29 ギルドカード
そのカードの表面は、ピザのように端っこが額縁のように飛び出ている。そこに青い光が出てきた。そこに私の名前と、顔写真と、カッコで囲まれたスキルとステータスがあった。
しばらく眺めている私に猫獣人が笑顔で説明をした。
「それは冒険者が使われるギルドカードです。今回の検査でできたもので、数に限りがあるので大切に持っていてください。いろんなところで証明書にもなりますよ」
「なるほど、ありがとうございます」
「それでは失礼しました」
私はそのカードを置いて挨拶をするとそのまま猫獣人は去っていった。
ドアがパタリと閉じた瞬間にじっと彼をにらむ。もう1回さっき取ってきたカードをしっかり見ると、数値は000と明らか無い数値が書かれていた。
彼は誤魔化すようにしていた。
「……すまん。」
その私の視線を感じて身震いをし、素直に謝ってきた。すぐに私は満面の笑みで返した。
「大丈夫だよ。見た目同じだし勘違いしやすいし、ね」
励ましのことばをかけると、今度は少しずつ笑顔になっていった。 安心しているのだろうか。
またカードを見てみると、すぐに彼も興味ありげに覗き込んできた。きちんと数字がバラバラではあるが、ほとんどはあのパネルと同じものであり、違うところもなさそうだ。またそれに触ると、その触った部分の詳細が出てくる。HPならHPの残量など。MPなら残量や使った魔法までわかるとか。スキルなどの画面に収まらないほど多いものは画面を上になぞると下に進んでいく。
それを見て私は彼と一緒に関心して、しばらく無言でいじっていた。
しばらくすると、彼が「もっとみたい」と言ってそのカードを取っていった。私は快く渡した。
「それにしても、獣人国で冒険者デビューした人間か。初じゃないか?……あ、それにこりゃあ人間と交流することができるのを証明するチャンスじゃないか?」
「あ、そういえばそうだった」
「そうだったって、まさか観光気分でいるわけじゃないよな?」
「観光気分だった!ごめんて!」
ごまかすように舌を出して手を合わせて、その後ウインクをし、許しを請う。すぐに鼻息で大きな返事が返ってきた。呆れのため息だろうが許してくれたのだろうということにする。
王様の話を聞きに行くときまでは覚えていたのだ。これは本当である。
私たちの本来の目的をここで再度思い出すと、王様との面会と、獣人国での暮らしを観察し、その様子を人間の王様に届けるというものだった。
決して王様から依頼はされてないが、私のこの仕事の使命である。……いつでも彼の気の配り方は尊敬するしかないな、と改めて感じさせられた。
「でもこれ持っていって怒られたりしないかな?」
国に持ち込んで、「まさかお前獣人側についたのか!?」などと疑われたら私の命はお陀仏になりかねないところまで行ってしまう。
想像するだけで恐ろしくなった。
すると彼が、記憶を辿っているのか、顎を抱えて黙り込んだ。私がおとなしく待っていると、何か思い出したようで、すらすらと話し始めた。
「たしか、王様は「人間に影響のないものなら」持ってきてもいいって言ってなかったか?」
私はそれを聞いて思い出し、うんうんとうなづく。確かにそんなことも、ファランとのいつかの交流で言っていたはず。
「このギルドカードには何もエーテルに影響はないし、それどころかファランの技術やイメージを人間に
布教できる時じゃないか!?」
「確かに!天才か!」
私は驚きで目が大きく開く。
彼の言っている通りに、エーテルにはむしろ得になりえる者を手に入れたのだ。これは確実に王様に喜んでいただける交渉材料である。私たちは気分が有頂天に達した。それにまるでさっきまで落ち込んでいたのが嘘のように流暢にしゃべる彼を見て、私はおかしく思って軽い笑いが出てしまった。
正直彼がずっと嘆いて長文を吐き捨てたときに何を言っているか一言くらいしか覚えていないが、まぁこれは言わないでおこう。
私は彼からカードを取り返し、目を凝らした。そのスキルというところを押すと、たくさんの<>かっこで囲まれた文字列があった。勉強家、知能補助、操作……色々漢字ばかりで見にくいのが多少の難点だった。
その画面を左から右に指を流すと、最初の画面に戻った。
「でもこれ……どんな仕組みなんだろ」
画面に触るだけで検知する仕組みはどうなっているのだろう。できたとしてもこんな小さな薄いカードにどうやっていれているのだろうか。色々と疑問が湧き出ては消えていく。
物体の解析は私の専門業ではないので特に興味は湧かない。だがなぜかこのカードだけは気になる。
彼が息を整えると、「またみたいところがあるからカードを見せてくれないか?」と言ってきた。
私はすぐに承諾をした。差し出すとすぐに画面をなぞり始めた。
……いったい何をしているんだと怪しく思い、彼の手から目を離さなかった。
上下に指を払ったり、画面を押したり、いろいろなところをくまなく見ている。カードに目を近づけて細かいところまでしっかりと見ていた。ほんとにどこか気になったところでもあったのだろうか。
すぐに返してくれたが、彼は少しくもった表情をした。
「どうしたの?」
「……なんでこんなにスキルが多いんだろうか。って考えてまた怖くなってきた」
彼はスキルの欄を開いたままカードを返していた。その数は36個あるのだが、あまりスキルというものには関わりがなかったので、多いのか少ないのかわからなかった。彼の反応から見るに、普通のスキル数からは逸脱しているのだろう。
その後考えても考えてもわからなかったため、後回しになった。
「あ、そういえば、カイラのギルドカードは?」
たしかギルドカードは必須だったはずであった。だが彼と出会ってから、初対面の時以外には一度しかそのカードを見たことがない。彼のはいったいどこにあるのだろう。
「家にあるよ。私は顔で通るから必要がないんだ。特権というやつだよ」
彼は自慢げに胸を張った。……すっかり元のカイラに戻ったようで安心して、くすりと笑った。
しかし彼にそっくりな人がいたら一体どうするのだろうか。
そう不思議に思ったが、静かに口をつぐんだ。




