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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第130話 若者の情動ってやつ。いやぁ、これが若さぁ。


 「どう? 再生剤は効果あるかしら?」

 「駄目ですね。さっきの衝撃で死んじゃったみたいです」


 「まぁ……。首が折れたらねぇ」

 「さ、再生剤で蘇生は出来ないでゴワスか?」


 「無理ね。一度心臓が停止したら蘇生出来ないわ」

 「そうなのニャンか。しかしそうなると……」


 「今後、どうするニャン?」


 「う――――ん」


 焚火の中、つまりアンデール。その中に死んだ竜とアオイビアンさんを入れて一休みする。

 竜は死んだ事でアイテム化する事が出来た為、その要領で中に入れる事が出来た。


 竜は……。完全に息絶えており、蘇生する事は出来なかった。

 アオイビアンさんに関しては。


 「ううう……」


 「はっ!」


 「こ、ここはっ!?」


 彼女の方はなんとか治療する事が出来た。

 そんな彼女がどうやら目覚めたようだ。それから辺りをキョロキョロと伺っている。


 「目覚めたわね。この馬鹿女」

 「ば、馬鹿女とはなんですかっ!! 私はエリートの竜騎士ですよっ!!」


 「エリートねぇ」

 「で、そのエリート様は」


 「自分が何をしたかご存じないのかしら?」

 「何をしたって……」


 「なに、を……」

 「あっ」


 「ああっ!!」

 「うるさっ!! デカい声出さないでよっ!!」


 「うわぁああああああああああああああああああ――――っ!!」

 「うるさいつってんでしょっ!!」


 どうやら状況を把握したらしい。彼女が大絶叫を上げる。

 地が裂けんばかりの大絶叫で頭を抱えながら、天を見上げている。


 衝動的な行動を反省してるって所かな。

 まぁ色々と……。事態は「アレ」だしねぇ。


 「わ、わわわわわ、私の竜はっ!?」

 「あーー。それなら」


 「あそこに」

 「私のワイバ――ンっ!!」


 彼女は俺を押しのけて指を向けた方に走っていった。

 勿論、そこにあるのは。


 「んぎゃあああああああああああああああああああ――――っ!!」


 そこにある物を見て、彼女が再び大絶叫を上げる。

 しかし凄い声だな。喉大丈夫かい?

 

 「わ、わたしの……。竜が……」

 「えっとぉ」


 彼女は死んだ竜の前で呆然自失になっていた。

 ぺたりと座り込んで口をあんぐり開け、そのまま動かない。


 竜が死んでしまったのがよっぽどショックだったようだ。


 「馬鹿ね。自分が悪いんでしょ。阿呆みたいに飛ばしてさ」

 

 それはそうなんだけど。まぁ……。子供が事した事だしぃ。

 今は言わないであげた方が良いような。


 「竜が……。私の竜が……」

 「うわぁあああああああああ――――っ!! どうしようっ!! まだ借金も返してないのにぃいいーっ!!」


 「親戚からお金を借りまくってようやく工面したのにっ!! なんで、なんでぇええええっ!!」

 「どうしてこんな事になったんですぅううううううう——っ!!」


 「親戚から借りて?」

 「竜を育てるのはかなり資金が必要になりますから。竜騎士は借金を抱えてる事が多いんですニャン」


 ええ……? 国からの支給じゃないの?

 こういうのって国家支出みたいなもんだと思ったんだけど。


 「なにそれ、国から支給されないの? 竜って」

 

 あ、博士ナイス。そうそう、それが聞きたかったのよ。

 なんで国家が世話しないんだろうか。


 「王政府も竜を育てる程の資金は……。だから竜騎士は個人支出で運営しているのニャン」


 「育てる金がない? ああ、そういえば領主が居るとか言ってたわね」

 「なるほど。税金不足で国家事業が上手く行えないのね」


 「そうか。国が全権持ってる訳じゃないからお金がないのか。なんか世知辛いですね……」


 なるほど。地方分権でそれぞれが諸侯として独立してるから国家にあまりお金がないのか。

 だから金喰い虫の事業は個人請負で……。


 なんか変なところで現実的だなぁ。


 「だから竜騎士はある程度高位の貴族な事が多いですニャン」

 「まぁお金がない騎士は親戚からお金を借りて買う事は多いみたいニャンですけど……」

 

