表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
129/138

第125話 これは庭で拾ったただのつららです。本当ですよー?


 「もう諦めましょう。これは、もう無理よ……。無理」

 「うわああああああっ!! そ、そんな事言わないでくれぇええっ!!」


 「俺、俺まだ死にたくない……。先生っ!! お願いします先生っ!!」

 「なんとかしてくだいよぉおおおおおっ!! せんせぇええええ――――いっ!!」


 「春美様……。これはニャン……」

 「無理よ……。一旦拠点に帰りましょう」


 「で、でもそうなったらここの村の人は……」

 「元々縁もゆかりもない連中よ」


 「だから」


 「うわあああああっ!! 死にたくないっ!! 死にたくないっ!!」

 「俺はまだやりたい事だってあったのにぃいいいーーっ!!」


 「やだ、やだやだっ!! 先生、うわあああああああっ!!」


 「コリーヌ」

 「な、なんですニャンか?」


 「私達に魔法を当てて、殺しなさい」

 「ええっ!? そんな事出来ないニャンっ!!」


 「チュパカブラは獲物を弄んで殺すわ。ここで死ななかったら苦痛のまま死ぬことになる」

 「だから」


 「介錯してあげなさい。意味は分かるかしら?」

 「…………………………」


 「分かりました」

 「な、なんだ? 何するつもりだよ。やめろ……。やめてくれ」


 「死にたくない死にたくないっ!! 誰か、誰かっ!!」

 「誰か助けてくれぇええええええええ――――っ!!」


 「もう、助からないなら……」

 「大丈夫」



 なんとかするから。


 

 「博士、変な事言って脅しちゃ駄目ですよ。まったくもう」


 「何言ってるのよっ!! 状況を見なさいっ!!」

 「もう詰みっ!! どん詰みよっ!! この状況でどうしろって言うのよっ!!」


 「だからって自殺ほう助なんてしちゃ駄目でしょ」

 「これは介錯よっ!! マリスの怪獣が人間にする仕打ち、知らないとは言わせないわよっ!!」

 

 「帰って」来たら博士がなんとかエディンくん相手に自殺ほう助を行っていた。

 それもまだ若いコリーヌちゃん相手に。

 まったくまったく。博士はこういう時ちょっとせっかちだよねぇ。


 「先生っ!! うう、先生助けてくださいっ!! 俺、俺まだ死にたくなぃいいいっ!!」

 

 顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしてエディンくんが俺の背に乗っている。

 痛みが無いから分からないが、彼の手は俺のキャラの肉を抉らんくらいの力が込められている。

 気がしている。


 「京介っ!! こういう時には犠牲は必要よっ!! ウォーカーも出せない。戦う為の武器もないっ!!」

 「どうしようもない事だってあるっ!! そんな時は損切して体勢を立て直すっ!!」

 

 「それは」

 「恥ずかしい事じゃないわっ!!」


 「そうかもしれませんねぇ」


 でも。


 群がるチュカパブラの中の一体。彼は恐らく他の個体よりせっかちなのだろう。

 ニタニタと笑みを浮かべながら爪をワキワキと動かした後まっすぐこちらに迫ってきた。


 

 まずは一匹。

 


 「っ!!」

 「なにっ!?」


 「えっ」


 「ギ、ギギィっ!?」


 一閃。俺の右手の一振りで向かってきたチュカパブラの首がその場に転がる。

 まずは一匹。敵を片付ける事が出来た。


 「チュパカブラの装甲を……」

 「なんでっ!! 対戦車ライフルの弾丸すらはじき返すような奴よっ!!」


 「その敵の……。首を落とすなんて……」

 「ん?」


 「京介、あんた……」

 「手に、何を持ってるの?」


 さて。

 なんだろかなぁ。


 「さぁ」

 「狩の時間だ」

 


