59 事前対策
会議を終えて二日間、じっくりと相手に要求すること、どういう質問が来るかを想定すること、そして最悪の事態と最善の事態を考えた。
最悪の事態は、お互い納得いかず、戦争だ。
最善の事態は、マンダを取り返して条件をすべて飲んでもらい、こちらも納得の国交になることだ。
二日間、とにかく緊張感に押しつぶされそうであった。
私の力不足もあり、努力不足もあり、いろいろと忘れてしまっていることもあり、などなど、色々と節々突かれそうなところを考えるとキリがない。まさに節穴だらけだ。相手は納得するだろうか、しないだろうか。ずっと悩んでいた。
そこをカバーするのが、王様とゲーシュさんの役割だ。
王様は鋭く穴をついてきて、その穴を埋めるために私にアイデアを出させ、そこに王様自身のアイデアを補完する。
私も納得がいかないことはどんどんと質問しやすりがけをして、その意見の精度も考えていった。そこまで相手は心配していないのでは?と思うくらいに。
しかし、相手はズルする知識は豊富な腹黒王とその仲間だ。きっとそういう知識は豊富であろうと思う。
その内容をまとめた紙はなんと40枚にものぼった。通常なら十数枚程度で済んでしまうのだが、今回は王様も本気でいた。
一方依頼をした冒険者の人たちはというと、役割が終了したために、依頼料分をはらってあとは用済みなので帰ってもらった。しかしこの事件とかは、表沙汰には秘密でお願いしますとも言って、余分にお金を払っておいた。
のだが、事件のことについて何とか手伝いたいと皆言ってくれたので、護衛としてついて来てもらうことにした。カイロは知識があるため一応私たちの節穴つぶしを手伝っているが、ほとんど口出しはできずにいた。
節穴つぶしがやっと終わりかけてきたころ、少し空気は明るくなっていた。
気が付けば、こちらも敬語をいつの間にか外してしまっていた。
「もし怪我をしてしまったらどうする。保証するにも怪我は完治しない。そもそも人間はそれを恐れて離れ離れになったと古事記には書いていた。」
「それは小学校で教育として体の構造を学ぶようにして、あとは人間とかかわる仕事の人達向けにも講習会を開こう。」
「開くにしても教材はどうする。あと実際に人間の肌を体験しないと感覚的にもつかめないと思うのだが」
「ええ、えっと……豚獣人の肌なら感覚的にも分かりやすいんじゃないか?」
「豚獣人も近いっちゃ近いんだが、獣人なんだよな。人間の中から高額で雇って連れてくるか?普段の何倍もの値段で。」
「それもいい。だがお金の違いがある。こっちはルースだが相手は円だ。ちょっとだけ違うが、ややこしいことになる。」
「す、すごい」
「あぁ、カイロ、すまない。折角居てくれてるのに。」
「いや、めちゃくちゃ勉強になっています!むしろありがたいくらいに」
俺はついほっといてしまっていることに申し訳なくなってしまったが、むしろその方が本人は安心しているように見えた。やはり会話内容が難しかったか?
「そうか、ならこっちに集中する……獣人の時どうやってたかなーなれるまでに」
「頭のいい犬獣人と猫獣人が多いんだし、慣れるのもだいぶ早かっただろう。たぶん人間はソレ以上に遅いと思うんだが」
「いや、個人による。なれるのが早かったり遅かったりするんだ。それが人間の苦労するところ。」
「かなりまずい欠点だ。そこ突かれるだろう。」
急いで私はメモを取る。
間髪を入れずに王様がアイデアを出してくるので、ちゃんと耳も傾けておかなければならない。こうしていると昔の激務時代のことを思い出す。
「とりあえず、それも1ヶ月くらいは人間の教育機関で厳そのしさを教え、それと適性試験にも合格したものを入れるとしよう。おもに体じゃなくて頭の適性検査、つまり知能検査だ。」
「わかった。……よし。」
「書いたか?じゃあ次……」
さて、このような感じだ。これが1時間続くと、情報量はものすごいものになる。かなり私が前徹夜しまくっていたのかわかる気がする。
前はこんなに大変じゃなかったはずなのだが、今回は時間がない。こちら側が設定したのだが、こんなに不備がボロボロとでてくるとはおもわなかった。
さっきも出た仕事上の理不尽、力の解消。それに文化の違いの埋め方、もしもの場合どうするか、話す言葉をどうするか、闇市問題、その間の住民の不満解消にふさわしい人物など、数えるとキリがない。
砂のように、掘れば掘るほどに問題は出てくる。
すでに、6時間が経過していた。




