表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/5

女王蜂 3

 ブン。ぶぅん。ぶぅぅぅん。


 蜂が飛ぶ。頭上を旋回する無数の影。

 羽音が渦を巻き、低く唸りながら鼓膜に張り付く。


 逃げ場がない。

 拓也は動けなかった。足も、腕も、指先さえも。

 蜂の群れがゆっくりと輪を狭めてくる。

 視界の端で、黒い粒がうごめく。


 ぶぅぅぅぅん! 羽音が近い。

 近い。近い。――落ちる。

 ちゃぽん。水の音がした。


『――おい、起きろよ!』


 拓也は跳ね起きた。全身が汗で濡れている。

 毛布がやけに重い。背中を冷たい汗が流れる。

 部屋は薄暗く、テレビの深夜番組の笑い声だけが虚しく響いていた。


「……なんだ、今の」


 喉が乾いている。

 拓也は額の汗を拭い、荒い呼吸を整えた。

 夢……のはずだ。


 スマホが光っている。

 時刻は丑三つ時。

 通知は一件。龍之介からだった。


『気が変わった、昼前に決行』


 それだけ。

 短い一文だが、十分すぎる意味を持っている。

 拓也はスマホに保存された古地図を開き、現代の地形図と照らし合わせる。


 過去百年分の記録。

 地名、道路、鉄路、池、川、墓地。


 どれも今とは、ほんの少しだけ位置が違う。

 そのズレが、何を意味するのか。

 拓也にはまだ分からない。


 気がつけば、何度も寝返りを打ちながら資料を読み返していた。

 思考はまとまりかけては崩れ、崩れてはまた絡み合う。

 結局、まともに眠れたのは明け方だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