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11 おつかれさまのご褒美

 城を出て大きめな道を適当に通っていくと、そのうち大通りに出た。

 相変わらずにぎやかな大通りをみて、安心感がした。やはり荘厳な雰囲気に緊張してしまっているのだろう。深く息を吸って吐いて、やっと肩の荷を下ろせることができた。

 その影響か、一瞬だけ頭がクラっとして、景色が開店するかのように感じた。

 彼も肩を下げて「はぁー」とわかりやすい溜息を吐いていたので、きっと同じ心境だろう。彼の肩を持ってポンポンと叩くと、そのほころびが取れたようにすっきりした顔をしていた。


 それから、またあの宿に向かって夕日の中、息が詰まりそうなほどの人ごみの中を歩いていった。このまちの表通りはずっと明るく照らされていて、暗くなっても昼のように明るい。まるでお祭りとでも思わせるような光景だ。

 町中のみんなも、気のせいかもしれないが来たときよりも楽しそうにしている。

 途中、彼が言っていたピアスを売っている店があり、そこで買い物を少々していくことにした。その店にはピアスのほかに、獣人族のお守りや、体毛、長く伸びた爪、野生動物の牙まで売っていた。

宝石のピアスや獣人の毛で作られたピアス、他にもきれいな石のピアスなどが飾ってあった。どれもキラキラしていて、店がまるでシャンデリアのように輝いていた。

お目当てのピアスを実際に見ると、金の素材で出来ていて、一部彼と同じ茶色っぽい黄色の宝石をしたピアスがあった。その下の説明欄に「人運のおまじない付き!」と書いてあった。——おまじないは魔法とは違う願い事だけの言葉。精神を丈夫にするだけであまり信用性はない。——

 彼は店の入口にあるその宝石のピアスを買おうと、店主に話しかけていたが、なんだか困っているようだ。どうやらどれにするか悩んでいるようだ。

「あいよ、3モア」(30万円)

 その金額を聞いて目が点になった。

「たっか!親指のサイズなのに!?前そんなしなかった気がするんだけどなあ」

 驚く気持ちもわからなくもない。と言うように店員さんが大きくゆっくり頷いた。

「なんかここ最近、この鉱石だけがこの街からなくなっていますの、その原因と言われているのが、人間で、なんと通常の1.3倍で買い占めてそれを自国に高く転売しているらしいわ。うちの店なんかもっとひどくて、 中に「忍び込まれて奪われちゃったりしたのよ!それで在庫がなくなっちゃってね。あるのがこれだけっていうこと。……すまんが、これ以上値下げはできないねぇ」

「そうなのか……って、私の事を獲物を見る目で見ないでくれます?」

「あら?普通に見ていただけですよ?おほほほほ〜」

 彼は鳥肌を立てて、その目が笑っていないわざとらしい笑顔を見た。一体何を考えているかはわからないが、とにかく不気味であった。

 その30ルースは、彼が今持っているお金でギリギリ買えるか買えないか程度だ。財布を見るとそこにはいっぱい入っているように見えるが、帰りの分と本当の非常時に使う予備金がほとんどだ。

どうするか考えていると、店主は満面の笑みで胡麻をすりながらこう提案した。

「……あの、普段の6割の価格で、ピアスをあなたの体毛で作ってあとで郵送するのはどうですか?」

「6割?」

 彼が驚いてそう口から漏れ出た。それをチャンスだと思ったのか、刈った毛のピアスを持ち、手にかざして近づけて見せた。

「はい!1時間ほどお時間がかかってしまうのですが、本日近くにある工房に私と一緒に行き、腕の毛を取らせて頂きます。そしてこんな感じのアクセサリーを作ることができます!今からだと……明日の昼に完成しますね。もう夕方なので、おそらく宿に泊まられ、朝に帰られるでしょうから、その後家についたときに郵送で完成したピアスをお届けすることができます!」

