46 木の実と毒
ちょっと汚いはなしになってもうた
その後出すもの出した私は、非常にすっきりした様子で帰ってきた。
だがしかし、拭くものがなかった。なので一旦持っていないかメンバーに仕方なく確認しに行くしかなかった。案の定臭い。
「臭いぞ」「くっせ!」「尻くらい拭けよ」
「仕方ないだろ、紙ないんだし」
「葉っぱで拭けばいいじゃないか。」
「小さいやつしかなかったんだ」
言った通り、ほぼほぼ低木や雑草ばかりで、ハスの葉などの大きなものはなかった。それに砂や泥ばかりで、石も小さい粒のようなものしかなかった。
「石とか木の枝とかは?」
「あ、枝でいいか。」
たしかに枝なら形としてすごくはまるし、低木のものを使えばさっきの状況でも行ける。病気にかかったときはその時で対処しよう。
「いいのかよ!たくましいな!痛くねぇの?」
「痛いに決まってる。でも拭かないよりましだ!これ以上(自主規制)の話やめ!」
私はその場で手を横に振り上げてから、すぐにした箇所へ向かった。さすがにこんなに堂々と話をしていると恥ずかしくなるものだ。仕方のないことなのだが。
……動けるんなら大きな葉っぱでも探したらよかったのだが、今考えても遅いか。
それでも、とりあえず腹ごしらえはできたので、私は出すものを出したら元気がもりもり出てきた。
「んじゃあそろそろ行くか?朝早いが。」
「ちょっと待ってくれ。こっちの飯も食わせてくれ。行くのはそれからだ。今そっち行ってる間にカイロさんが安全な獲物取ってくるらしいから。」
「そうなのか。カイロさんめっちゃ器用だな」
「あの人ギルドでも有名な冒険者なんですよ。」
そこに入ってきたのはトロであった。そういえばいたのを全く忘れていた。
「トロ!どこに行ってたんだ?」
「ごめんね急に抜けちゃって。木の上から周りになんかないか監視してた。深い森の中だからモンスターがうじゃうじゃいるだけだ。あ、この周りにはいないから安心して。」
ゆっくりとはっきり喋っているトロは、少し疲れている様子であった。相当動き回っているのがうかがえて、なんとも頼れるものだと私は思った。
3人も「よかった。」とそれぞれ安堵していた。
「ところで、なんであいつは熊食べているの?」
「狩ってきたんだって。」
私が答えた。それを聞いてトロは関心していた。
「……あのツノクマをか?そりゃすごいな、トン自慢の兄弟だな。」
「うん、力持ちでとても優しいけど、バカなのが難点」
そういったドンをトロがボカっと殴った。トロの力が強いのがドンの頭はすぐに赤くなっていた。
「そんなこというな、バカでも正直者で真面目だ。根っからのいいやつだよ。」
私は「そうだな。」と半笑いで言った。
「カイラさん大丈夫なのか?」
「まだクラクラするから大丈夫じゃないかも。ちょっと休むよ。」
そういうとドンが木の実を渡してきた。おそらく食えと言うことなのであろうが、
「ほれ、ゲーシュさんとカイロさんと3人でとってきたんだ。たぶん体にいいやつ。」
「たんまりあるから、たくさん食えよ。」
「あ、ありがとう」
ゲーシュさんも後ろから、服で袋を作りその中にあった木の実を見せてきた。
ナッツや金芽(銀杏)、ブルーベリー、ドライブ(ブドウのような実)など色々な種類がごちゃまぜに入っていた。これだけの木の実があれば——さっきの熊のこともあるので量は食べられないが——私はお腹いっぱいになるだろうと、喜んでいただいた。
「毒はないから安心して食べてな。」ゲーシュさんが半笑いでそう言ってきた。
「ああ、助かるよ」俺も釣られてはははと愛想笑いをした。
そしてドライブの実を一つ取り、それを食べた瞬間に、突然涙が出てきた。
「なに泣いてんだ?」
「わからん、だが大丈夫だ。なんでもない」
自分でもわけがわからない涙であったため、拭きとりながらも木の実を食べ続けた。
甘いものや苦いもの、ピリッと来るものや渋い味のするものまで、旨い不味い関係なく、勢いよく口に放り込んだ。
やがてその間に血が止まっていて、貧血もいろんなものを食べたことによって、めまいも頭痛も改善してきた。
「これ食べたら動けるかも」
俺は少しだけ元気になったことを表すために少し声をわざとらしく張り上げた。
「もう行けるのか、回復早いな!」
ゲーシュさんが驚き、また笑いながらそう言う。そのあと、あくびをして立ち上がった。
「だが、まだドンとカイラさん以外何も食べてないから、狩ってきてもいいか?」
「ああ、わかった、ここで待ってるよ。」
そういうとすぐに、走ってまた森の中へと行ってしまった。私はもっと話したいなと思いながらその姿を見送った。
後ろには血まみれの手を服で拭きとっているトンがいた。
改めてみると、なんだかトンがクマに見えてくる。
しばらく見つめていると、トンが「なんですが?」と聞いてきた。
「なんでもない。」と私はこたえた。少し背筋が震えた。




