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23 混む道

 やがて昼頃になると、私達の体調は暇を持て余すくらいに安定していた。もう既にどこも体調が悪くないように見えるが、まだ自粛期間というものがあってだめらしい。彼はもう昨日退院していたらしく、だからずっと自由に動いていたのか、とそこでやっと納得した。

 元気な私の様子を見た竜人さんが声をかけてくれ、「その様子では、もうお体も調子が良さそうなので、これで終わりとなります。」と言われ、私もこの後許可が降りたら退院となったのであった。

「いやったああ!ありがとうございました!」

 私はずっとベッドで寝転がって、たまにトイレに行く以外はずっと安静——ときどき動く以外はすべて本を読んでいた。——にしていたので、実に十数時間ぶりに動ける嬉しさを実感して、やっと家に帰れる!た飛び跳ねたり走り回ったりして体全体で嬉しさを表現していた。

 その私を見て彼が「よかったな」と肩をたたきながら言ってくれた。あまりにも嬉しすぎて「うん!」とそのまま喜びの感情をむき出しにして回答した。


 それから私たちはすぐに退院の許可書を貰い、すぐに荷物を持って、ホテルから去った。

 だいぶ遅い出発となってしまったが、特に任務に支障はないであろう。

 ところであのケンカしていた二人はというと、男性はもちろん逮捕、で女性もメイドさんを誘拐した魔法を使った罪で逮捕なのだが、おそらく被害者であるので時期に釈放されるらしい。

 外に出て大通りを進んでいく私は、すっかり動く足に羽が生えたような喜びを感じていて、つい足元を見てしまう。

「前向けよ、人にぶつかるぞ?」

「いいじゃん、道路の真ん中ならあいてるでs、ぐえっ」

 私はちょうど彼の方を向いて後ろに振り返ったときに、背中が誰かに思いっきりぶつかってしまった。彼は案の定やっちゃったかというように「だから言ったじゃないか。」と呆れられてしまった。

 即座に振り返るとそこにいたのは、全身が筋肉で構成されてるのか、とおもうくらいにでかい虎の獣人だった。

「すみません!」

「あぁごめんなさい、見えてなくて……ん?」

 私はすぐにその場を立ち去った。恥ずかしさでいっぱいになってしまったのだ。彼も去りながら軽く会釈をして謝っては、私と一緒に人混みの中へと紛れていった。

 だが、私たちが気になるのか私たちを見失っても不思議そうに見ていた。どこかで知り合った記憶とかも探してみたが、特にない。たぶん彼の方を気にかけているのだろう。

 それ以降気にすることは無く、そのままこの町の外につながる門まで人並みを割りながら走っていった。さっさとこの人混みから抜けられなければ圧縮してしまう可能性があったからだ。

 彼はそれに軽々と小走りでついてきていた。蛇のようにスルスルと、目の前のぶつかりそうな人をかき分けながら走ってくるその様子は、とある本に書いてあった「猫は液体である」と言われるのがわかったような感じがした。

 やがて人通りが少ないところに、スポンと抜け出した。そこはもう城壁のすぐ近くであり、前には見上げるほどの大きな壁がそびえ立っている。

「はぁ、はぁ……」と私は息が切れて立ち上がるのがやっとの状態だったが、彼は後から抜け出して来ては余裕そうに腕を組んでは私の復活を待っていた。

「やっぱ体力ないなぁー君は」

 ぼやきも追加された。病み上がりなのにそんなに動けるそっちが体力化け物すぎるだけだよ!と下を向いて歯を噛みしめた。

「ちょっとお、まって、おねがい」

 息を切らしながらなんとかそう言うと、彼は少し先に向かって壁に寄り掛かり、腕を組みながら私の方を見てはにらむような目で待っていた。早くいきたいのになぁ、とイライラしている時の行動だ。この体力おばけめ。と私はにらみ返したが効果はなかった。

 私は深呼吸をし落ち着かせ、やっと息が整うと、彼のもとへ歩いて行った。

「遅いぞ」

「ごめんって」

 彼はあからさまに不貞腐れていて、口をとんがらせているのがはっきりとわかるほどだった。

 この後また3時間ほど歩くと思うと少し憂鬱な気持ちになるが、そんなことを考えていたら一生足が進まないので、気持ちを奮い立たせながら私たちは進んでいった。

 彼は城門の受付にいき、急に何かチケットらしき紙切れを取り出したのだ。手のひらより少し大きい紙に「券」の文字だけが見えた。

「なにそれ?」

 私はその券を彼に渡してもらった。

 それは書類の一部ようで、雑に切り取られている。途中から始まっている文字列はファランの言葉であり、印字で綺麗に揃えられて書いてある。その下に、手書きで彼のサインと判子が押されていた。

「これは、優遇券だ。帰りに渡して、入ってきたとにに取られた入国料金が返却されるんだ。これでも大臣なのは変わらないからな私も」

「へぇ、いつの間に入国料なんか」

「あんた寝てたでしょ」

「あ」

 そういえばそんなこともあったなあ、とまるで昔のように考えたが、その出来事はたった3日前だったな、と思い出した。きっとその間に支払ってもらったのだろう。

 彼の手元に、入国料金らしき40ルース(4000円)が返された。

「ありがとうございましたー」というその人の声は、どこかで聞いたことがあるような気がした。たぶん自分のことを倒れた時に手当てしてくれた人だろう。

 私は耳を赤くして早足で去っていった。

 彼もそれに合わせてペースを速めた。

「そんなに早くて大丈夫か?」

「大丈夫……じゃないけど早く行くよ!」

 彼に心配されてしまったが、一刻も早くその人の視界から離れたかった。

 すると私の思いがバレたのか、一瞬だけ「フフ」という彼のにやけた時に出る声がした。




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