 「かかってこい化け物共」


 仲間を殺された事にチュパカブラ達は動揺していたが。

 しかし瞬次に態勢を立て直し、集団で一斉に向かってきた。


 「狩り」を断念し「攻撃」に切り替える。

 そういう事だろう。


 俺は「武器」を持ちながらその集団の中に突撃する。


 「ちょ、ちょっと何をやってるのよっ!!」

 「せ、先生っ!! 何をっ!!」


 集団。とは言いつつも扇状に広く展開していた。だからこそ収束が遅い。

 個別で片付けられる。俺は敵の一匹に素早く近づいてその首を飛ばした。

 その首をもう一匹の敵の顔面に投げつけ隙を作ったあと、また首を飛ばす。


 それに激昂したのだろうか。

 怒りに震え両手を前に襲い掛かってくる敵の両手を切り落とす。


 「ぎぃいぃいいいいい――――っ!!」


 生物である以上痛覚がある。まだ首がつながっている敵から悲鳴。

 見苦しいのでそれからすぐに首を飛ばしてやる。


 「ぎぃっ!!」


 飛ばした首から短く声が上がり、ボトリとその首が落ちた。


 「ほら、どうした」

 「俺は、まだここに居るぞ」


 あからさまに挑発してやると、余裕しゃくしゃくだったチュパカブラ達に動揺が走る。

 一匹、目線を他の奴に寄せて。それから一匹チュパカブラが穴の中へ向かう。

 恐らく増援を呼ぶ気だろう。チュパカブラは穴の中に。


 去る前に。

 頭に何か「つらら」のような物が刺さり、その場に倒れたこんだ。


 「ギギィっ!?」

 「仲間は呼ばせないよ」


 俺は倒れたチュパカブラからその「つらら」を回収し引き抜いた。

 つららは真っ黒の色をしていて、先端は鋭利に尖っていた。


 「あんた。もしかしてそれ……」

 

 それ?

 さて。


 何のことだろうか。


 「さぁ、狩りの始まりだ」

 「狩られる側の気分を味わってもらおうかな」


 「ギ……」

 「ギギィ――――――っ!!」


 群がっていたチュパカブラががむしゃらにこちらに向かってくる。

 俺も奴等に向かい、正面の一匹の胴体に武器を突き立てた。


 「ギギっ!!」


 そしてそのまま一塊になった奴等の周りを回転しその胴を引き裂いていく。


 「ギギャァアア――っ!!」


 上下の肉体が離れ離れになり、その残骸が床に転がる。

 外側のチュパカブラ達が命を落とし、中の少数だけが残った。

 数は、3体。


 「ギ、ギィ?」

 

 優勢の状態を失い、呆然とする敵の一匹の顔面につららを突き立てる。

 その一匹が倒れ、残り2体。


 まだ士気が残っている一匹が襲い掛かる。

 俺はつららを正面に構え、そのまま奴を一刀両断にする。


 そのままパカリと半分に割れ、死体がその場に広がった。

 残り。


 「ギ、ギィイイイイイっ!!」


 一匹だ。

 明らかに動揺している一匹の首を飛ばし、その場の敵は全て消えた。


 「すげぇ……」

 「あ、あっというまに……。ニャン」


 「ニ、ニート殿。そ、その武器は……」


 ああ、これ?


 「これはね」

 

 「庭に落ちてたんだよ」

 

 ほんとだよ? うんうん。


 「あんた、それ」

 「アンノウンの角、じゃ……」


 あ――あ――。知らない俺は何にも知らない。

 知らないから。


 「まだ広場に奴等が残ってる」

 「全部」


 「全部片づけに行くぞっ!!」


 

 そうして俺は縦穴を抜け、元の広間に戻ってきた。

 そのままストンと地面に降り、奴等の前に再び姿を現す。


 降りた先に一匹のチュパカブラが居た。

 恐らく中に居た連中の報告を聞く為に残っていた個体だろう。


 降りてきたのが人間の俺なのであちらもキョトンとしている。

 呆けていた奴の首をその場で落とし、広間中央のハチの巣型の巣に投げつけてやる。


 巣がぐらりと揺れ、中から数体のチュパカブラが這い出てきた。

 恐らく就寝中だったのだろう。


 広間はやはり明るい。奴等は夜行性ではないようだ。

 しかし夜に行動するのは夜行性に見せかける為の欺瞞だろう。

 昼間の攻撃を誘発する為に演じているのだ。本当にどこまでも陰湿なやつ。


 「お前らの仲間は片付けたっ!!」

 「あとはお前達だけだっ!!」

 

 「俺はここに居るぞっ!!」

 「さあっ!!」


 「正々堂々とかかってこいっ!!」


 陰湿な奴等に向け、正々堂々と宣言してやる。

 奴等を一匹に逃さないっ!!


