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29 後悔

私は商店街を見に行くことにした。来る途中で気になっていたところを見つけ、そこに見に行った。すでに日が沈み始めていて辺りが少しずつ薄暗くなってきているが、暗い所からは来たときも見た暖かい明かりが輝き始めている。

そこで、そういえば私はファランで何も買っていないことをそこで思い出した。今手に持っているのは……隠し持っている2モアだけ。——2万円くらい——でもそんくらいなら安い髪飾り程度なら買えるだろう。このお金は彼とは内緒のお金である。ホテル代に使うかと思ったが、無事使われずに済んだのは何かのお告げであろうか。

だがその前に、大問題が起きた。

私はとある宝石が置いてある屋台の前についた。

「こんにちは~」

「こんにてぇ、なぁされきました?」

「あ、え?」

 なんとファランとは少し違う、訛りの強い言語をその町の人達は話していたのだ。

 さあてこまった、ファランの言語ばかりやっていた私は他の言語はまだ習得していなかったのだ。それに加えて最近ファランの言葉しかしゃべってないため、聞いたことある言葉も余計に忘れている。

 ここからはとても大変であった。なんとか最初の売店は指差しだけでやり取りができる優しいところであったため、なんとか40セクタで安めの首飾りが買えた。

それで満足をし、そこで離脱をしとけばよかったものの、やはりせっかくのチャンスなんだしもっと買い物をしておきたいという欲求から先に先にと進んでしまった。

その中に迷い込んでいくのはまるで迷路に迷い込んだかのように感じられた。少し怖かったが、わくわくもした。

ふときれいな宝石屋さんに顔を向けると、たまたま店主と目があってしまい手招きをされてしまった。人間に危害を与えなさそうな笑顔で、その店主さんはゾウの獣人であり、驚くほど手が平であった。どうやってこんな小さな宝石を持ってきて並べたのか意味不明なくらいだ。

「さ、なにこういくえ?みーぞう!」

「あ、ええと……?」

「お、ファラン言語か、こっちの方がいいかな?」

 その獣人はぺらぺらと数秒のうちに二つの言語を話した。私はそれに驚いて目を見開いてそのシワだらけの眉間をみつめてしまった。

「ん?大丈夫かい?」

「あ、あぁすみません!」

 私の前で大きな手を振ると、やっと固まっているのから解放され、ちゃんと意識を安定させた。

「えと、宝石を見ていきたいんですが……おすすめってあります?」

 とりあえずファランの言語で受け答えしてみる。すると店主さんはうんうんとうなづいて、一つの宝石を、どこからともなく出した針付きの釣り糸を指で吊るして持ち上げていた。

「これとかおすすめだよ~」

 それは緑に輝く縦長の宝石で、キラキラとしていた。杖のものよりも小さかったが、なんとも奇麗に透けている。その宝石が落ちないかと思ってあわてて手をその宝石の下に持っていく。案の定宝石は落ちて、私の手のひらの上で転がった。思わず落としそうになってハラハラして心臓が強く鼓動していた。

「それ、1つ10モアだよ。外側の入れ物も高い素材で出来てるから気を付けてね」(10モアは10万円程度)

「あ、ご、ごめんなさい!生の手で触れちゃって」

 どうしようかあたふたしながらその宝石を安全なところにもっていくと、店主はにやりと笑った。その顔はさっきと違って不気味に思えた。

「触れたからには買ってもらわないとねぇ?」

「うう……おかねが……」

「なんだいお金ないのかい。んじゃぁ……5モアで勘弁してやるよ。」

 お財布の中身を見ると、その中には10モアと10ルース程度しかなかった。5ルースなら払える!と思って勢いでつい渡してしまった。

「まいどあり~」

 店主はお金を払うと驚くほど笑顔で宝石のケースを渡してくれた。半分涙目の私をみてさすがに同情して、もう一つのただの石を磨いただけの宝石をもらった。それですら1つ5ルースだ。なんとぼったくりの店なのだろうか。

 すぐに宿に戻ろうかと思った。

 と、ふとこの町に入る前に兵士に言われた契約書をやっと思い出した。


 ——身内、または護衛人である獣人は人間のそばに必ず一人はついていること。ただしそれは村の人ではなく。完全な外部の人間でなくてはならない


「あ」

 完全に油断していた。そしてそのことを深く後悔した。

きっと彼も疲れがたまりすぎてこのことを忘れてしまっているのだろう。ともかく宿に戻らないとやばい!人間殺しにやられてしまうではないか!という一心で慌てて帰ろうと後ろを振り向いた瞬間、私は縄で首を絞められてしまった。

「なーんてね?ちょっとついて来てもらうよ。」

 助けて!となんとか声を出そうとも、苦しそうなうめき声しか出ることはなかった。まただれにも聞こえることはなく、周りの人たちに助けを求めたが誰も相手にしなかった。むしろ私のことを虫でも見たかのような目をしていた。

 首の縄を自力で何とかほどこうとするも、あまりにも引っ張る力が強すぎて私には到底抵抗できるものではなかった。

 それからあっという間に引きずられ、路地裏にそのまま入ってしまい、ドアの開く音が聞こえ、私はその中に放り投げられた。固い何かに頭を強くぶつけてしまい、意識がもうろうとする。だがドアのところにゾウの獣人が立っているような影がぼやけてみえた。

 やはりぼったくりのやばい店だったのだろう。宝石も取られ、ドアを閉められた。

ドアを閉めた瞬間、暗闇に私は包まれてしまった。

完全にミスをしていた。これは何と由々しき事態なのだ。と自分をとにかく卑下する。


それと彼はいったいどこにいるのだろう。とも考えていた。

指からはぎとられた宝石のせいで、血が噴き出してしまっていた。無理やりさっきの宝石を持っていかれたようだ。それにさっき投げられた衝撃で、喉と足と手を負傷してしまった。

助けを呼ぶことすらも厳しいほどだった。

頭をぶつけて意識をもうろうとさせている中、私は1点を見つめて力なく倒れることしかできなかった。



「くしゅん……」

 カイラはその頃同じく買い物へと向かっていった。重い足取りで、周りの事を気にしている暇もないほど考え事をしていた。


 彼女がピンチだとも知らずに。


4章もこれで終わり~

ちょうど切りよく30にしたかったなぁ

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