 「あらぁ、つまり彼女は」

 「つまり、まぁその部類で……」


 「うぉおおおおおおおおお――んっ!! まだこれからって時にいぃいいいい――っ!!」

 「稼ぎ頭が居なくなってしまったですぅ――――っ!! ど、どうすればぁああああっ!!」


 「…………。馬鹿だわ。こいつ」


 「ううううううう。このままじゃ家族で首を吊る事に……。

 「せっかく竜騎士としての地位を手に入れたのにいぃいい――っ!!」

 「男爵家のウチが……。これから昇っていく時に……」


 「うわぁあああああああああああああああああああああああ――――っ!!」


 またもや大絶叫。すごい泣いてるし、そんなにショックだったのか。


 「ああ、男爵家だったのでゴワスか。これは気の毒な」

 「え? どういう事?」


 「恐らく家の家格を上げる為、無理して子供を竜騎士にしたって事では、ニャン?」

 「家格を?」


 「はい、竜騎士になって活躍すれば領地を得る事や家格を上げる事も夢ではないでゴワスから」

 「だから厳しい竜騎士試験に合格した家が、まぁ親戚から出世払いという事で」


 「ああ……。それで親戚からお金を集めて竜を買うのか」

 「そういう事ニャンね。身内に竜騎士が居ればえばれるニャンですし」


  なるほど、異世界の事情。華やかそうな稼業にも裏がある。

  なんとも世知辛い話なのだ。

  つまり彼女は一族の期待を一身に背負って、その期待の元を無くしてしまった。

  それは……。流石に可哀想なような。


  う―――ん。


 「は――――ん。ふん、なるほどね」

 「んで、こいつは」


 「その大事な竜を馬鹿な対抗心でころ」

 「大丈夫ですよアオイビアンさん」

 

 「ん?」


 「ううう……。だ、大丈夫、です?」

 「ええ、その竜」



 「生きて、ますから」


 

 「………………………………」


 「は?」


 博士が何言ってんだこいつって顔でこっちを見ている。

 で、でもほらぁ。可哀想じゃないですかぁ。


 「い、生きてるって……。あ、明らかに首がヤバイ方に曲がってるですが」

 「ああ、それは治療中だからそうなってるんだよ」


 「ち、治療中、です?」

 「そう、今その竜は治療中だから眠ってるんだよ」


 「ちょっと京介っ!! 何でたらめをっ!!」

 「まぁまぁ博士。ほら」

 

 「血、取ったんですよね? 竜の」

 「あ」


 そう、博士は竜の血を確保している。ならば。


 「あんた、もしかしてっ!!」

 「でもほら、可哀想じゃないですか」


 「こんな若い子が、せっかく努力して手に入れた竜を」

 「あのねっ!! これは自業自得よっ!! 全部こいつが悪いんだからっ!!」


 「そ、そこをなんとかっ! ほ、ほら助けると思って」

 「あんたが助けるのはいっつも他人なのよっ!! たまには自分を助けなさいっ!!」


 いやぁそんな事言われても。ともかくほら、若い人が困ってるだから。


 「お願いしますよ。ね。ね。博士」

 「この……。こいつは」


 「あ、あの……。ですぅ?」

 「大丈夫っ!! 明日の夜になったらこの子も元気になる筈だからっ!!」


 「ほ、本当ですかっ!?」

 「うん、ほら君の足を見てみなよ」


 「足? あ、繋がってるですっ!! 確か足が飛ばされていたような……」

 「うんうん、俺は治療魔法の使い手で、これくらいの傷治せるんだっ!!」


 「あ、足が切断して治せる、ですぅ?」

 「そうだよぉ。だから竜の傷だって治せるよ」

 

