表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/75

22、でたらめな言い訳 猫

 私が聞かないふりをしていても嘲笑はおさまるどころかヒートアップしていった。


 このまま無視もいいが、それだと胸糞悪くなる。

 できるならうまいこと言って黙らせたいが、そんなの聞く耳すら持たないのだろう。


「あなたもしかして馬鹿なのね?私達の言うことも理解できないやつなんだわ」

「そうよそうよ、人間と同じ、多様性とか言ってさ?何でも受け入れて自分から危険な足場を進んで、見事に足を踏み外すの。」

「なんとも残酷なものね、おお哀れ哀れ!」


 所々突っ込みたい気持ちは置いといて、イライラを抑えるように自分を言い聞かせ、冷静になることに専念した。

 だがその奴らの声が異様に高く、耳に嫌と言うほど突き刺さってくるような声を出して、その声は段々とエスカレートしていった。


 王様が一種の国家問題っていうのもわかるなあ……。私はため息を大きく吐いた。


「もう!この人話を聞かないから、私達がやっちゃいましょ?」

「そうね、爪でひっかけばそのうち死ぬわ」

「邪魔よ!お退きなさい?」


 そう言ってその病室に群がって入ろうとしたが、私は入ろうとしてきたやつに爪を向けた。

 さすがに中に入らせるわけにはいかない。


「その前に、一つ質問でもいいかな?」

「ひ」


 その一番乗りに入ってこようとしたやつは腰を抜かし、哀れに逃げ、部屋の角でゴメンナサイごめんなさいと嘆いていた。


「やっぱり、人間の味方なのね!この人間の奴隷(ペット)が!」


 罵詈雑言を浴びせてくる。


 最悪な言葉、当たり前のように生きる権利を侵害してくるから、どうみたって私は人間よりも悪いやつにしか見えないのだが、気にする必要もないか。


「なあ、一つ質問に答えてくれないか?」

「「「奴隷に口無しよ!」」」

「答えろ。」

「っ……何なのよこいつ……」


 3人同時に言いかかってくるのは如何なものか。


 結局言葉は通じない奴等ばかりなため、力でしか眼の前のやつを制圧するしかないのか、と悟った。

 そこから彼女らが去るまで爪を引っ込めないことにした。


 また爪を前に向けると、その私の研ぎ澄まされた爪が、真っ直ぐな線のような目が、唸る口が、そいつらの動きを止めた。


 その瞬間だけ、とても静かだった。私が、怒っているのに億劫したのだろうか。


 なんだ、話を聞けるじゃんか。と少しは安堵した。


「俺等の種族は、獣人国(ファラン)に住むファリア族だろ?ファリア族は別名なんという?」——ファリア族という名前は人間反対主義の人しか使わない言葉である。意味はこの国に住んでいる獣人のこと。——

 そう問うと、なぜかすぐに答えられるはずなのに、ヒソヒソと話をし始めた。

 わからないふりをしていたり、どうにか人間を悪にしようと思考を巡らせ中で、言葉に詰まっていたりして。


 前者はいいとして、後者はもう耳を貸さなくてもいいだろう。


「……獣人族?」


 と、とある女性が言った。明らか恥ずかしそうに、耳が垂れ下がっている。

 まさかの台詞が効いたな。


 誰かがその女性に非難を浴びせようとしたところを私は間髪いれずに教えた。

 ここからは半分、今思い付いたでたらめだ。


「じゃあ……なんでその文字に、人を表す文字がついているんだ?」

「そりゃあ、人が作った言語だからでしょう?」

「なるほど。では、なぜ私達に人を表す文字を当てた?」

「確かに、なんでなのでしょうかね?」


 そいつらは動きを止めて真剣に考えだした。


 図星を突かれたかのように、焦っているものや困惑しているものが大半だ。

 中には歯ぎしりをしていたり、考えるのを放棄してイラツイているのだろう。


 それにしてもなんでここで止められているんだろうか。

 ずっと私はここにいるだけなのに、なんで私を押しのけて入ってこないのだろう。


 こういうところ、意外と正直なのだろうか。

 微妙に賢いのは罪だな……本当に。


 ……私はここから歯止めが若干効かなくなってきていた。

 私自身がが怒っているようにも、泣いているようにも思えた。


「答えは、人間が私達を同じ人だと認めたからだ。」

「それだけは違う!絶対に!」

「どこが?」

「人間が、認めるはずがない…………。」


 そこからは何も話せないようだった。集団で恥ずかしくないのか。


 そう、大抵の人間反対派は、ただ人間に嫌われていると信じ込んでしまった獣人たちである。

 これは王様も察していたようで、人間と交流するきっかけの一部にもなった。


 それに該当したのか、我に返って素直に下がっていった獣人を複数人見かけた。


 それでもまだ一部はいいたいことがあるらしく、声をあげようとした。

 私もなんというか、説得する気力が少しずつ無くなってきた。


 だがまだ言いたいことはある。

 口に指を当てて静かにしてほしいことを合図した。

 壁に寄りかかりながら俺は肺の事を心配しながら答える。


「人間にはもうすでに認められているのに、なぜこちら側はそれを認めないのだろう?人間の中にも獣人族を毛嫌う人もいる。あなたたちみたいな人たちが。だが、そいつらは同じ人間からも避けられている。」


