41 決行!2 猫
ちょうどそいつがこちらにもう1本打とうとしている時に、トンが後ろから接近してきた。
そして軽々とそいつを蹴り飛ばすと、トンは檻を抱えてまた森の中へと消えていった。おそらく木陰の後ろに隠れているのだろう。
「な、なに……?」
檻の中にいる彼女の声が遠くでも聞こえる。
確実にマンダの声であり、そこで私は歓喜しそうになったが、そちらの近くに弓兵がトンに向けて1発打とうとしている姿もあった。
さすがにあそこでは私も食い止めることができない。
しかも矢が打たれたら彼女も死んでしまう可能性がある。それだけは嫌だ。
「俺が行く!」
耳栓から声がする。
そこで、勇気を出したゲーシュさんがその弓兵に突撃していった。
「うおらぁぁぁぁっ!」
弓を引ききり、今にも打ちそうなタイミングで体当たりし、どうにか軌道をそらすことに成功した。
「トン!離れろ!!」
私はありったけの声で叫ぶ。
トンは声にすぐ気づき檻を持って素早く移動をしたが、ギリギリ爆発に巻き込まれて前に倒れ、檻を倒してしまった。
私はその一連の間に弓兵の方に急ぎ、そいつの武器を奪ってから顎を蹴り飛ばして気絶させた。
ゲーシュさんが弓兵と一緒に倒れていた。肩を使って息をしていて、足も震えている。
「やったか?」
「……たぶん。」
「おいおいたぶんかよ!しっかり殺しておいた方がいいんじゃあないのか?」
「さすがに殺したらこちらの立場も崩れるんだ。」
「こちらが死んで本末転倒ってなるよりかはマシだろうが……っておい!後ろ!」
ゲーシュさんとつかの間の休憩を楽しんでいると、後ろを急に指差して顔を青ざめさせた。
すぐに後ろを向くがその時にはすでに遅かったようで、後ろにさっき舌を切ったはずの男がいた。
「ああああああ!」
雄たけびを上げながら私の腹を狙って剣を突き立ててくる。
すぐに横に逸れてそれを何とか避けたものの、今度はその剣の鞘がもう片手に持たれているのに気づかずに、それで胸下の凹みを突かれてしまった。
内臓が押され、強制的に息が出て、また吐き気を強く感じてしまった。
「ぐふぅっ!」
突いた瞬間、占めた!とでも言う様にその男はにやっと笑った。
私は後ろに倒れ、剣を突き立てられる。
そのまっすぐな、月明かりに照らされて輝いているいる剣筋と、その不気味に大きな鎧は、私に恐怖と絶望を強く突き付けた。
やはり鍛え上げられているだけある。
強い。
私はここで死ぬのだろうか。とも思わせられるほどであった。
「ほのしゅうしんふせいか!」
舌が動かないのかなんといっているのかわからなかった。その後すぐに剣を横に持ち、首を狙い剣を振り下ろした。
その時だった。
剣筋が見えなくなったとたん、俺の顔に何か青くて薄く、堅いものが出てきた。
シールドだ。
「ドン!」
檻から手を伸ばしていたドンは馬車が壊されたときに、檻ごと地面に落下した。
だが大破した影響で杖なども落ちてきたが、ギリギリ手が届かないところに堕ちた。そこで隙をついたトロが隣に杖を飛ばした。
がっしりと自分の杖を掴み、その男、ではなく私に向けて杖を向けて、こう唱えた。
「〈シールド〉!」
その声はやけに大きく聞こえた。その瞬間、私の顔と首の周りに青い板が出現した、ということだ。
「なに……」
剣が途中で止まり、男は驚いて剣を自分のもとに引こうとした。
「〈ウェーブ〉!」
また同じくドンの声が聞こえる。ウェーブは強い風を発生させる魔法だ。
男はそれに殴られたように吹き飛ばされ、崖の壁に激しく背中をぶつける。がはぁつ!と大きなうめき声が聞こえて、ぐったりと男は座り込んで気絶してしまった。
シールドもそれと同時に粉になり宙に舞っていった。
「ドン!」とトロが駆け寄って言う。
トンも同じくこちらに駆け寄ろうとしたが、彼女の檻を傷つけないように集中をしているらしかった。
もともとの依頼は彼女の奪還であることをそこで私は思い出した。そのことをドンは忘れていなかったようで、自分が恥ずかしくなり、同時に感謝も送った。
やがて彼女の檻がこちらに持ってこられる。
「カイラ!」
「マンダ!」
その瞬間二人同時に叫んだ。
お互いの顔をやっと見ることができて、嬉しさがこみあげ、出さずにはいられないのであった。
彼女も俺も、涙がわき出てきていた。
だがそこで油断をした。
突如として足に激痛が走る。
かかとが切断されたのだ。直後に「よっしゃあ!」と喜びに満ちた声が遠くから聞こえる。どうやらさっき気絶させたはずの弓兵のようだ、と声からすぐにわかった。




