第129話 いざ皇都へっ!! へぇ竜って早いねぇ。
「わ――――。なんか凄いですね。かなり早い」
「そうでしょうっ!? ワイバーンは竜族の中でも最速っ!! とっても早いのですっ!!」
「その代わり攻撃力はあまりないですが。そこは私の優秀さでカバー、ですっ!!」
あれからなんか御恩と奉公だとか言われて彼女の竜に乗られて移動する事になった。
ドラゴンに乗る。いかにもって感じのファンタジーでテンション上がるかもっ!!
しかし最中真っ暗闇なのが玉に瑕だけど。移動するならもっと昼間とかに行きたかったなぁ。
「これがドラゴン、か。時速300キロくらいはあるわね。生き物と考えたらだいぶ早いわね」
「ふぅん。これがこの世界最速の乗り物、か」
博士もさっきから感心しっぱなしだ。ドラゴン、いやワイバーンか。なんか凄いっ!!
「ところで体大丈夫です? 専用服着てないし、だいぶ風が当たると思うですけど」
「ああ、大丈夫です。お構いなく」
「そ、そうなのです? な、なら良いんです、けど」
そういえばだいぶ風がビュンビュンいってるようにも思える。
でも今の俺の体がゲームだし、まぁ痛みもないしね。
大丈夫大丈夫って事でっ!!
「お体、丈夫なんですねぇ」
「ええ、丈夫なんですよ。あはは」
「へへへ。じゃあもっとスピード出して良いですか?」
あら。
「ええ、良いですよ。全力でお願いします」
「おおっ!! ならっ!!」
「全力で行くですよっ!! しっかり掴まってくださいですっ!!」
「掴まる。捕まるところ何処です?」
「私のお腹っ!!」
あらま、大丈夫かな。まぁいっか。俺は彼女のお腹に掴まって衝撃に備える。
耳元でラバースーツをギュッと掴むような音が聞こえてくる。
専用服と言っていたし、どうやら彼女の服はゴム製のようだ。
異世界にゴムってあるのかな? まぁいっかっ!!
「いっくですよ――っ!! 全速力で――――すっ!!」
アオイビアンさんがワイバーンに掛けている手綱をギュッと締め発破をかけると。
ワイバーンはキュイっという意外と可愛い声を出して速度を上げる。
「早くなったわね。何をして速度を上げてるの?」
「手綱を引いて逆鱗を刺激してやったのですっ!! 竜の逆鱗は喉元にありますからっ!!」
「逆鱗を刺激……。へぇ。そういう動かし方なのねぇ」
「博士」
「あん。何よ」
「今、血を採取しちゃ駄目ですよ」
「大丈夫よ」
「もうさっき取っちゃったから」
「ええ……」
いつの間に……。まったくもう。
「いつの間に取ったんですか? 駄目ですよ勝手にそんな事したら」
「蚊の構造を利用した無痛針を使ったわ。相手は血を取られた事も気づいてないわよ」
「蚊ですか……。サイズ的になんかちょっとそれっぽいです」
「うるさいっ!! 誰が蚊ですってっ!!」
あはは、怒られちゃった。でも羽生えて飛んでて。
そう考えるとぉ、ちょっと蚊っぽいかぁ? なんて、あははっ!
「ひゃああああーっ!! 全速力は体に来ますねっ!! どうですかワイバーンの全速力はっ!!」
「体に来るでしょう? へこたれた時は言ってくれても良いんですよっ!?」
「あ、大丈夫ですよ。お気遣いなく」
「そ、そうですか? だいぶスピードを出していると思ってるですが……」
「これくらいなら大丈夫ですよ。どうもどうもお気遣いを」
わざわざ声をかけてくれるなんて優しいお嬢さんだ。
ちょっと名前が長いけど優しいお嬢さんなのだ。竜騎士、か。
どんな職業なんだろうなぁ。
「……………………」
「それならもっとスピードを出しますけどよろしいですっ!?」
「あ、どうぞどうぞ。良いですよ」
「ならスピードを出すですっ!! へ・こ・た・れ・た、らっ!!」
「言ってくださいねっ!!」
「はい、そうします」
「なら行きますですよ――――っ!!」
彼女は竜の手綱を更に引きそのスピードを上げる。
これは驚いた。時速800キロは超えてるかもしれない。
異世界の生物。なるほど侮れないな。
「ど、どどどど、どうですかぁああああっ!! これが私の竜の実力ですぅうううよぉお――っ!!」
「怖気づいたでしょうっ!! 素直になって良いんですよぉおおおっ!!」
「ああ、大丈夫ですよ。お気遣いなく」
「な、なにぃいをおおおおおおっ!! ここまでの速度に耐えるのに私がどれだけ修行をしたかっ!!」
「悔しいですぅううううううっ!! もっとスピードを出しますぅうううう——っ!!」
おおっ!! もっと出るのかっ!! これはまさか時速1000キロの壁をっ!?
「ちょ、ちょっとスピード出しすぎじゃないっ!? マッハを超えたら衝撃波が出るわよっ!!」
「うぉおおおおおおっ!! 絶対、絶対ひぃひぃ言わせるですぅうう――っ!!」
「竜騎士の誇りぉおおおおお――っ!!」
アレ? なんかちょっとヤバイ雰囲気?
