9 掃除係
補足「お金の単位」
1セクタ=1円
100セクタ=1ルース 100円
1ルース=100円
100ルース=1モア 1万円
1モア=10000円
1000モア=1アセント 1億円
1アセント=1億円
100アセント=1ハイルース 100億円
私達は近くにあった宿へ入った。ぼろい宿だが、店員の対応が親切なことで有名なホテルだという。
宿に入るとすぐに部屋の鍵をもらって、2階まで上がっては、部屋に入った。
そこはとても蒸し暑く、薄くボロボロなベッドが二つと机がある窮屈な部屋であった。
その薄いベッドに飛び込むと、そのまま私は気絶するように寝付いてしまった。
寝てしまう直前に彼のあくびが聞こえ、何か支度をしている物音だけが聞こえた。
明日の準備をしているのだろう。やはり獣人の力はすごいな……。
……
気がつけば朝で、私のベッドも彼のベットも、寝相で揉みくちゃになっていた。
体もべっとりと汗をかいているし、ふくらはぎや太ももなどが痛い。
筋肉痛が起こっているのだろう。
起き上がり伸びをしようとすると、今度は首が凝り固まっていて欠伸すらできない状況にあった。
着替えを出し、その場で彼が寝ている内に済ましてしまった。
すっかり汗臭くなった服は、大変強いすっぱい匂いを発していて、鼻がひん曲がるほどだ。
その後服を脱いで、杖を出して魔法を使い、なんとか新品同様なほどには汚れを落とす事ができた。
だが昨日山の中を歩いて舞い上がった土を浴びたのか、土の臭いが強く残っていて、どうするか悩んでいると誰かが入ってきた。
「こんにちは〜洗浄係のアラでーす。この部屋からちょーっと臭って来ちゃったので、よかったらあなたの服、消臭しますよ?」
その洗浄係と名乗る「アラ」という人物は犬の獣人であった。
頭にタオルを巻き、磨く用のブラシと泡立った液体の入った霧吹きをもってきていた。
朝から大きな声を聴いてやかましいと思ったが、消臭をしてくれると聞いてイライラも吹っ飛び目を輝かせた。
彼はそのやかましい声で起きて、自分の服を見るとすぐに絶望した。
くっさと鼻を抑えている。私より鼻が利くのだからきっと吐くほどに臭いだろう。
「その服、すぐに洗っちゃいましょうか?」
「えっ?む、無料でですか?」
「無料ではないですけど、格安お値段でお掃除しますよ!」
私達は洗浄係さんを見つめ、さらにお互いを見合う。そしてくさい服を見てはまた洗浄係さんを見て、そこで二人でアイコンタクトを取り、頷いた。
決めた!この人に服を丸ごと掃除をしてもらおう、と。
嬉しさが理性を押しつぶし、我慢できずに飛び跳ねてしまった。
「よっしゃあ!」
「おおおおお客様!下の階の人にだいぶ響くのでやめてください!」と制止されてしまったので、慌てて足踏みをやめた。
そのかわりにお互いの手を強くハイタッチした。
肉球の柔らかい部分に思いっきり手の平がぶつかり、パン!といい音がなった。
アラさんはスプレーを持ちながら彼の脱いだ服と私の臭い服に近づくと、ピンと伸ばして汚れの具合を確認して、鼻を近づけ匂いを確かめる。
案の定普段では見ないほどのしかめっ面をした。汗をたくさん吸った服なのだからもちろん臭いに決まっている。
少し離れて全体象を見たあと、納得して頷いた。
「ふむふむ……では、急ぎ洗浄をするということでよろしいですね?」
「はい!お願いします!」
私は元気に返してしまった。声が少し大きくなってしまって思わず喉を抑える。
「わかりました。宿泊代にプラスで10ルース(1000円ほど)かかりまーす」
10ルースなら私でもポケットに常備してあるような金額だ。
ほんとに安くて正直びっくりしてしまった。通常なら30ルース取られてもおかしくない。
ポケットの中にある財布に入っているはずだ。案の定ポケットの中をまさぐると、ちゃらちゃらと音がして、財布があるのを確認した。
中身を確認すると、ちゃんと入っていることを実際に確認して、そのお金のうち10ルースだけ出した。
財布には全部で100ルースしか入っていなかったため、本当に危ないところだったのだと安心する。
アラさんは金貨を受け取り、眺めたあとそのままポケットの中にぐちゃっと突っ込んでしまった。
「はーいちょうどいただきました。お時間は20分ほどかかりますが、よろしいですか?」
「えーと……面会時間は今から一時間ほど空いているから……王城まで歩くし……もうちょっと時間をかけて大丈夫ですよ」
「はーい了解いたしました~……ってえ?」
ぼそっと彼が言った独り言が聞こえてしまったのか、去ろうと後ろを振り向いて止まってしまった。
掃除係さんがその服を下ろし、適当にもみ洗いをしようとした腕を止めた。
そういえば、城に向かっているのは伝えていなかった気がする。
受付の時にも聞かれなかったし、自分でも完全に忘れてしまっていた。
「ええっと……なんだか聞きなれない言葉が聞こえたので、つい驚いてしまって。一応聞きますが、明日。なにかあるのですか?お城で……?」
「いえ、今日。ですね。私一応国交の機関で働いていて、ええと身分証……あった。」
彼はバックの中から名刺入れを取り出した。
そういえば、今までさんざん歩いてきたせいでこの国に来たメインを半分忘れてしまっていた。
なんという失敬。
私も名刺を出そうとしたが、バッグの中をまさぐるも、なかった。
隙間に落ちてしまっただろうか。
彼は「国交大臣」だ。と私は一言いえばいいものの、ちょっと焦って記憶があいまいになっていた。
身分証を出し、礼儀正しく渡して見せると、声も出せずに驚きながら、少し眺めて現実を受け止めたであろう時に返してもらった。
いつもの彼との結婚生活で、私はなんとなく国や近所の人から依頼された仕事をし、そっけなくこなしていた。そのせいかあまり仕事という意識は無くなっていて、お手伝いのような物だと考えてしまっていた。……と、これは言い訳になってしまうか。
再度バックをまさぐる。
身分証など探してもなかったのだからあるわけがないと思っていたが、バックをまさぐると綺麗に専用の袋に詰めてあった。
過去の私が推測していたのだろう。心の中でガッツポーズをした。
私の名刺も渡すと、その人は目を点にして、手だけで受取り、その後名刺を受け取った。
少しの沈黙の後にハッと目覚め私の肩を持った。
「えええええええええ?!それを早く申してださい!ヤバいヤバいヤバい!」
急にあわただしくなり、名刺も返してくれた。だが服の洗浄を放棄し、廊下へと風のように走り去ってしまった。私の言葉を聞く間もなく、洗浄係さんは飛び上がり、洗浄用具を置いたまま廊下に飛び出していってしまった。
気になって廊下を覗くと、アラさんは階段の下に向かってありったけの声で叫んでいた。
「洗浄係緊急集合――――っ!」
その声はとても響き、宿中を揺らすほどであった。
久々です やっと小説が書けるようになりました
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