 この場で、一匹残らず打ち滅ぼしてやる。


 「せ、先生っ!! だ、大丈夫なんですか。そ、そんなのっ!!」

 「こ、ここここ。ここは、逃げた方が」


 「逃げた奴等が村に向かってきたらマズイでしょう?」

 「そ、それはそうですが……」


 「だから」


 「この場で全部片づけるっ!!」

 「あ、うあ……。で、でも」


 「大丈夫だよエディンくん」

 「君の居る場所が」


 「多分、今世界一安全な場所だと思うから」

 「は……。な」


 ちょーっとかっこつけたりなんかしちゃったりしてっ!!

 ふふふ、これが可愛い女の子だったりしたらちょっとしたプロポーズ?

 な――んてっ!!


 

 「ギギィ」

 「ギギ、ギギっ!!」

 「ギィイイイイイっ!!」


 巣の中から多数のチュパカブラが這い出てくる。

 数は100体以上。これだけ? ふぅん。


 俺は目の前の武器を素振りして、その振りの早さをいま一度確認する。

 武器を振る速度はその武器固有の速さに依存する。

 あくまで「ゲーム」の体で存在する肉体な為、それ以上の力を込める事は出来ない。

 そこは不便だが。だが極端に遅いなんて事はない。


 なら出来る筈だ。

 やってみせろ。


 お前なら出来るだろう?


 「せ、先生っ!! 敵がっ!! 敵がわんさか出てきましたっ!!」


 わんさか?


 「エディンくん。違うだろう?」

 「は、はい?」


 「たった」

 「たったこれだけ、なんだよ」


 「何を……」


 「たったこれだけ」

 「さぁ」


 「狩りの再開と行こうか」


 俺は持っていた「つらら」を手に。敵に真っ直ぐと向っていった。




 ◇ ◇ ◇



 「ギギィイイイイイイイイ――――っ!!」

 

 「157体目っ!!」


 「ギギ……。ギィっ!! ぎぃいいいいいいい――っ!!」


 「158体目っ!!」

 「159体目っ!!」

 「160体目っ!!」


 「200っ!!」

 「300っ!!」

 「400っ!!」


 「1000っ!!」


 「なんだ……。先生、強すぎ……」

 「先生強すぎじゃねぇかっ!! ひゃっは――っ!! 良いぞ先生っ!! やっちまえ――っ!!」

 

 「これだけの動きを。これが英雄の力……」

 「ニート様、凄いですニャン」


 敵の数が1000体を超えた。しかしそれからだろうか。明らかに向かってくる敵が減ってきた。

 なんだ、だらしないな。全盛期は100万くらい平然と居た筈だが。

 たかだか1000で打ち止めか? そういえばウィードに来たマリスも大幅に弱体化していた。

 全盛期は一匹でも「垓」以上の数を出せるのが居た筈だ。


 それがたったあれだけの数で打ち止めになり無様に敗北した。

 しかも、あれが「最強」なのだと言う。


 っとすれば逃れたマリスは大幅に弱体化している?

 ああ、この場で変身が出来たら……。そうすれば一気に片付けられるのに。

 こんなちまちまと格闘戦で片付けなければならないなんて。

 まぁ良いや。


 ともかく、そろそろ終わりそうだな。


 「ぎぎぃいいいい――――っ!!」


 群がっていた最後のチュパカブラの首を切り落とす。

 それから落とした首を縦穴の方向へと投げた。そこにはもう複数の首で穴の入り口が塞がれていた。


 100体くらい片付けた頃だろうか。

 明らかに逃亡個体が出てきた為、退路を塞ぐ意味で落とした部位を入口の方に投げていた。

 今ではすっかり塞がれている。最初に道を塞がれた事の意趣返しだ。ふふふ。

 うんうん。えっと、それで俺達が来た道はどこだっけ?


 ふと視線を動かすと無数のチュパカブラの死体が。

 がむしゃらに片づけてきたが、こうして改めてその数を確認すると妙な達成感が出てくる。


 「すげぇ……。あんだけ居たのに。せ、先生は天使様かなにかですかい?」


 天使? そういえば村人達の中にもキリスト様がどうだとか言ったりしてた人居たな。

 こっちの勇者がキリスト教を伝えたとか?


 リャナンシーがどうだとか言ってたし、なんか関係あるのかな?

 異世界関連はまだまだ謎だらけなぁ。一度アニエスさん達に色々聞くパートが必要か?