 それに興味をひかれた彼は、ピアスを見つめると大きく頷いた。珍しく買うつもりだ。

「ほお!それはありがたい。でもできればやっぱ宝石の方も惜しい……」

「どうされますか?どうされますか!」

 やけに店員さんが急かしてくる。もう今しかないととにかく判断を鈍らせて買わせるつもりなのが丸見えであった。

彼に結構近い距離にいてしまっているのになんだかイラついてくる。鼻と鼻がくっつきそうだ。間に手を入れてその長い鼻を叩いてやろうかと思う程に。

「やめてください!」

 手は出さずとも、やはり我慢できずに声で間に入ってしまった。

やけに店員さんの押しが強いのが気に食わなかったので、どうにか離す事には成功したようだった。

「ん……あら?お友だちさん?」

「妻です!私の夫にあんまりグイグイ近づかないでください!」

 私はちょっとだけ背中で彼を押した。すると彼は肩に手を置き私を横に押しだした。

毛のせいでわからなかったが、耳の先がちょっとだけ赤くなっている。

「マンダ……いいよ自分で選ぶし」

 その声はやけに鮮明に聞こえた。なんだかその時だけは、駄々を捏ねる子供のようで可愛く聞こえた。そしてなぜか私の頭の中で、その声がしばらく響いていた。

それを断ち切ったのが店員さんの笑い声だった。

「ははは!あらぁ〜?ほんとに仲良しこよしですのね。わかったわ、近づかないようにするわね。邪魔しちゃってごめんなさいね。」

「……あ」

 店員さんはニヤニヤと私たちの恋仲を祝いつついじるような、侮辱に近い目を向けられた。彼も「ははは……」と照れ隠しのように乾いた笑いをしている。

 私はその時過ちに気づいて、あまりの恥ずかしさに顔を覆うしかなかった。

 辺りが騒がしく感じて、視線を感じたが、気分は悪くなかった。


 その後も数分彼は悩み、値段のことも相談して、結局毛で作るピアスにして、宝石のものはまた今度来たときに買うらしかった。吊り下げるタイプではなく、指につけるためにリング形にするそうだ。その方が安いし、イヤリングにも簡単に代用できるらしいから、らしい。

 彼がその料金を渡すと、店の奥にいる宝石を整理している店員らしき虎獣人に何か話しかけ、丸く手を作って出した。

「では彼に店を任せたので、私がその制作者のところまでご案内いたします、後ろについてきてください。」

 ものに当たらないように十分注意しながら、なんとか出てくるとそのまま路地を進み始めたので、私たちはその後についていった。

 相変わらず路地はにぎわっているが、今は早めの夕飯時で建物内に人が多いため人は少なくなっていた。

 しばらく路地を歩きながら周りを見渡していると、見覚えのある建物が見え、そこでとある人と目があった。

宿で服をピカピカにしてくれたアラさんだ。その後すぐにこちらに走ってきた。

「あら、朝の人じゃないの!大丈夫だった?」

「はい、きちんとアラさんのことも伝えておきましたよ。とてもいいじゃないかとおっしゃっていました。」と彼。私はそれに頷くだけだ。

「本当ですか!よかったなお前たち!」

 子分の3匹の猫たちが嬉しそうにはしゃいだ。

今は子分達を連れて町中に赴き買い物をするそうだ。その子分たちが元気な挨拶をしていて、私にも元気に挨拶をしていった。

「またお世話になるとおもいます。その時はよろしくお願いしますね」

 私は忘れないうちにそう言って、深々とアラさんに頭を下げた。

「全然いいですよ!また私たちにお任せください!」

 そう腕をまくって、力こぶを作った。頼ってください!というように胸を張って自信を示した。

「ほかにも色々と心配はありましたが、なんとか順調に行きました。しかもお褒めをいただいてしまったよ。」

「おやまあ!凄いですね、あの寡黙な王様がお褒めになられるほどの実績とは」

「当たり前です!カイラと私ですもん!二人は最強です」

「マンダ……声がでかい……」

 興奮してつい声がでかくなってしまった。そのためにアラさんから笑われてしまった。

「やっぱり、仲が良いですね!フフフ」

 つい、というように頭の後ろを掻いて照れくさそうにした。彼も頭を抱えていながら恥ずかしくなっていた。

 工房に付くまで少し口にチャックをつけておくか。これ以上に醜態を晒してしまいそうだ。


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