 「でも今はこのまま、寝かせてあげようね」

 「う、う……。元気になる、ですぅ?」


 「うんっ!! 約束するよっ!!」

 「あ、あ……」


 「良かった……」

 「良かったですぅううううううう――――っ!! 本当にぃいいいいい――っ!!」


 ふぅ、良かった良かった。なんとか元気になったようだ。

 まぁ、まだ余談は許さないけど、ともかく安心出来たようで良かった。


 「だから今日はゆっくり休んでね。足を怪我した訳だしね」

 「ううう……。み、みっともない所を見せてしまって」


 「良いんだよぉ。今日はゆっくり寝て」


 ともかく今日はもう遅いし寝て貰おう。明日は……。

 色々と大変な事になりそうだなぁ。


 「……………………………………」

 「あんた、分かってるの?」


 博士の発言。耳元から囁くような。あ、ウィードに戻ってるな。


 「はい? なんですか博士」

 「竜をこの世界で蘇生させる。それをするには」


 「複製装置、それが居るのよ」

 「一日だけ借りられません?」


 「約束は100体のサンプルだった筈よ」

 「ならレンタルとして1つのサンプルでなんとか」


 「そんな甘い相手じゃないわよ」

 

 あらら。でもなんとか一日だけでも借りられないかなぁ。


 「なんとか、なりません?」

 

 ここは博士の伝手でなんとかならないかなぁ。


 「………………………………」


 「1つだけ、条件があるわ」


 おお、なんだろう。


 「つららを」


 うん?


 「例の「つらら」を渡しなさい。あれと交換なら一日くらい貸してくれるでしょう」

 「おおっ!! 分かりましたっ!! それくらいならっ!!」


 「あんな「拾った」物で良ければっ!!」


 「………………………………………………………………………………」


 「アレは私が拾った事にしとくわ」


 「ともかくつららと交換。それで良いわね」

 「了解です。じゃあ明日頼みますよ」


 「ええ、でも分かってる?」

 「一日だけっ!! 一日だけだからねっ!!」


 「分かってますよっ!! それじゃあっ!!」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 


 「うぉおおおおおおおおおお――――っ!! 竜が復活したのですぅうううう――っ!!」

 「あ、ありがとうなのですニート様っ!! この御恩は一生忘れないのですぅううう――っ!!」


 翌日、博士から複製装置を借りて竜を復活させた。

 1日だけって事で借りたから「ついで」として死んだ人達も生き返らせたかったけど。


 「それは契約違反っ!! 駄目っ!!」


 って訳で断念した。まぁアオイビアンさんの竜が元気になっただけでも今は良いか。

 彼らの事はいずれ。しっかり100匹のサンプルを集めてからにしよう。


 ともかく今は。


 「じゃあ行こうかアオイビアンさん」

 「は、はいですぅっ!!」


 「でも、なるべくゆっくりと。ね」

 「うっ。はい……」


 「次はないわよ。今度からはもっと自制を持つ事ね」

 「ううう。ど、どうかこの事はご内密に」

 

 「はぁ――? まぁしっかり見返りを寄こすならぁ――」

 「大丈夫、誰にも言わないから気にしないでね」


 「馬鹿っ!! こっちは大迷惑かけられたのよっ!! 少しくらいお灸をすえなさいっ!!」

 「うん? ああ、ははは」


 「めんどくさいみたいにあしらわないでっ!! 重要よっ!!」

 「あはは、でもまぁ、一件落着した訳ですし」


 「してないっ!! 普通はそうはならないのよっ!!」

 「だから日々注意して生きないとっ!! 聞いてるっ!?」


 「ええ、聞いてますよ」

 「ありがとうございます博士。協力して貰って」


 「博士は最高のパートナーですよ」

 「今後とも」


 「どうぞ、よろしくお願いしますね」


 「……………………………………」


 「ふん、分かれば良いのよ分かれば」

 「それじゃあ」


 「ええ」


 ちょっと遅れちゃったけど、でもこういうトラブルも旅路の良い思い出だよね。

 よし、そう言う訳でっ!!


 気を取り直して、皇都に出発だっ!!

 

 良い出会いが、あると良いな――っ!!

 

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