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猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
4章

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45 報告 猫


 一方カイラは、まだどうするか悩んでいた。


 このまま証拠が見つかっても、おそらく相手はでかい組織だ。


 そんな人たちに真っ向から突っ込んでいったら、さすがに私も捕まってしまうだろう。もしかしたら一瞬でおが屑になってしまうではないか。


 そんなことを考えながら町中を探し回り、あちこちに取材しまくったが、どうも事件に関して口を紡ぐ人はなかなかいなかった。中には触れたくない忌事のような態度を示して、むしろ私たちが触れていることに怒ってくるような人まで現れた。


 夕暮れになるまで取材をしたが、まったくわからなかった。


「本当にどうする?」

「どうしような」


 そして担当地域をすべて終えて夕方ごろ、何も手掛かりがないまま時間が過ぎてしまったことへの悔しさと、単純にこの村が広くて歩いているだけで疲れるので、またゲーシュさんと合流し。近くのカフェで休憩をしている最中であった。


 そこはとてもコーヒーがうまい店であり、すでに私は2杯目に進んでいたのであった。

 だがとにかく焦りが募り、碌に考えることもできない。体が震えそうだ。


「……大丈夫か?」

「うん、たぶん……とりあえずは。」

「心配だし、焦るよな。」


 そう庇ってくれたが、特に励ましの効果はなかった。


 むしろイライラしていて、焦らされているように思ってしまった。だがここで怒っても何か変わるわけでもない。とにかく落ち着いていかないと、見つかるものも見つからないぞ。と自分を奮い立たせる。


 だがそれでも、作戦はなかなか思い浮かばないものだ。


「ここのコーヒーうまいよな、苦いけど香りがとてもいい。いい豆を使っているらしいぞ。」

「そうなのか。」

「ん……それにさ、リラックスするよな、ほら。嗅いでごらんよ。その万能な鼻でさ?」

「めんどい」

「んじゃ飲んじゃうぞ、冷める前に」

「それはだめだ。ってあっつ!!」


 ゲーシュさんにコップを取られそうになり、手のひらでコップ全体を包むように持ってしまって、やけどするような熱さを感じて思わず叫んでしまった。


 周りかの視線を強く感じて恥ずかしくなった。

 ゲーシュさんはしめた、と言うようににやにやしていた。


「猫舌だから飲めないのか」

「そうだよ」


 その後ゆっくりと飲んで、コーヒーを飲み終えた後、その時は突然とやって来た。


「証拠が確定し、彼女の行方がわかりました。」

 そう連絡が来たのは、またカイロからであった。ドンも一緒なようだ。


 その後の話を聞いていくと、証拠というのは、街中の人の発言と、現場の状況からの心理による動きの予測らしい。一体なにをいってるんだ?と思っていたら、獣人の無意識的な行動パターンがどうやらあるらしい。


「とりあえず、今は「無意識でついやっちゃう行動のこと」を心理だと思っておいてください。急な事実でしょうが、とりあえず今は受け取ってもらって。」


 マイクの向こうでカイロがそう言った。受け取ってほしいのはわかったが、いざ言われると少し戸惑ってしまうものだ。それに彼女の好きそうな内容である。


 その物音から他の人の会話やお皿の音がするので、私たちとは別のカフェ、もしくはレストランにいるようであった。


 ドンがその証拠について話し始めた。


「まず、あの彼女さんを攫った疑惑のゾウについてなのですが、運営していた宝石店は、お客をだまして金を取り、所属しているグループのお金にしている詐欺師だ。そのグループの売り物として、彼女は連れ去られたと考えて間違いないと思う。それは……あ、ちょっと待って。」


 そのタイミングで通話が切れ、数秒すると戻ってきた。


「ごめん、頼んだコーヒーが来てた。これ飲まないと頭が動かないんだ……」


 同じだ。とシンパシーを感じた。あとで普段何をしているか聞いておこう。

 ドンがその説明をした。


「えと、俺が続ける。

お店の裏路地を覗いたら、明らか毛布で何か隠されているような影があり、近くで見ることはできなかったけど、頭が明らか小さくて、おそらくお酒の瓶かジュースの瓶かわからないが、そんな感じの細長い大きな瓶みたいな形だった。

 もしかしたらその欠片を使っているのかもしれないな。その宝石には。

 そこで、市場のことを思い出してほしい。売り場にはジュースはあったが、そこに瓶の容れ物はなく、牛や豚の皮などで作られた袋みたいな、なんていうか忘れたが、入れものばっかじゃあなかったか?」


 思い出してみると、この町に瓶はなく、ファランの売り場には瓶があったような気がする。と思い出した。


「あぁ、わかる。袋みたいなあれか。」

「そう。あっそうそう、水袋っていうんだけど。つまり、輸入をしない限り瓶はこの町にあるはずがないんだ。それにそんな珍しいものを、この町で売り物にしないのも怪しい。宝石よりも量が売れて黒字になるんじゃないか?って思うくらいに量はあったし。」


 そこで数秒沈黙した。コーヒーをすする音が聞こえてきたので、おそらく区切りがついたのだろう。

「そう、そしたら……なんだっけ?」


「その瓶を割って宝石みたく加工しているやつがいるんじゃないか、って話なのにそこまで外回りするか?」


 少し怒っているようである。声のハリも最初の頃に戻っていて、コーヒーを飲んで元気を取り戻したようだ。


「俺話すの下手なんだよ……ごめんよ。」

「わかった。とりあえず、さっきの通りだ。いろいろとドンさんが話したが、これも事実だ。

 そして、……瓶のやつも言ったか。とにかくあのゾウは間違いなく連れ去った犯人だって言うことだ。こちらからは以上。」


 そういい終えるとぷつんと話が切れた。その次に話そうとする人はいなかった。


 話が終わった瞬間、音量がでかかったのか、一気に周りが静かに感じた。人も少ないので静かなのである。


 魔が差して、この店の人気のなさが見えた気がした。想像しているより客はいるのだが、ほぼほぼ一人客が多いためだろう。


 それかさっきまでいた団体の客が帰ったか。


「なるほど……」


 そうゲーシュさんが言った。何かあの話を聞いて納得することがあったのだろうか。だとしたらその発想力に脱帽だ。

 少し考えて話を整理したあと、ゲーシュさんが口を開いた。


「なるほど。あいつらがいるのはあそこか。ホテル近くのカフェ、ばーじぇんしー!ファランにもあってすっげーコーヒーが濃かったところだ!」

「そっちかい」


 私はその嬉しそうなゲーシュさんを見て、苦笑いしながら突っ込んだ。


 そんなこと考えている場合か、と思いたかったが、なぜか怒りは湧かないでいた。

 むしろ面白いと思って笑ってしまった。ゲーシュさんらしいというかなんと言うか。


「ナイス突っ込み。ちょっとは気分も戻ってきたようだな。」

「まだまだ心配だけどね。」


 そう聞いて何も意味のないグーパンチを宙に軽く放った。


 現状報告を聞いて調査が進んでいることに安心しているのか、ゲーシュさんが励ましてくれ

ていてそれがうれしかったのかはわからない。その行為により、なんとなく緊張の糸が少しほぐれたような気がして、肩が楽になった。


 それから頭が回るようになったのか、急にある予感がした。


 ……だが気のせいだろう。あまり気にすることはないか。



 だが、その嫌な予感というのは当たってしまうのだった。

 もう手遅れになる予感は。


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