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猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
6章

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61 王城当日

 当日、王城はせわしなく動いていた。


 一部は馬車の手配、一部は衣装の手配、そしてまた一部は荷物や重要書類のチェックだ。


 しかしおれたちは、まだ粗探しをしていた。


 どんなにピカピカな水晶にも小さなヒビがあるように、やはりまだ指摘されかねないところが多々あった。


 それに、俺たちはいろいろ限界であったため。なかなかまとまらなかったのだ。


「ああ、それと……人間から見ると……うん、これは大丈夫そう」


 俺は、誤字脱字や人間に向けての言葉使い、こちらの主張の矛盾のなさを一言一句確認していた。


 その間、カイロと王様は楽しそうに話をしていた。


「接続詞一つでもミスがあったら触れてくる人たちばかりですからねぇ……」


 カイロがそう言うが、さすがに例えである。


「ほんとそれ。細かい判断ミスが大ごとに繋がるのはわかるが、そこまで気にするかね」


 王様がため息をはぁと1つはいた。私はそれに見直しをしながら返事をする。


「ええ。人間は気にしますよ。負を見ることに慣れているやつらが多いんです。」

「カイラがそういうんじゃなあ……念のため聞くが、実例は?」

「選挙で、民衆の不満をうまいこと指摘しては、同意をするようにしています。お金の問題だとか、理不尽な点だとか。それと立場的にもそういう社会の構造がよく見える立場にいるんです。だから必然的に負を見つけるのが得意になる。」

「社会の仕組みが悪いのか……そのうち崩壊するだろうな」

「ええ、だれか一人が発狂して表沙汰になりさえすれば、おそらくは信用がわずかに落ちて、それがきっかけになるでしょう。……正直それになるまで待てばいいのでは?その方が時間はかかりますが、楽ではあります。」

「いいや甘いね、それになる前に頼れるところを作るんだよ。国が崩壊したら失業者もいっぱい出るから、そいつらを平和に、やりがいのある仕事に就かせれば、一発で心をノックアウト!っていうわけさ。まぁそれがむずいんだがな。」

「流石です」


 カイロはまた話しについて行けないようなので、そこでまた私は黙って誤字脱字がないように目を隙間なく凝らした。


「王様って、管轄はどこまでなんですか?」

「うーん、結構広いぞ。騎士団もそうだし、国会もそうだし。唯一裁判、悪いやつらの良しあし具合を決める場だけは、リーダーがいないんで俺の管轄じゃあないかな」

「えっ!?裁判ってリーダーいないんですか!?」

「ああ、だれか一人がリーダーになっちゃうと、そいつが立場を利用しかねないだろう?他の二つなら、まぁする気はないが、独裁をしても国は成り立つ。冷酷に、負を指摘すればな。」

「エーテルの仕組みに似てますね」

「ああ、そうだ。まさにエーテルの事だよ。しかし裁判は、独裁をしてしまうと必ず反対意見が募って、崩壊してしまう。なんせ罪を犯した人たちは絶対に独立した意見をもっているからね。しかもそれがこちらにどう影響するかも考えずに。」

「なるほど!負の意見が集まる場だからこそ、まとまらないようにリーダーを分けているんですね」

「まぁ少し違うが、そういうことだ。……いい線指すじゃん」

「ありがたきお言葉です」

「だが、少し君は物事を知りすぎてしまうかもね」

「え?」

「あれだ。君は知りすぎた。ので死んでもらうってやつだ。わかりやすく言うと、正直すぎて悪い所にも平気で入り込んで自滅してしまう、っていう」

「あ……」


 カイロは、図星だったのか、口を開けてそのことを思い出してしまっていた。


 王様はこういうところに目がない。とにかく質問攻めするであろうと思って彼を気の毒に感じた。


「心当たりあるかい?」

「お恥ずかしながら……マンダさんを探しているときに、興味本位で敵の区域に入ってしまったことがあります。しばらくは隠れていたのですが、そこで見つかって、ドンさんを巻き込んでしまいましたね」

「大貢献じゃないか!素晴らしい。後でドンも褒めようかな」

「ええ、とっても喜ぶと喜びますよ」


 カイロは尻尾を振ってはっきりとわかりやすく喜んだ。


 それを見て初々しいような、かつての私を見ているような風に感じた。


「はっはっは、初々しいな、かわいいやつだ」


 王様はそのカイラを見てほほえましく思って、滅多には見せない優しい笑顔を見せた。


 私はそれを見て、マンダに少しだけ似ているところを感じた。普段はゆるゆるで油断するとすぐに変なことをするが、いざというときは勉強熱心で可愛くなる。そんなところだろうか。


 また書類に目をやると、誤字脱字がないか一字一句見る。


「カイラ!大丈夫そうか?」

「ええ、特に誤字脱字も、意味が不明なところも見当たらないと思います。あとはこれが言葉通り人間に伝わるか……」

「まぁそこは行き当たりばったりしかないと思うし、向こう言ってから気にしてもいいと思う」

「わかりました」



 そしてその確認作業も、ぴったり出掛ける時間に間に合った。


 最後の方が少し量が多くて焦ってしまったので、そこだけはさすがに王様とカイロに頼んでダブルチェックを行った。しかしそれでも大きなミスはなかったので、一旦は安心してもいいだろうということになった。



 正直私はそれでも不安はぬぐえなかった。


 やはり、彼女のことが頭から離れない。

 今は何をしているのだろうか。


 ただ今は、顔を見たかった。


 そして抱き着きたかった。いっぱい彼女が好きな私の手で顔を覆ったりして、いちゃいちゃしたい。


 いや、彼女を取り戻したい。


 絶対に、取り戻すんだ。



 マンダは()のものだ。

 確実に取り戻す。



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