57 ロードロールだっ!2
その後も、その人は何度も部屋に入ってきては文句や物色をしはじめ、いいものがあったら残さずに取っていってしまう。
名前をロードロール・シュタインというらしい。さっきも聞いた通りヨシノワールさんの兄で、性格は傲慢、欲しいものは手に入れるまでどんな手を使ってでも取るらしい。
本当の悪というのはこういう人のことを言うのかね、とヨシノワールさんは小言を言っていた。
そのものを奪う性格はもう3年以上も続いているらしい。
最初はこの部屋も活気があり、他の部屋と同じく真っ白で豪華だったのが、今では白くもなんともない、物置部屋みたいな今の状況になったそう。
あの隠し部屋もすでに何回か開けられるのを試みられていたが、これまで一度も成功したことがないらしい。あの中に私の荷物が入っているのも、そのためだと話してくださった。
そしてロードロールさんを見て3回目のとき、すでに攫われてから2日が経過した。
今は、かなりやばい状況だ。
「隠し扉を開けろ」
と剣を持ってヨシノワールさんを脅すロードロールさんがいた。
だがヨシノワールさんは慣れたように顔を微動だにさせなかった。それどころか、反抗して瞬きもせずにらみつけている。ただ、無言で。
「……何だその目は。兄への尊敬を忘れたのか?」
それでも無言を貫くヨシノワールさん。私は殺されないかと心配になり部屋の隅っこでその光景を除くことしかできずにいた。
「うんとかすんとか言ってみたらどうだ!」
「すん」
「バカにしとんのかぁ!!」
顔を赤くして、今にも投げ飛ばしそうな勢いでヨシノワールの頭を振った。ここでふざけられる精神に私は肝を冷やしてしまった。
ヨシノワールさんが殺されてしまったら、私はどうなってしまうかわからなかったのだ。だがその場面では私は祈ることしかできなかった。
ヨシノワールさんは相当の時間を費やし、兄の機嫌取りをしていたが、一つ間違う程に兄の態度はより傲慢になる。ギリギリの攻防をしていた。
しかし、兄が優勢であって、ヨシノワールさんはピンチであった。
このままでは私は兄の奴隷になってしまう。頑張って、ヨシノワールさん!
「あそこは、何があっても絶対に開けないぞ。開けたければ反対側から爆破でもしてみるんだな」
「ぐ……」
少し後ろめいた。
反対側はおそらく兄の部屋であろう。
「ならば、お前を殺すまで。」
しかしそれが逆鱗に触れた。おそらくどちらも怒りが頂点になっていて、理性を失っていたのだろう。
そこからは、まさに兄弟げんかのようであった。どちらかが殴ったかと思えばまたどちらかが殴る。痛々しい傷を作り、血をそこら中にこぼしては、それをそっくりそのまま返す。時々歯が飛んだりすることもあったが、それでもそのケンカは止まらなかった。
その繰り返しであったが、一つだけ違う点があった。
力の差でヨシノワールさんが勝っているのだ。ただし、耐久の方で。
ヨシノワールさんはただ殴ったふりをしているだけであって、決して本気で殴っていることはなかった。本気で殴っているのは、兄、ロードロールの方だけだ。
普段から筋トレをしているのが功を奏したのだろう。
しかし、瞬く間にその事態は城へと広がって、兵士が急いで駆けつけてきた。
私はその一部始終をただベッドの陰から見ているしかなかった。
杖を使って反撃でもしようと持ってきていたが、それも足がすくんで狙いが定まらずに、ただ見ているしかなかった。
あまりにも無力で、ビビりだ。さっさと魔法を1発打ってしまえばいいのに。なんでできないんだ。と自分を責め立てる。あまり意味はなさなかった。
恐怖を打ち砕くことがどうしてもできなかった。
その点、ヨシノワールさんはとても強い。悪にも立ち向かっていけそうな気がするほどに。もし師匠とかについていくことになったら、あの人について行きたいと思った。
だがしかし、ヨシノワールさんは兵士に連れていかれてしまった。
無常に、槍で突かれながら仕方なくそちらに行ったという感じだった。
連れていかれるのを陰で見守ることもできなかった。
しかし、こう叫んでいた。
「マンダは殺さないでくれ!国が終わる!」と。
しかし聞く耳を持たないロードロールは、ヨシノワールさんが見えなくなるとすぐに探し始めた。
「出てこないと殺すぞ!」
こんな状況で出ていかない人を今すぐに紹介してほしいくらいだ。
その人はナイフをすぐに取り出し、眉頭をピクつかせて血眼で私の事を探した。
その姿を見ると、本気の殺意がうかがえる。それ以上厄介になることを避けて、私は目の前に出て行ってしまった。
びくびくと怯えたネズミのように。警戒して杖を向けながら。
ニヤニヤとにやにやと笑っているその顔がとても怖かった。うかつに動くと死ぬであろうと直感するほどだ。
目線があった瞬間、体中の鳥肌がすべて立ち上がった。
「男」は笑い始めた。
「ふふ、ふははは!」
それは気持ちの高鳴りか、嘲笑か、皮肉かはわからなかった。
「ふははははははあっはっははははっはははは!!」
だんだんとその声は大きくなる。そこで、勝利を確信した気持ちの高鳴りの笑顔だと確信した。笑うごとに体がその音圧を感じ取る。それに合わせて心臓の鼓動も合わさった。
「さぁ。さぁ、さぁ、さぁさぁさぁ!この部屋を爆破しようじゃないか!」
「え?」
兵士の一人が声を出してしまった。
男はすかさず、兵士の着ていた鎧の首の隙間にナイフを刺す。
「ぐあっ!!」
男は鎧の内に着ていたチェーン装備のおかげで喉を掻っ切られることはなかったが、そのあまりの恐怖に、おびえて動けなくなっていた。
「ちぃっ!うっとうしい!今度何か言ったら処刑だからな!処刑!」
兵士は無言で顔を持ち上げて、敬礼した。
「さて、今日からお前は俺のもんだ。」
あーはっはっは!とまた豪快に笑う……のかと思いきや、はぁ、と重い溜息を吐いた。
「……って思ったんだが、これからは王様のものになるらしい。」
「……え?」
私は目を見開いてしまった。