 そう思ったことをつらつらとストレス発散代わりに語っていると、一人が前に乗り出して反撃してきた。

 虎であったため威圧感はすごかったが、日和るほどでもなかった。


「だからなんだっていうのよ!私達の祖先は嫌われて育った!一部の人達は老人の話を聞いて、実際に非難しているじゃないか!」

「……さっきも言った。一部の人達だけ。それと祖先の嫌われ時代と今は変わったんだ。」

「変わってなどいない。実際路地裏でのさっきの事件を私は見た!あんたらが人間に襲われていたところを!!」


 そうだそうだと皆が言う。


 話を聞ける人物はいなくなってしまったようだ。爪を向けながら話す。


「だから、一部の人達だけとさっきから言っているはず。」


 これ以上は言わない。理解してもらえないのだから。


「それに、「そんなやつらがうじゃうじゃいる」というが、それは人間全員に言えるか?私の妻も、獣人属を嫌っているといえるのか?」

「そうだ、だがアイツだけ例外だ。」


 この回答は、人間の国を見たことない人たちだから仕方ないと割り切ることにしよう。


「そうかな。私には少なくとも、あなたたちが人間を嫌って偏見つけてるけだと思うけどなあ。都合悪いから。」


 先ほども言った通り、それが彼女らが自ら気づいてない本来の目的なのである。


「なにを出鱈目を!」


 殴りかかってこようとした手を慌てて受け止めた。

 手慣れているような素早い手つきだ。何回もやっているのだろうか。


「なにって、今君たちが実行していることさ。ただ人を嫌って人と関わっている私でさえも悪者に仕立て上げる。ほら、周りを見てみ?」


 そういうとそいつらは様々な方向を振り向き、周りに人が集まっている事実を見た。

 ある子供が噂話をする。


「あれおまえのお母さんじゃん!はっず!」

「私のお母さんもいる!」

「あの人人気なのかな」

「ままやめてー!」


 のんきな子供もいるようだが、ほとんどは見るからに引いていた。中には泣いている子もいた。


 子供にもわかるくらいバカなことをしている自分たちを見て、この人たちは果たしてどう思うだろうか。


 結果は……絶大だった。


 やっとしくじりに気づいたそいつらは、謝りもせず舌打ちをしてそそくさと散り散りになり、子供たちに「わるいことしたんだからあやまらないの?」と聞かれて顔を赤くしていた。


 そして子供達には屁理屈を教えていた。半ば強引だったり、もうあきらめていたり、殴っていたり。

 これは警察に言っておくか。

 見ていた人たちもやっと終わったかとほっと一息ついたのか、散り散りになり各自の部屋に戻っていったようだった。


 私は額の汗をぬぐった。

 私のでたらめでも以外と行けるものだな。


「ふぅ……つかれたな……」

「ん……」


 部屋から布団がこすれる音がした。

 やっとマンダが起きたんだ。とすぐに直感し、ベッドの横に走った。


「マンダ!」

「ん……ん?あれ?どうしたの?」


 彼女は目を擦り、布団の中に居ながら体を伸ばしてあくびをしていた。


「どうしたも何も、心配したんだぞ!殴られて倒れたもんだからさ!」


 私は泣きそうになりながらベッドの横に走った。

 彼女は目を擦って手首についている紙の腕輪を確認した。


「うん……そうなの?あと、なんだろうこれ」


 彼女はまだ意識がはっきりしないようである。


 だがわずかに目に涙が溜まっていた。

 私の顔を見ると声も出さずに口は笑い、私はそれを見て心から安心し、泣き出してしまった。


「でも、なんか怖かったのは覚えてる、ってそんなに泣かないでよ、せっかくきれいな毛が濡れちゃうでしょ?」

「だって……あいつに怪我させられてないか心配で……っ!」

「あはは、ありがとうね。ギリギリセーフだから大丈夫」


 彼女は私の頬を撫でてくれた。その手に私はぐいっと猫のように顔をこすり当て甘えると、吹き出して笑ってくれた。


「いつも真剣な姿しか見てないし、新鮮な感じがする。」

「今日だけの特別」

「そうなの、じゃあめっちゃ堪能しちゃおうかな」

「堪能して、いっぱいなでて」


 なでられるのはあまり慣れていないが、自然とあまえる姿になっていた。


「あっはは!ゴロゴロいってる!子猫ちゃんだねこれだと」


 彼女が私の頬を持って顔を挟み、目を合わせながら言った。その目は輝いていて、夕方の太陽の明かりが反射していた。


「今だけな」


 そう、自分に言い聞かせるように、言った。

 もう胸の痛みなどどこかに消えてしまったように感じた。


 なんだかこの瞬間だけ、彼女がまるでお母さんのように見えた。

 やっぱり、彼女と結婚して、本当に良かった。


 そう改めて思った瞬間でもあった。

 撫でる手は、いつもより暖かくて、滑らかだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