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猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
5章

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51 決行!3 猫

 一体私の足に何をさせられたのかもすぐにわかった。

 鋭く尖らせた石を投げられたのだ。


 私が倒れると、すぐ横にその投げたであろうとがった石が見えた。


 それはまるで糸を結ぶ針のように細い。


 その後一旦は落ち着いたものの、馬車の中に彼女とドンと一緒に乗っていたもう一つあった檻がひとりでに激しく揺れる。


 それは彼女が入っていたものとも、ドンが入っていたものとも違っていた。


 かけてあった布が取れ、その黒く硬い鉄の塊が姿をあらわした。ビスで固定されていて、よほど大切なものなのだろう。


 中に何かいるのであろうか。


 私は身構えていつでも対処ができるようにした。

 数回檻が動くと、檻の角にあるネジがだんだんと緩んでいく。


 何という力だ。


「こわっ!カイロさん!なんか止める方法とかありません?」

「あるにはあるけど、耐えられないかもしれない。ここは一時撤退を……」


 言い終えてその場から皆去ろうとしたその時であった。


 何か、何かとても素早いものがカイロの腕をもぎ取ろうとして、腕に大きな傷を作った。


 傷口は驚くほどきれいに割れていて、そこから血が出るまでの数秒、時間が止まった。


 ぎゃあぎゃあと複数の悲鳴が聞こえてくる。


 檻の中の何かが彼の腕を光のような速度で、皮膚をちぎったのを見て、彼女が叫んでいた。

 しかもその切ったものはすごく鋭いものだと見た。


 すぐにその何かは空中に姿を現した。


 それは人でもなく獣人でもなく、風を具現化したような白い「モヤ」であった。


 そのモヤの中を緑の葉っぱが渦巻いている。それに特徴的なのが、その霧の中に白い球体のものがあった。


 なんだあれは、と不思議に思ってずっと見ていた。だが動く様子もあまりない。

 カイロさんとゲーシュさん、そして檻から出てきたドンが飛んだ腕の治療に専念する。

 幸い近くにあったので、それを持ってきて傷口に近づける。ドンが緑の魔法を出しているが、回復魔法であろうか。


 そちらに一瞬だけ目を向けた瞬間、トンの周りにいきなり竜巻が起こった。


「わぁああぁぁぁっ!」と彼女が叫ぶ声が聞こえる。


 私はその時あまりに竜巻の勢いが強いために顔を覆ってしまっていたのだ。飛ばされそうなので急いで後ろに飛んで離れる。


「マンダ!」


 その離れたところから見た光景は、とても恐ろしいものであった。


 その霧が出した葉っぱが高速回転をすることにより竜巻を自動で発生させていた。

 地面には細い切れ目ができていて、さっきの軽い何かを使っているのにはすぐ気が付いた。


 トンもそこで持ち上げられてしまって、そのまま空中に放り出された。


 トロはカイロさんたちをシールドで守っている。葉っぱも貫通しない強いシールドであるが、一度も油断ができないような状況であった。


 霧なら私の攻撃手段は聞かないだろうし、どうするか?と霧を睨みつけながら悩んでいると、マンダが入っている檻が空中に浮かんで行った。

 私も飛ばされ、なんとか風を利用してマンダの檻につかまる。


「今出すからな!!」


 このままでは連れ去られてしまう!と焦り、檻の柱を開こうと全力で引っぱった。だがしかし、檻はびくともしない。


 宙に浮いているうちに、だんだんと霧の本体に近づいていく。このままでは本当に捕まってしまう。とにかくその一心で火事場の馬鹿力を出して檻を開こうとしたが、まだ無理そうであった。


 力を込めて引っ張っていると、下から何か硬いものが竜巻に巻き込まれたようで、私の頭に直撃した。


 檻のカギだ。しかも尖がった場所が当たったようで、もろに血が出た。

 これを使えば、開けられる!


「カイラ!」


 小さい声でマンダの声が聞こえ、何とか意識を保ったが、肝心な体が動かずに竜巻の外に放り出されてしまった。


 宙に放り出され、無気力に落ちていく。

 その高さは家ほどにもなり、頭から落ちたら確実に死ぬ、もしくは骨が折れるであろう。


 浮遊感を強く感じ、気持ち悪くなる。不思議と死ぬ恐怖はなかった。


 マンダは逆に竜巻に風の魔法で持ち上げられ、霧に連れ去られてしまった。

 その近くに杖がぷかぷかと水に浮いているようについていった。


 私はそれを見ては無気力に落ちていく。


「カイラさん!!!」


 地面の方から叫び声が聞こえる。頭があまり働かず、その時は誰だか分らなかった。


 ゆっくりと地面が近づいているのが見える。竜巻はもう威力を失い強い風となって私に当たってきた。その風が、一瞬だが心地よいと感じて幸福感を感じた。


 その瞬間周りが白く見え、頭の中を写真が流れていく。


 あまり記憶にないシーンもあるが、これは走馬灯であるとすぐに気づいた。目を瞑り、完全に意識を失うまでその光景は一瞬で通りすぎていった。


 思い出も、別れも。


 悔しい。とにかく悔しかった。


 なんて情けない男なんだ。と「俺」は最後にそう思った。


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