60 前夜準備
たまに、コーヒーを飲みながらすることもあった。
「どうだ?そのコーヒーは」
「おいしいです。」
とカイロが言う。まだ緊張が抜けきっていないのか、まだ体が堅いようであった。
それと、頭を押さえて痛そうにしていた。あまりの情報量に脳が追い付かないのだろう。この情報の固まりを投げつけられては、普通はこうなるのだろうか。
しかしこの様子だと心配である。なので俺は一応ゲーシュさんの肩を叩いた。
するとそこで王様が同じことに気がついたのか、こちらを見て少し顔色をうかがっていた。
「少し疲れたことだろう。いったんお開きにするか?」
「いいえ。まだいけます。」
「私も一応、いけはします。」
私とカイロが反応した。ゲーシュさんはやはり頭痛がひどいらしく、そこで部屋から出ることになった。
「俺も少しだけならいける。問題の発見はそっちに任せてもいいか?」
「ええ、全然大丈夫です」
「わたくしも大丈夫でございます」
カイロがそう礼をしながら言うと、王様はご機嫌に手を上げて嬉しそうにしていた。
「おう、お嬢様みたいな口調だな」
「あっ!つい緊張してしまって……すみません」
「なぁに、大丈夫さ。まず貴族じゃないからな。言葉使いとか習わないし、というか習う余裕もないだろう。この制度も改善したいのだがな、かなり重要度が低いので後回しになってるのが現状だ。」
「な、なるほど……」
そう言ってカイロはコーヒーを一口飲む。王はそれを見て安心し、ソファーに寄りかかりながら横目で見て、あくびをしていた。
もう眠気も限界に近付いているのだろう。
やはり今日はもう無理をしない方がいいのではないか。と思ったが、欠伸を出した後に立ち上がって、地面を何回か蹴り、「あー」と言いながら体を揺らしていた。
地面に着くたびに体が揺れて、あーという言葉がリセットされる。
私もつられてあくびをすると、その後すぐに私の事を無言で手招きした。
そして後ろを向き、無言で腕を絡ませて、一気に持ち上げられた。
「ああああああ!!!」
「お前もしっかりしろぉぉおおおお!」
「はいぃぃぃぃぃいいいいいいいいいい!!」
腰が伸ばされ痛みで叫びながら、王様も一緒に叫んでは楽しそうに腰を伸ばした。
しばらくして降ろされると、今度は私の番だというように、腕を絡めたまま前かがみになった。
すると、想像以上に曲がった。
そして気が付けば、王様が前に吹っ飛んでいた。
うまく受け身を取ってもらったものの、明らかにその目は私を睨んでいた。
私は、冷や汗が止まらなくなり、その目から視線を逸らすことができなかった。
カイロもまずいと思ったのか、あわわと口に手を当てて青ざめていた。
王様は、ゆっくりと立ち上がり、舌を向いて肩を震わせた。
「……ぶっ」
怒られるかと思ったが、王様は笑った。
「ぶはははははははは!まさか飛ばされるとは!俺も体が鈍ったなぁ。あっはっは!」
「も、申し訳ございません!!」
俺は急いでその大笑いする王様にむかって地面に頭をこすりつけた。
「面を上げよ。」
「は」
顔を上げたその瞬間、思いっきり顔面を蹴られた。その精錬された力で吹っ飛ばされたが、何とか受け身を取って着地したが、頭痛が激しくてその場に倒れ込んでしまった。
「あぁっ!?」
カイロが驚いて悲鳴じみた声をあげる。
「王様!カイロは頭を切ってるんですよ!?傷口が開いてしまいます!」
「……え?!まじ?!」
大きくカイロが頷くと、王様は私の顔を見た。
私は平静を装い、すぐに立ち上がっては服に着いたほこりを払った。いくらか頭痛はするが、少し休めばまたもとに戻るはずだ。
「す、すまない。無責任で……少し座れ」
「は、はい」
また顔から血が垂れてるので、大丈夫とも言えないような状況で返答に迷ってしまった。
「……大丈夫か?顔の傷は」
「固まってたのが、流れてきただけなので、少しすれば大丈夫だと思います。」
「そうか……本当すまんかったな、さっきは」
「いえいえ、大した影響もありませんので、」
俺はそう言ってはぐらかしたが、その後何を出せばいいのかお互いわからずに、気まずい沈黙がしばらく続いた。
コーヒーを一口すするたびに、音が反響していくのが、とても気持ち悪かった。
それからも、夜な夜なずっと会議をして対策をした。
頭はずっとフル回転なため、たまに熱を出してしまったり、水分不足で倒れてしまうこともあった。
しかしカイロと王様と、トントロドン3兄弟もたまに手伝いに来てはよく楽しくしゃべっていた。
作戦は順調に進み、質問とそれの回答、実際例、社交辞令、礼儀など色々なことをやり、当日に向けての準備をした。
その期間、わずか3日であった。
あっという間に当日になった。