 でも難しい事言われると眠くなるし……。まぁいっかっ!!


 「これだけ動かしても頭痛一つ起こさない」

 「あんたの脳は、どうなってるのよ……」


 博士が何かしら唸っている。まぁそれは全部終わってからという事で。

 ともかくひと段落ついた。敵の増援はぁ。


 あれだけわちゃわちゃと向かっていたのに。いざ静かになると少し寂しい。

 どうやら増援は来ないようだ。それとも戦意が喪失したか。

 

 ならば最後の仕上げだ。


 「せ、先生。どうするつもりです?」

 「あの巣を落とす。それで終わりだ」

 

 「は、はいっ!! せ、先生は本当にデウスのように強くてっ!!」

 

 はいはいデウスデウス。

 デウスだったり天使だったり、リャナンシーだったり。

 エディンくんはそういうのが好きだなぁ。


 

 「京介っ!! 正面っ!!」


 あら博士。もうだから京介はやめてって。

 うん?


 「巣が動いてる?」


 目の前の大きな巣がドクンドクンと脈打っている。

 まるで心臓の鼓動のように。


 ドクドクと。ドクドクと。

 これは。


 「怪獣よっ!! 中に怪獣が居るんだわっ!!」


 博士が叫ぶ。その声が合図とばかりに吊り下げられていた巣がドスンと床に落ちる。

 巣の大きさは20m程度あるだろう。


 これは……。


 巣は内部で脈打ち拍動を続け。ふと、スンと止まった。

 止まって。


 「な、なんだっ!! 先生っ!!」

 「魔獣っ!! これは魔獣でゴワスっ!!」


 止まって、そして中から巨大チュパカブラが姿を現した。

 身体は10m程度。やや小ぶりの怪獣だ。


 「で、デカいっ!! な、なんなんだこれはっ!!」

 「怪獣を中で育ててたのね。いざって時に切り札として」


 怪獣を育てる。そんな生態、前は無かった。

 この世界で身に着けた新しい生態。そういう事か?


 「ブレスっ!! 前からっ!!」


 考え込んでいる間に敵が体勢を変え前かがみになる。

 怪獣のこの動作は……。


 ブレスが来るっ!!

 

 「間に合わないっ!! は、早く逃げてっ!!」

 「逃げ。ちょっと何してるの京介っ!!」


 俺はつららを前にして、ブレスが来るのを待った。

 

 「ちょっとっ!!」

 「大丈夫」

 

 「はっ!?」

 「大丈夫ですよ。博士」


 ブレスが、来る。


 敵怪獣からのブレス。タイプは直線型のビームタイプだろう。

 威力は大きい。サイズは小さいものの内部のエネルギーは潤沢に確保されているらしい。

 威圧の為に無駄に大きくする事はなく戦闘用としてコストカットし小型化した。

 

 そういう事なのだろうか。

 ブレスはまだ続く。発射までのインターバルが短かった。

 あれでは逃げる事は敵わなかっただろう。


 だから「つらら」からバリアを展開してそのビームを防ぐ。

 なんとなくだが、そのつららにはそんな機能があると思っていたのだ。


 「ブレスを……。防いでるっ!!」

 

 つららを前方に向け、それを防ぐバリアを展開する。

 恐らくこれがこのつららの「固有スキル」なのだろう。


 ブレスによるビームは続いていたが、しかし徐々に落ち着き沈静化した。

 終わった頃には。


 「夜空が……。あ、あいつ山を消し飛ばしちまいやがったっ!!」


 空が見えていた。美しい星空だ。


 「…………………」

 「さぁ」


 「さぁ、英雄様」

 「またまたピンチ。大混乱よ」


 「貴方なら」

 「この先、どう対処するのかしら」


 博士が意地悪く俺に問う。

 これから、そんなの決まってるじゃないか。


 「ウォーカーをっ!! ここならあの子の実力を遺憾なく発揮出来ますっ!!」

 「俺のウォーカーくんの実力、思い知らせてやりましょうっ!!」


 「わ・た・し・のよっ!!」

 

 「まぁ良いわっ!! さぁ京介っ!!」

 「私のウォーカーの力、あの身の程知らずに教えてやりなさいっ!!」


 「了解っ!!」


 さぁ。


 第2ラウンドの開始だっ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