えっと、アオイビアンさん大丈夫? なんか足がブルブルしてるような……。
「うぉおおおおおおおおお――っ!! 限界のそのまた限界までぇえええええっ!!」
「止めなさいっ!! マッハ超えるっ!! 超えるっ!! 体が耐えられないわよっ!!」
竜が凄まじいスピードを出しながら空を全力疾走している。
なんかこれ、ちょっとヤバくないっ!?
「ちょ、ちょちょちょ。ちょっとっ!! アオイビアンさん大丈夫っ!?」
「うぉおおおおおおお――っ!! 私は誰にもまけなぁあああああああああ――っ!!」
彼女がその言葉を言い終わる前に竜がマッハに到達し衝撃波が出た。
物体は時速1000キロを超えるとソニックブームという現象が発生する。
それが衝撃波のようになって物体を……。
「うわぁっ!! 彼女の体が飛んでったっ!!」
物体を吹き飛ばしたりしてしまうっ!! 竜から彼女が吹っ飛んだっ!!
足だけがあぶみにぴったりくっついてその場に残っていた。
竜に固着されていた足だけがその場に残り、つまり彼女の体は……。
「な、ななななっ!! 足だけ残してどっか飛んでったわよっ!!」
「ソニックブームに耐えきれず飛んでったんだっ!! なんて事っ!!」
「ちょ、ちょちょちょっ!! 何事でゴワスかっ!?」
「こ、怖いから目を瞑ったのに、なんか大きな音したニャンっ!!」
アニエスさん達も異変に気付いたようだっ!!
まったくもう何をしてるんだようっ!! えっとアオイビアンさんはどこだっ!?
「の、乗り手が消えたわっ!! っていうか竜も落ちてないっ!?」
博士の言葉通り、竜の高度が落ちてるような……。
「ああっ!! 竜の首があらぬ方向に折れてるでゴワスっ!!」
「ええっ!?」
見ればワイバーンの首がぽっきりと折れブランブランぶら下がっている。
これってもしかして……。
「竜死んでんじゃないっ!! あの女自棄になってたんじゃないのっ!?」
「ああ、聞いた事あるニャンっ!!」
「な、なにをっ!?」
「わ、若い竜騎士が逆鱗を刺激しすぎて死ぬ事例があるってっ!!」
「ええっ!? そうなのかいっ!?」
「話では聞いてたニャンが、まさか目の前で発生するなんてっ!!」
「ふ、ふざけんじゃないわよっ!! ど、どうすんのよっ!!」
どうするってそりゃあ。
「フロートユニットっ!!」
俺はアイテム欄からフロートユニットを取り出してそれに飛び乗った。
「博士っ!! これもっとスピード出ませんかっ!?」
「はぁっ!? 何をする気よっ!!」
「アオイビアンさんを助けますっ!! 早く回収しないとっ!!」
「はぁっ!? ほっとけ……。ないわねあんたはっ!! ったくもうっ!!」
フロートユニットの側面の蓋を外し、博士がなにかしら弄り始める。
「ほらっ!! リミッターを外してやったわっ!! これでスピードを出せるっ!!」
「早くあの馬鹿女を回収しなさいっ!!」
「了解っ!!」
俺はフロートユニットを全力で飛ばし、空中に飛ばされた彼女を探し始める。
「あ、辺りは夜……っ!! こ、こんな状態で探せるでゴワスかっ!?」
「京介っ!! アイテム欄っ!! 捜査に使った装置を使うわよっ!!」
装置? あの足跡を見つけた奴かっ!?
俺はアイテム欄から例の装置を出して、博士に渡した。
そうして博士は装置を起動して。
「居たっ!! あそこに光ってるわっ!!」
装置を起動した瞬間光が出て、飛ばされた彼女を緑色に発光させる。
俺はフロートユニットを全力フルスロットルさせて。
「捕まえたっ!!」
なんとか捕まえる事に成功したっ!!
「よしっ!! ったくもう……」
「生きてるでゴワスかっ!?」
「辛うじて、息はあるみたいだけど」
だが足を失った事でだいぶ出血している。
「再生剤を打たないと。まったくなんでこんな無茶を」
「竜騎士は厳しい訓練を受けてようやくなれるエリートニャンから」
「ニート様が速度に平気な様子を見て……。対抗心を燃やした……」
「そういう事、だと思うニャン」
あらまぁ。
そっかぁ、あそこは平気ですって言わずに。もっとこう。
わ――っ!! 怖いぃ――なんて言うべきだったのかな。
なんだか悪い事をしたなぁ。
「なんか悪い事したなんて考えてそうな顔だけど、悪いのはこいつなんだから」
「下手に同情なんてしない事っ!!」
「分かったわねっ!!」
あら厳しい。でも若者の情動ってのは怖いね。無茶するんだから本当。
「ともかくどうするのよ。竜死んじゃったけど」
「う――ん。とりあえず」
「焚火、焚きましょか」
これから王都って時になんだかとんでもない事になったなぁ。
いやはやしかし。
若者ってのは、本当に元気だよねぇ。




