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猫の紳士と翻訳家の異種恋愛物語  ~獣人と人間の恋愛の行方や如何に~  作者: トリ寝る
2章

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18 事件です、事件です。

 私たちはアラさんがいた宿につくと、別の清掃員らしき人が受付に居た。


 いつもいる3匹の猫はいないようだ。おそらく自由時間であろうか。


「あらまおかえりなさ……って随分と疲弊しておりますね」

「はい、少し一悶着ありまして……あっはは」


 明らか腕をだらんと下げて肩で息をしている様子は、とても凄惨な姿に見えたことだろう。


 私は受付の人に少し気まずそうにしてしまった。

 心配はありがたいのだが、気まずい気持ちもあってどうしても目が合わせられない。


 さっきの出来事を見られているのかが気になることだ。


「そうなんですか……あっ、もしかして裏路地での」

「しーです!」

「あっ……はいはい


 察してもらえたのか、彼女はそれ以上その要件に触れることはなかった。


 清掃員の人にホテル代を払おうとしたが、なぜか要らないと言われた。

 理由は教えてくれずに、もやっとしたがそこからは流れで受付を済ませて、鍵を渡してくれた。


 無賃泊にはならないだろうか?


 今度は3階にあった昨日の部屋とは違い、1階の入口に近い部屋が空いているようだ。

 階段で3階まで上がるのはなかなかな苦労が伴ったのでとてもありがたい。


「では、ゆっくりお休みなさいませ」


 そういってお辞儀をして、私たちのことを見送った。私たちもかるい会釈を返した。


 ……私たちが最初に来たときよりもあの人の方が最初来た受付さんの対応よりも丁寧だった。

 やはり当たり外れあるのだろうか。



 部屋に向かおうと廊下に差し掛かったところで、その部屋のすぐ横の扉が開き、それに合わせてパンツ一丁の男が転げながら出てくる。


 男は血だらけであった。


 しかも、その姿は人間であった。

 廊下の壁にぶつかり、ガン!といういたそうな衝撃音と一緒に、獣人に体が変化していった。


「あんた……よくも私の心を弄んでくれたわね!こんな女と!」

「ちょっとまってくれ誤解だ!」

「どこが誤解なのよ!じゃああの女は誰!」


 今度は包丁らしき刃物を持った狼の獣人が現れた。

 威嚇して刃をむき出しにする姿は、まるで野生の狼のようであった。


 その大きな体は服をも引き裂かんばかりに力が込められていた。


 私はそれを見てスルーしたかったが、あいにく部屋が隣である。


 きっと藁にも縋る思いで助けを求められるだろうか。と予想をした。


 ゆっくりと近づいていく間にも、喧嘩している2人はとどまる様子もなかった。


 むしろ男が話せば話すほど女性のほうがもっと熱くなって、もう誰にも止められない状況であった。

 2人は急に私の方向を見た。特に男は、私とガッツリ目が合ってしまった。


 同時に、まずい、と思ったであろう彼が私の胸の前に手をやった。

 しかし、その手は何とか持ち上げているようで、震えてか弱く見えた。


「そこの仲良さそうなの!助けてくれ!俺は襲われたんだその獣に!急に窓から飛び出して来て、それで」

「あんたとはもう付き合って3年目だよ!んで新しい女できたら分かれかい!このチンカス!」

「ほんとに誰なんだよ!!!」


 案の定、助けを求められた。


 だが私たちは何かをすることもできずにその場に立ち尽くしていた。


 その後も喧嘩は止む気配を感じなかった。


 その女性は男に襲うことはなかったが、両腕を鷲掴みにし、上に持ち上げて動けなくさせていた。

 ナイフで刺すのだろうかと思ったが、捨てたので明確な殺意はないであろう。


 私は黙って部屋の鍵を取り出した。ポケットの中から回すようにして鍵を手の中に入れ、鍵穴にさす。


 そのまま部屋には入っていけたものの、またえげつない悲鳴が廊下から響いてくる。


彼がそれに怯えて子供のように端っこの方で恐ろしさに肩を震わせて静かに泣いていた。

 この状態じゃあ、しばらくは戦うこともできないだろう。


「こわいよぉ……こわいよぉ……」

「大丈夫だからね、心配しないで。いい?絶対ここから動いちゃだめだからね?」

「うん……」


 まさに雷にびびっている子供のように、耳をたれ下げて膝を抱えてうずくまっている彼を見ていると、つい愛おしさをそのままにハグしてしまいそうになるが、私はそれを必死に抑えて息を整えた。


おそらく隣の部屋のトラブルを解決しないと、今夜は全く寝れなくなる。

 夜通しそのケンカの音が聞こえるか、巻き込まれるかだろう。


 店員さんがちょうどさっき止めに入ってくれた足音がした。

 それにどうやら武器を持っているようで、金属のカチカチ音が聞こえた。


 何の音か気になったが、いくら耳を澄ましてもわからず、


『誰か、誰かいませんか!』


 彼が安静になり、外に出て状況整理をしようと部屋を出かかったところでその念話は聞こえた。


 これは、清掃員さんではないスタッフの誰かの声だ。

 

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