54 ダッシュ!
「ほんとに……なんでいらっしゃるのですか!こんな街中に!裏市のやつらに狙われてたらどうするんです!?」
私は思わずそうどなってしまった。実際に私たちも襲われた経験があって、それを危惧したのだ。だが、王様は動揺すらしなかった。
「んなもん、大丈夫大丈夫!裏市のやつらも表立って攻撃してくるようなバカ集団じゃあるまいし。」
にゃはは!と王様は笑った。あまりにも平然と、友達に話しかけるようなノリで話してきているので、私はどう返答していいのかわからずに少し唸ってしまった。
「ええええ……度胸ありますね、っていうかすぐに城に行きましょう!抱えていきますよ!」
「おや?舐めないでもらえるかな?私はお前より速く走れるに決まっているではないか」
そういうと地面を足踏みし、タッタッタという軽快な音を出した。
私は終始戸惑っていたが、とりあえず城に戻るのが最優先だ、と思い王様に言った。
「あ、あとの話は城の中でしませんか!では!」
「そうだな、立ち話もなんだし、っておい!」
私はすぐにその場から離れたくなり、城へと走り出した。
それに続いて王様、カイロ、ドン、トロ、トン、ゲーシュさんの順番に走り出し、城へと向かった。
「走るの!?」
「はっやぁ!!俺も行かないと!」
「ちょ、ちょっとまって……」
城への道はなぜか人々が大通りの真ん中を避けて自動的にできていて、私はそこを先に走ってしまった。だがすぐに王様は追い抜かして、はるか彼方へと向かってしまった。
その通り過ぎたときの顔が、まるでかけっこをする子供のように満面の笑みで、本当に楽しそうにしていた。
王様のあんな顔は久々にみた。
根は子供であるのだろうか。
そしてあっという間に城に着いた。
「ちょ、はやい、まって!」
遅れてみんながやってきて、ゲーシュさんは最後はへばってしまって、舌を出して苦しそうな姿を皆に見られていた。これじゃあさっきお風呂に入ったのがパーになってしまったようだ。
俺たちが通り過ぎた後、ゆっくりとその市場は日常を取り戻していった。
「すまん、抱いて走ればよかった。」
「まず走るところだったのかよあそこは……まぁ王様が走ったしいいのかな?わからんが」
そう文句のように言っては、やっと城門の前に着いたゲーシュさんは膝に手を付けて肩で息をし始めた。王様はもうすでに待ちきれないのか城門の前で足を組んで寄り掛かっていた。
「しょうがないじゃん……カイラさんと王様が走り出してしまったんですから」
「歩いていけばいいじゃんか……はぁ、はぁ!きっつい!」
汗を服で拭って、手で顔を仰ぐ。
「久々にこんなに走りました。王様ほんとに速いですね」とカイラは王様に言う。
「だね。じゃあ早速中入ろうか」
そう王様は言うと、近くにいた兵士に門を開けてもらった。しかしそれは大きな門ではなく、横にある目立たない兵士専用の入り口であった。
「こっちの方がいいだろう」
私たちは王様に手招きされ、そのまま城の敷地内へと入っていった。
その時兵士があの事件のことを噂していたが、やはり噂は王宮内にまで広がっているようだ。
ああ、本当に心の底からドキドキするのはいったいいつぶりだろう。




