のみなさん」


 全員、はい、と言っていた。しかし若干動きがおかしいものが複数名いた。


「しっかりと拝読していいと仰ってましたし、書類にも」

「誰が発言していいと言った?」

「ひ」


 王が後ろを向いてにらみつけると、珍しいことに馬獣人の一人の喉の奥から声が漏れ出た。


 やけに発音の良い獣人語だ。これは……と王様は予感が当たったと直感した。

 人間の王も、それなりに頭の切れるやつだ。と。


 ヒリついた空気を一旦緩めるために口をはさんだ。


「いいではないですか。事実の一言二言くらいは。それともやはり……」


 睨みを利かせ、「こちらの意見を聞く気がないご様子で?」続けようとしたが、そこで人間王様はふんと鼻を鳴らし腕を組んで座り、顎でカイラのことを操ろうとした。


 その瞬間カイラは、この国と国会する意味って本当にあるのだろうかと思っていた。

 それでも会議は続けないといけない。


「……続けますね。そのため事態が起こることも到底なかったのです。

 その全員には私(・)も(・)含まれております故、それをしないような獣人を慎重に面接をして採用しました。しかしその事態が本当に起きておりましたのなら、こちら側の全員はすぐに国会が終わった後ファランに帰還させていただきます。

 ただし、私は人間の方々より、こんな風にいつも報告を受けていました。

「土木の作業効率がかなり上がって助かっています!」

「郵便の配達が早くて頼もしいです」

「頭もいいし優しく教えてくださって、息子の成績がかなり上がりました!」

 など、とても評価の高い意見ばかりでございます。

 中には否定的な意見もありますが、その中には明らかな嘘、治せるわけがない容姿の偏見が紛れておりました。そちらは省略しますが、だいたい先ほどの報告の真逆と考えてください。


「獣人がうちの大事なものを壊したが、自腹で別のものを買って謝罪してくださった。非常にありがたい」という意見もありましたので、トラブルがあったとしても後の処遇や対応はよかったと思われます。 

 それでも、こちらの獣人が覆(・)せ(・)な(・)い(・)ほ(・)ど(・)の(・)ご迷惑をかけたのなら、先ほども言ったように国会が終わったら即帰還します。」


 こちらも少し長めに話したが、人間の王様は一つも聞き逃していなかった。


「そのミスが問題なんだってさっきから言っているはずですが?」


「承知しております。そのため、事実確認をするために3枚の手紙を拝見したいのです。私と王は、その9人の性格も事前のアンケートや心理調査で把握しております為、正誤も判断できると思います。」


「承知しました。おい!もってこい!」


 そういうと、一人の兵士がその部屋を飛び出して手紙を取りに行った。

 その間ずっと黙っては静かな圧力勝負をしていた。お互い睨み合うだけだが、ただ一つ変化があるとすれば、ロードロールが舌打ちを1回だけしたくらいだ。


 気に入らないことがあるなら言え、とも思ったが、今は国王との対談であった。

 危うく忘れるところであったな、危ない。


「持ってまいりました!」

「早く渡せ。私を待たせるのではない!」


 人間の王はその兵士の持ってきた長い巻き物を奪うと、いつもやっているかの如く慣れた手つきでその頭を叩いた。

 兵士は謝罪を繰り返しながら壁際に戻っていった。人間の王も手を痛そうに擦っていた。


「これだ。」


 流石に渡すときに投げることはしなかった。その手紙をもらうと、まず王様がそれに目を通した。細かい所までじっくりと見て吟味していた。


 その内容はかなり強引だと思えば強引だが、意外と理に叶っているところもあった。


 とある建設現場の依頼に獣人が派遣され、そこで会話の流れで種族についていろいろと流れができた。そこで出たのが、猿人はいるのかについてだ。これは人間から聞かれ、獣人の方は「ああ、人間とそんなに大差ないがね」と返したらしい。それでさすがに差別的じゃないか?ということになって獣人についてのアンケートに書かれていたという。


 カイラもそれに目を通したが、意外と真っ当な意見であったことに納得がいった。


 しかし同時に、たった一つの細かなミスであると思った。その後謝罪をしたとかならいいが、たぶんこの流れだとしていないのだろう。とカイラは察し、念のため聞いてみた。


「ええ、謝罪はありました。しかも獣人側からの正式な手紙で。ですが本人は納得しておらず、そこに「意図的な差別行為ではない」と書いてあったのです」

「それは、こちら側の視点の違いによって生じる問題かと思われます。」

「だぁ……どういうことだね?」


 王は急に声を上げるかと思いきや、急に思い立ったかのように落ち着き、冷静に質問をした。

 本当に冷静かどうかはわからないが。


「ええ。獣人間の会話では普通に行われている会話です。種族が広いため、似た者同士を同じ扱いをするようないじり、また自虐はは多々あります。お互いを抑えるために、それが当たり前なのです。それで移民を受け付けないと?」


 カイラはそう返し反撃すると、人間の王は待ってましたと言わんばかりに声を張り上げていった。


「しかし、獣人はこれまでに数多くの人間を侮辱するような会話をしては、傷つけてきましたという報告も上がっております。従業員とぶつかって押し飛ばしたり、持ち物を奪っては勝手に遊んだり、他にもいろいろと迷惑をかけられました。それは別々の場所でも、獣人全員がどこかしらでトラブルを起こしているのです。その点についても、どうお考えでしょうか?」


 人間の王はそういうと、にやっと歯を見せて笑った。


 カイラはこの時、人間の王は話を逸らそうとして本題に入らせないつもりであろうか。と。やけに一つ一つの話題が長いのもそうだが、かなり本題に触れようとすると必死に話を逸らして誤魔化しているようにしか見えなかった。


 そう思いながらも相手の話に合わせて国会を進めていく。後からでもいくらでも言えることだし。と、カイラは自分の心を落ち着かせ、冷静沈着に言葉を選んで並べていった。


 額には汗が垂れていた。


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