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猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
6章

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51 王の悩み2

 部屋からでてすぐ右に行くと、階段がありそこを降りていく。すると降りきったところで右に光の差す廊下が見えるので、そちらに向かうと、中庭が見えてきた。かなり広く、コンクリートで埋められている真ん中に、草が生い茂るは大きな噴水と池がある。私はいつも悩みごとをするときここに来るのだ。花のいい香りに草木のざわめきがまるで森のなかにいるかのように思う。実際あるのは低木だけだが。

 そして近くにあった横長の椅子に座り、深呼吸をした。

 そしてリラックスしてきた頃、いろいろと考えを巡らせた。

 現状を整理しよう。


1つ。マンダさんがさらわれた。カイラの戦犯の可能性が高い。

1つ。国交をするにしても、相手は話の伝わらない人間。他の優秀な翻訳人がいればいいのだが。

1つ。今はエーテルとファランは緊張関係にある。間違った場合戦争につながる可能性がある。

1つ。国交を完全拒否されたら、国民の飢餓が始まり、じきに戦争になる。

1つ。裏市の対処法

1つ。場内で人間の匂いがする。


 これくらいか。まだまだ考えれば山ほど出てくるが、結局はココに集結することだろう。

 少しマンダさんに焦点を置きすぎているか?それかまだまとめられる問題があるか?

 少し気にして、問題点を思い浮かべて考えてみても、詰めたらだいたいここに集結する。多分他にはないだろう。

 マンダを重視している理由には、国交の点で重要な問題につながるから。

 翻訳者は人間の方にも獣人にもたくさんいるが、やはりまだ経験も浅くスラングなども学んでいない翻訳家が多く、どうも自然に掴みずらく、よく齟齬が発生してしまう。

 ファラン内でもそうだ。獣人の中でもよく言葉に違いがあり、そこでカイラに翻訳を頼んだときにも齟齬が発生していた。

 特に人間との場合は、あいつはまだまだ人語は満足に話せない。

 一言一句が大事になってくる交流では、絶対にそういう齟齬は発生しない方がいいのだ。

 その点でマンダさんは優秀であった。完璧に内容を伝えて、まったく摩擦のない会話をすることができる。カイラが惚れるのもわかる。

 ああ、それがあの国はなんだ。マンダを奴隷にしてしまうなんて。裏市が悪いのもそうだが、あっちの国の王族もよく参加している人もいるらしいし、ファランでやったら奴隷なんか買ったら一瞬で町中の新聞に載るであろう。

 それも恐らく規制して話題にもならないようにしているのだろうか。

 先代はそんなこともなかったのだがな……いよいよあの国も崩壊の危機、というところだろう。本当に醜いことだ。

 ……あれ、考えが逸れてしまった。私としたことが。

 一体どうするか……もう国交辞めて戦争にしてしまうか?手っ取り早いし、人間の軍と獣人の軍なら獣人が勝つであろう。相手の戦力がはっきりわからないから何とも言えないが。

 いやぁ、そうすると老獣人たちがチャンスだと思って発狂し始めて収集つかなくなるし、まず戦争に集中して裏市のことも疎かになってしまうかもしれない。

 そうなったら国が中から滅びかねない。戦争は避けたほうがいいか……。

 裏市のやつらもあっちにおびき寄せられるかと思ったが、それも不可能になったかなぁ……。

 だめだ、いろいろと根本から問題が重なりすぎている。

 いくら考えても収拾がつかない!元を辿ってもとにかく芋ずる式に出てくる問題が山積みだ!もう嫌になる!


 とりあえず国交はこれまでと同じように話し合いで続けることにするしかないな、今は。

 いっそのこと次の話し合いで脅すか。……いいや待て待て、魔が差してしまった。だめだ。抑えろ。

 人間の国と同じ手法でやるのは最終手段だ。今度の国交は……悲しいことに最終手段になるかもしれないが、今はそんなことは考えないでおこう。もっと頭がパンクするだけだ。

 私は頭を抱えた。


 その瞬間、誰かが私の後ろに尾行しているような感覚がした。

 誰だろうと振り返るも、だれもいない。かなりはっきりと感じたので相当近いところにいる。

 考え事が多いって言うのに、余計なことをしないでほしい。今は少しイライラているのだ。

「誰だ!用事があるなら尾行してないで直接言ってくれ!」

 そう強い口調で語り掛けるが、もちろん返事はない。たぶん相手はすでにそそくさと逃げている。

 気のせいかと思い散歩を続けようとすると、人間の匂いがした。


 人間の匂い……?


 その瞬間執事からの忠告が頭の中で繰り返される。

 私はすぐにその陰があった場所に走り、だれかいないかと考えて早足になった。

 しかしそこにはだれもいなかった。ただ、顔を近づけて嗅いでみると人間の匂いが強く残っていた。特有の甘い皮の匂い。

 そしてその匂いの中に、猫獣人の柑橘系のような匂いも若干入っているような気がした。

 この匂いは……厨房の誰かだろうか。


 では自室に帰って、猫獣人を集めようではないか。

 まずはこの問題が先か……いや、どうでもいいか。


 はぁ。道のりは長いな。


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